《《書籍化&コミカライズ決定!》レベルの概念がない世界で、俺だけが【全自レベルアップ】スキルで一秒ごとに強くなる 〜今の俺にとっては、一秒前の俺でさえただのザコ〜》馴染

「く、暗いな……!」

地下階段を降りた先は、なんとも鬱な景が広がっていた。

窟、とでも言うべきだろうか。

橫幅が大人三人分くらいの通路が、目を凝らす限り続いている。

壁面には等間隔で蝋燭(ろうそく)が備えつけられているものの、火の明かりが弱すぎて、あまり視界の確保には役立っていない。かろうじて先が見えるくらいだ。

それに……

じますか、バルフレイさん……」

「ああ……。この邪(よこしま)な気配、アルバートでなくともじ取れるであろう……」

俺の問いかけに、《勇者》たるバルフレイも神妙な表で頷いた。

そう。

この窟の奧から、なんとも邪悪な気配がじられるのだ。

油斷していると一瞬で命を刈り取られそうな――そんな気配さえする。

もしかしたら、これは本當に《當たり》かもしれないな。

王國の各地で魔が増え、多くの國民が困り果てている元兇を……ついにここで発見できるかもしれない。

そうすれば《勇者》として名をあげることもできるし、フェミア街の人々を助けることもできる。俺の両親だって……

そう思うと、俄然、が引き締まるのだった。

「ふふ……アルバートよ。そなたなら本當に、王國そのものを救えてしまえるかもしれないな」

俺の様子をどう思ったのか、バルフレイが「ふっ」と優しげな笑みを浮かべた。

「よかろう。突発的にではあるが、《勇者》二人と、そしてSランク冒険者……。我ら三人で、この先に潛むものを倒しにいこう。なんとしてでもな」

「「はいっ……!」」

威勢よく返事をする俺とエリだった。

「あ、あれは……!?」

……五分ほど進んだだろうか。

警戒しつつ窟の通路を探索していると、ふいに、見覚えのあるものを目撃したのである。

「ハ、ハンカチ……? ですか……?」

地面に落ちているそれを、エリが不思議そうな表で拾い上げる。

いピンクをしているそのハンカチは、禍々しいにあって、明らかに浮いていた。

しかもあのハンカチ……どこか見覚えがあるような……

「アルバート・ヴァレスタイン……って、書いてありますよ……!?」

そのハンカチを確認していたエリが、素っ頓狂な聲をあげる。

「ア、アルバートさんのハンカチ……? じゃ、ないですよね……?」

エリが自信なさげに確認してくる。

そりゃそうだ。こんなに俺の持ちがあるなんて、明らかにおかしいからな。

「ええ。俺のではないですが……見覚えはあります。同じ街に住んでいた馴染……ユリシアのかもしれません」

「ユ、ユリシア……?」

「ええ。昔は彼と仲が良くて……歳を取るにつれて、関わる機會も減りましたけど……」

まあ、思春期特有の行変化だよな。

い頃は普通に話せていた異と、ある時期からし話しづらくなる。

ユリシアとはそんなに家も近くなかったし、歳を重ねるにつれて、もうほとんど話すことはなかったけれど……

間違いない。

このハンカチは昔、俺がユリシアにプレゼントしたものだ。

俺の名前が刺繍(ししゅう)されているハンカチなんて、絶対いらないだろと思っていたが……ユリシアがどうしてもそれがいいと言うのだ。

「ユリシア……どうしていまだに昔のハンカチを……」

よくよく見ていると、何度かわれた形跡があるな。時間の経過とともに劣化していくハンカチを、ユリシアはいまのいままでずっと使ってきたわけだ。

「ユリシア……。変な事件に巻き込まれてなければいいが……」

先の通路を見據え、俺はぽつりとそう呟くのだった。

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