《《書籍化&コミカライズ決定!》レベルの概念がない世界で、俺だけが【全自レベルアップ】スキルで一秒ごとに強くなる 〜今の俺にとっては、一秒前の俺でさえただのザコ〜》俺の手柄じゃないのか?
★
一方その頃――
「は、はっはー! たいしたことねぇな、こいつら!!」
ユーマオスの息子、レオン・レクドリアは、奇聲を発しながらウルフやゴブリンを蹴散らしていた。
《全魔法の使用可》を使えるレオンにとって、この魔たちはたいした敵ではない。
雷屬の上級魔法によって、魔たちを麻痺させ。
そして火屬の魔法によって、けない魔たちにトドメをさす。
そんな多彩な立ち回りができるのも、レオンの強みだった。
だが――
「はぁ……はぁ……。やったぜ……!」
両膝に手をあてながら、レオンは荒々しい呼吸を繰り返す。
勝つには勝てたが、本音を言えば――疲れてしまった。
倒しても倒しても、魔たちはずっと立ち上がってくるわけだからな。でっぷり太ったレオンにとって、長期戦は大の苦手だった。
……まあ、結果的に勝てたからいいわけだが。
「は、はは……! さすがはレオン様、お見事!」
「お、王國一の強さでございます!」
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護衛の剣士たちも、やや疲れた表でレオンに聲援を送る。
二人ともそれなりの実力者で、ゴブリンごときには苦戦しないはずなんだがな。やはり妙だが――まあ、やはり結果的に勝てたんだから問題ない。
「へっ……。これは俺の手柄だよな? 俺の」
「はい! それはもちろんレオン様の功績でございます!!」
「《勇者》アルバートの存在など、もはや霞むレベルの功績ですよ!!」
「へ……へへへ……。そうだよな。わかってんじゃねえか、おまえら」
――アルバート・ヴァレスタイン。
クソムカつく領民のくせして、《勇者》なんぞにり上がったゴミクズ野郎。
あいつの故郷ではアルバートを賞賛する聲がちらほら上がってきているらしく、レオンとしても腹が立って仕方のないことだった。
だからこうして、証明する必要があったのだ。
アルバートですら倒せない魔を、自分が倒してみせたと――
「へ……へへへへ……」
ああ……いまから楽しみだ。
自分の信用が失墜したとき、アルバートはどんな表を浮かべるだろう。ウルフやゴブリンも倒せない最弱勇者……そんなふうに罵倒されればなお最高だ。
「レオン様! ご無事ですか!?」
と。
気づけば二十人もの剣士たちが、こちらに向けて走り寄ってきていた。
あれは……冒険者か。
ずいぶん時間がかかった気がするが、やっと騒ぎを聞きつけてきたようだな。
「なんだ、おまえら。いまさら來たのかよ」
「も、申し訳ございません。別の地域でも魔が暴れていまして。……この魔たちは、レオン様が?」
「はっ! 當たり前だろ!! これ全部、俺の手柄だぜ!」
そう言いながら、レオンが手差しする先には――最弱の魔たるゴブリンとウルフの死骸。冒険者でなくとも倒せる、弱い魔の群れだった。
「は、はぁ……」
《闇のオーラ》の事を知らない冒険者たちに、レオンの頑張りが正しく伝わるわけもなく。
「レオン様……。ずいぶんお疲れのようですが、大丈夫ですか?」
「ああ! だいぶ疲れちまったが、なんとか倒せたぜ! これも俺が最強スキルを持つゆえだな! はっはっはっは!!!」
「はぁ……。さ、最強スキルですね……」
得意気に笑うレオンに対して、冒険者は全員、引き気味だ。
まあ、それも當然といえば當然。
ゴブリンもウルフも、冒険者であれば誰でも倒せるレベルの魔。そいつを倒したと自慢気に言われても……反応に困るのが正直なところだった。
「そ、そうだ!」
そこで思い出したように、冒険者が周囲を見渡す。
「ここらに勇者アルバート殿はいらっしゃいませんか!? なにやら《魔大量発生》の首謀者らしき犯人を見つけたとのことで……!!」
「は、はぁっ……!?」
そこで思いっきり目を見開くレオン。
「あ、あいつが事件の首謀者を見つけただって!? なんだよそれ、聞いてねえぞ!!」
ここでレオンが頑張っている間に、あいつはそんな手柄を獲得したというのか……!
「は、はぁ……。そうですか」
さも期待外れのような表を浮かべる冒険者。
――なんだ。
――どうなってるんだ。
頑張っているのは俺のほうなのに、どうしてこいつらは俺を白い目で見つめてくるんだ……!
と、その瞬間だった。
「あ! 皆さん、ここです! ここ!」
忘れるはずもない、無駄に爽やかな聲が響きわたる。
――アルバート・ヴァレスタイン。
最近《勇者》になったばかりの、レオンにとって天敵ともいえる男だった。
「事件の犯人たちを捕まえました! 他にも怪しい連中がいますので、制圧を手伝ってください!」
そう言うアルバート本人も、ひとりの男を背負っているようだった。
――おそらく、そいつが事件の首謀者ということだろう。
そしてその男の顔を確認したとき、レオンは目玉が飛び出すほどに驚愕するのだった。
「ち、父上っ…………!?」
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