《《書籍化&コミカライズ決定!》レベルの概念がない世界で、俺だけが【全自レベルアップ】スキルで一秒ごとに強くなる 〜今の俺にとっては、一秒前の俺でさえただのザコ〜》闇の軍勢

しばらく時間が止まった……ような気がした。

ルリスの告白はあまりに突然で……だからこそ、あまりに現実味がなくて。

その発言が本心なのか《設定》を貫いているだけなのか、即座に判斷することは葉わなかった。

ガタッ……と。

馬車がきを止めたのはそのときだった。

橫目で窓の奧を覗いてみれば、すぐそばに広大な森林が広がっているのが見える。

ウェスタン森林。

多くの魔が現れたという、その現場だろう。

「……ルリス。じゃあ……そろそろ行かないと」

「うん」

そう言ってぎゅっと俺の手を握るルリスは、とうてい《演技》をしているようには見えなかった。

「……絶対無事に帰ってきて。約束だからね」

「ああ。わかってる」

そう言いながら、俺はルリスの頭を優しくでる。

間違いなく、王族に対する不敬そのものであるが――

「えへへ……」

ルリスは嫌がるふうでもなく、嬉しそうにはにかむのだった。

――そうだ。

自分のためだけじゃない。俺はルリスのこの笑顔のためにも、もっと頑張んなくちゃいけないんだ。

「……じゃあ、行ってくる」

そう言って、俺は急ぎ馬車を出るのだった。

ウェストン森林。

その部は、聞いた通りに地獄絵図が広がっていた。

そこかしこに出沒している魔たちに、激戦を繰り広げている戦士たち。以前のブラックタイガーのときのように絶的な狀況ではないとはいえ、負傷している者も多く、いつ戦況が傾いてもおかしくない狀態だった。

――そしてなによりの特徴は、魔たちを取り巻いている《闇のオーラ》か。

初代國王の言葉を借りるのであれば、これも《闇の軍勢》の仕業だということだろう。

「あ……! アルバートさん!」

戦場に訪れた俺を、エリの明るいが出迎えてくれた。

「よかった……! 來てくれたんですね……!」

「エリさん! 無事でしたか……!」

「はい……! 以前のブラックタイガーには遅れを取ってしまいましたが、これでも一応はSランク冒険者ですから」

そう苦笑を浮かべるエリは……うん、本當に無事そうだな。

の各所に「かすり傷」を負ってしまってはいるようだが、戦闘に支障はないだろう。他の冒険者たちも、重傷までは負ってなさそうだ。

「それにしても……すごい數ですね。ゴブリンにウルフに……魔はそこまで強くはなさそうですが……」

「そうなんですよ……。いつもは苦戦しない魔たちなんですが、なんだか様子がおかしくて……」

ゴブリン。そしてウルフ。

教養の俺にもわかってしまうくらい、この二の魔は弱い。

冒険者はもちろんのこと、そこいらの「腕自慢の男」でも勝ててしまうくらいには弱かったはずだ。

にもかかわらず……

「ギュアアアアアアアアアアアアッ!」

ゴブリンもウルフも、斬られても魔法を撃たれても、絶命することなく、ひたすらに起き上がってくる。まるで何者かに取りつかれているかのように。

――闇の軍勢。

さっき初代國王から聞いた言葉を、否が応でも思い出してしまう。

詳しいことは不明だが、かつての剣聖や國王でさえ苦戦した強敵が、現代によみがえっていると――

ひとつだけたしかなことは、このままでは埒が明かないこと。

俺もできるだけ力になったほうがよさそうだな。

「よし……じゃあ、いくか」

俺はそう呟きつつ、腰かけていた剣を抜いた。

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