《《書籍化&コミカライズ決定!》レベルの概念がない世界で、俺だけが【全自レベルアップ】スキルで一秒ごとに強くなる 〜今の俺にとっては、一秒前の俺でさえただのザコ〜》なにに驚いてるのかわからん

し……んと。

地面に伏せっている魔たちに、その場にいる全員が靜まり返った。

「え……?」

「い、いま、なにが起きた……?」

口々にそう囁きながら、全員が驚きの目を俺に向けている。

さっきまで大活躍していたバルフレイでさえ、驚愕の表のまま立ち盡くしていた。

「…………ん?」

その様子に、俺は首を傾げざるをえない。

――みんな、なんでそんなに驚いているのだろう。

ゴブリンもウルフも、全然たいしたことない魔のはず。

“俺の父”も戦闘に関してはまったくの未経験だが、ゴブリンには毆り合いで勝てたと聞いたことがある。

だから現場に著いたばかりの俺が、ゴブリンたちに無雙するのは……なんら不思議なことではない。

いくら《闇のオーラ》で強化されているといっても、元の強さがたいしたことないもんな。

エリやバルフレイは苦戦してたみたいだが……ルリスいわく、さっきまで強い魔と戦っていたようだしね。

きっと疲れが溜まっていたんだろう。

だから――わからない。

みんな、いったいなにに対して驚いているんだろうか。

「あ……あの、みなさん、いったいどうしたんですか?」

まずは一番近くにいたバルフレイに訊ねてみる。

彼も相変わらず、ビビったような表を俺に向けているのみだ。

「そなた……私の見間違いでなければ、敵をほぼ一撃で倒しておらんかったか……?」

「え? は、はい。それくらい常識でしょう?」

「じょ、常識……」

なんだろう。

バルフレイが自信をなくしたようにうなだれたのは――気のせいだろうか。

「ま、まあ、たしかに我ら《勇者》にとって、ゴブリンやウルフは取るに足らぬ魔だ。だが今回の敵は……なにかが違った。斬っても斬っても立ち上がってきたのだよ」

「斬っても斬っても……」

「そんな連中を、そなたは《たった一撃》で撃破せしめた。これが驚かぬわけがなかろうに」

「え……? で、でも、バルフレイさんも疲れてたんじゃ……?」

「舐めてくれるな。これでも幾多もの戦いを勝ち抜いてきた。疲弊していたのは確かだが、これでもまだ戦う余力は存分に殘っておる」

そ、そんな馬鹿な。

噓だよな……? さすがに。

「しかもさっきのき……昨日とはまるで別人ではないか。私との試験は手を抜いていたのかね?」

「い、いえ……。け、決してそのようなことはっ」

「噓をつけ。あののこなし……我が師さえも超えていたとしか思えんぞ」

バルフレイの師匠をも超える……ってさすがにそれはやばすぎだろ。

だ。

絶対に腳だ。

みんな腳して俺を苛めてきているとしか思えない。

たしかに剣を握った瞬間、本能的に戦い方がわかった(・・・・)というか……世界が変わった気はするけれど。

それでも俺がバルフレイの師匠以上なんて、到底信じられるわけがない。

「はぁ……さすがはアルバートさんですね」

苦笑を浮かべながら歩み寄ってきたのは、Sランク冒険者のエリ。

「ブラックタイガーのときも思いましたけど……あなたは強すぎます。この世界のものじゃない強さっていうか……」

「いやいや……。さすがに褒めすぎですよ」

「いえいえ、そんなことはありません♪」

エリはそこで笑みを浮かべると、ささっと俺に距離をめてきた。

「……ところで、ずっと気になってたんですけど。ルリスとは実際、どうなんです?」

おい、めっちゃ距離が近いんだが。

特有の甘い香りが漂ってきて、図らずもドキドキしてしまうのだった。

「《どうなんです》……っていうのは、どういうことですか?」

「やだ。付き合ってるのかどうか……っていうことですよ」

なんだ。

どうしてこんなこと聞いてくるんだ。

(しかもこの場合……どう答えればいいのかわからんな……)

俺とルリスは実際に際をしているわけではないが、設定的には《仮初の人》ということになっている。

だから“付き合っている”と答えるべきかもしれないが……エリはルリスと仲がいいしな。ここで“付き合っている”と言ってしまったら、後が面倒くさいかもしれない。

まあ……この設定はあくまでレオン対策で作ったもの。

エリに対しては普通に答えて構わないだろう。

「付き合ってはいません。というか、付き合えるわけないじゃないですか」

「そうですか? それならよかった……」

そう言ってホッとした表を浮かべるエリ。

なにが「よかった」のだろう。

相変わらずよくわからんな。

「はぁぁぁあ!? おい、てめぇ、アルバートじゃねえか!?」

と、ふいに。

聞き覚えのある罵聲が聞こえてきて、俺は顔をしかめるのだった。

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