私がアルディアと初めて出會ったのは、士學校に學する日のことだった。

ヴァルカン帝國第一皇、ヴァルトルーネ=フォン=フェルシュドルフ。私は第一皇という肩書きと類い稀なる魔の才能を持っていたことから、周囲にははうるさい人たちが多くいた。

『ヴァルトルーネ皇、是非私を貴の専屬騎士にご指名ください！』

『俺は地方の剣大會で優勝したことがあります。専屬騎士をお探しなら、その地位を賜りたいです』

『ヴァルトルーネ、君の専屬騎士に相応しいのは、僕しかいないと思うのだが……どうだろう？』

數多の男から専屬騎士にしてくれとアプローチをけた。

ヴァルカン帝國の皇である私の専屬騎士になれば、將來安泰。

それが周知の事実とはいえ、よく知りもしない人たちからそんな風に押しかけられるのは本當に迷だった。

──だから私は、

『貴方は私の専屬騎士になりたいのですか？　でしたら、私より強いことを証明してください。それが出來たなら──私の専屬騎士に任命することも一考します』

専屬騎士になるための條件を設けた。

幸い、私は魔において誰かに後れを取ったことがない。

同年代だろうが、年上だろうが、その全てを捻じ伏せ、いつしか私の専屬騎士になりたいなんていう人は殆どいなくなった。

私の実力に畏れをなし、近付いてくる人どころか親しい人もできなかった。

けれども、それはあくまで帝國での話だ。

士學校學のため、中立區域であるフィルノーツの街に行くことになった。

私がどれほど魔に優れているか知らないレシュフェルト王國の貴族や有力な騎士たちはヴァルカン帝國の者たちと同じように私のことを取り囲んだ。

『麗しき帝國の皇よ、私を君の専屬騎士に』

『専屬騎士はまだ決まっていないと伺いました。どうか私にチャンスを頂けませんか？』

『ヴァルトルーネ皇殿下！』

『俺こそが相応しいです！』

『いいえ、僕の方がっ！』

うんざりだった。

士學校の學式の日、しかも早朝からこんな騒ぎを起こされるなんて、一日の始まりにしては憂鬱である。

それどころか、怒りさえ湧いてきた。

魔を使って周りに集まる者たちを一人殘らず消してしまえば、靜かな日々が送れるのだろうか。

士學校の校門の前で囲まれ、きが取れない。

──全部、壊してしまおうかしら。

気持ちにりが見え、騒な思考がチラついた時だった。

『あの……邪魔なんですけど』

一人の青年が通りかかった。

アルディア=グレーツ……私の初の相手。

サラッと揺れる短い黒髪が目に留まった。

彼は私を取り囲むように集まっていた人たちに向けて、ギラリと睨みを効かせて、一番近くにいた貴族であろう令息の頭を持ち上げ、

『はぁ、騒ぐんなら……ここじゃなくて、人に迷のかからない端っこにして貰えますかね？』

『は……はなぜっ』

そのままその人だかりを無理やり押し退けた。

當然、その場にいた人たちは彼に反発した。

顔を真っ赤にする者。

刃を構える者。

その敵意を一に浴びてなお、アルディアは表ひとつ変えない。

『平民風が調子に乗るなよ』

『の程を弁えるということを教えてやる！』

『おらっ！』

私の専屬騎士志してくるだけあって、彼らはそれなりに良いきを見せた。けれども、アルディアはそれを容易くいなす。

武など使わず、素手のみでその場を完全に掌握。

そのきがとても綺麗で無駄がなく、私は彼ののこなしに釘付けになっていた。

『なん……』

『噓だろ……あの人數を、一人で？』

『痛い……』

『ば、化けだろ……こいつ』

死累々の景。

周囲に倒れた者を含め、私の専屬騎士に志願してきた集団は一人殘らず彼に恐怖のを抱いていた。

『終わりですか？』

その中心に立つアルディアの姿は完された騎士そのもの。いや、騎士という存在を凌駕しているような圧倒的な強者であった。

負ける姿が浮かばないくらいに強く、

手を出してはいけない相手だと、誰もが危機を覚えるくらいの風格を周囲に振り撒いていた。

『はぁ……』

ため息を吐く彼の瞳が赤く輝く。

恐ろしくもあり、それと同じくらいその堂々たる立ち姿が格好良かった。

日間8位！

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