《《書籍化&コミカライズ決定!》レベルの概念がない世界で、俺だけが【全自レベルアップ】スキルで一秒ごとに強くなる 〜今の俺にとっては、一秒前の俺でさえただのザコ〜》大好きな彼

「ふふ……。思ったより良いではないか。ユリシア・カーノとやら」

「く…………。な、なぜ、あなたがこんなことを……!」

「ふふ。君が知る必要はないよ」

ユリシア・カーノは、目前で薄く笑う男を思いっきり睨みつけた。

だが、手足はまったくかせない。

は壁面に押し付けられ、手足は鎖によって封じられて。

しかも相當きつく縛られたらしく、軽くかしただけで痛みが走るほどだ。

――どうして自分がこんな危機に陥っているのか。

それはまったくわからない。

フェミア街を普通に出歩いていたら、いつの間に見知らぬ男に連れ去られて……

意識が戻ったときには、こうして壁に磔(はりつけ)にされていた。

しかも、ユリシアのを嫌らしく見つめているこの男は……

「ユ、ユーマオス領主様……! おやめください……っ!!」

「ふふ……。良いではないか。その表、そそらせてくれる」

そう言って頬をでてくるユーマオスに、ユリシアは心底ぞっとする思いだった。

――ユーマオス・レクドリア。

レオンの父親にして、フェミア街を収める悪徳領主。

その男に、なぜかユリシアは拘束されていた。まったく理由もわからない狀態で。

「レオンもたまには役に立ってくれるな。我が領地におまえほどのがいたとは……クク、あの方(・・・)もさぞお喜びになる」

「ユ、ユーマオス様……!」

「ふ、だがいまだけは、あの方(・・・)のことは忘れさせてもらおう。私自しくらいは、楽しませてもらわんとな」

そう言って、ユーマオスの手が首筋に移されていく。

「っつ…………!」

やめて。らないで。

そう言いたかったが、恐怖のあまり、悲鳴以外の聲を発することができなかった。

(アルバート……!)

笑い話だ。

こんな危機的狀況にあって、思い浮かぶのは大好きな彼の笑顔。

噂では《勇者》になったって聞くし、彼ならきっとこの狀況を打破することができる。

でも……私とじゃ彼に釣り合わない。

思春期になって、なんとなく関わるのが恥ずかしくなって。「好き避け」だかなんだか知らないけれど、彼に対して冷たく當たってしまったこともある。

その瞬間に彼が浮かべた辛そうな表を思い出しては……ひとり、枕を濡らす夜もあった。

だから、釣り合わない。

彼と私では大きな差がついてしまった。

駄目なの、これが末路か……

「ユリシア!!」

「えっ……?」

ふいに聞こえてきたその聲に、ユリシアは大きく目を見開いた。

この聲……聞き違いでなければ《彼》のものだが、まさか……!?

「おおおおおおおおおっ!! どけぇぇぇぇええ!!」

「ぬおっ!」

「ば、馬鹿な……っ!!」

部屋を監視していた男たちを吹き飛ばしつつ、駆けつけてくれたその男の名は。

「ア、アルバート……っ!!」

「ユリシア! よかった、無事だったか……!?」

そう言って心配そうに走り寄ってきた彼の表は、期の頃とまったく変わっていなくて。自分がずっと想い続けていた彼と、まったく変わりなくて。

……いや、変わっていないということはない。

彼はずっとたくましくなっていた。

昔よりはるかに。

「ユリシア!? 大丈夫か? 意識は……!?」

「う、うん……。大丈夫……」

至近距離で話しかけてくる彼に、思わずドキドキしてしまう。

――信じられない。

本當に、本當に、こんなことがあるなんて……

「そうか……。あんたが黒幕だったんだな……」

涙に濡れる視界のなかで、アルバートがユーマオスを睨みつけて言った。

「事の顛末……洗いざらい話してもらおうか……ユーマオス・レクドリア!!」

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