《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》実家から追放された
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「この無駄飯ぐらいの役立たずが! おまえにはこの家から出て行ってもらう!!」
15歳の誕生日に、僕ディオ・ブライスは父からそう宣言されてしまった。
理由はわかっている。
この歳になっても加護が覚醒しなかったうえ、神に加護鑑定をしてもらった結果、能力が低すぎて加護が覚醒しないことが判明したからだ。
この世界の人間は皆魔力を持っているが、加護が覚醒していなければ、魔法やスキルを使うことができない。
診斷が下された瞬間、父の態度は骨に冷たくなった。
「我がブライス家は何代にも渡って優れた賢者を輩出してきたというのに……! 私の息子だけどうなってる! おまえのような出來損ないに、このブライス家を継がせるわけにはいかん。長男がぱっとしないから、末弟のほうこそはと思って期待をかけてやったものを……!」
父の隣で長男であるチャーリーが肩を竦める。
チャーリーは、與えられた加護【弱火魔法使い】が凡庸なものだったという理由で、すでに人に當たる十八歳を超えているのに、家督を継がせてもらえないでいる。
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父は僕の加護がチャーリーのものより価値あるものだった場合、僕に家を継がせようと考えていたのだ。
「ディオ、おまえには心底がっかりさせられた。加護なしにブライスの家名を乗らせるなど冗談ではない。今日中に荷をまとめろ!」
この國では、十八歳以下の行はかなり制限されている。
仕事を探すにも、宿に泊まるにも、すべて後見人の許可がいるのだ。
十五歳という年齢でいきなり家を追い出されたりしたら、生きていくなど皆無だ。
チャーリーが家を継ぎたがっているのは知っていたし、長男を差し置いて家督相続をしたいなんて思ってはいないけれど、このまま家を追放されれば野垂れ死ぬ以外未來はない。
「待ってください、父さん……! せめて、里親に出すか、どこかの門徒になれるよう力を貸してもらえませんか? お願いします」
「ふん、なぜ私がお前の未來を案じてやらねばならん。出來損ないのくせに、まだ図々しく親を頼ろうとするとは……! これまで育ててもらった恩に謝し、さっさと失せろ!」
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「……」
どれだけ頼んだところで、父は聞く耳を持ってくれそうにない。
「……わかりました。父さん、今までお世話になりました」
そう伝えて頭を下げる。
父はもう僕のほうを振り返ることはなかった。
こうして僕の勘當が確定したのだった。
◇◇◇
ない荷をまとめ終わって家を出ると、エントランスに橫づけした馬車の上から、チャーリーが合図を送ってきた。
「神殿があるだけの田舎町じゃ仕事も見つからないだろう。馬車で半日ほど行ったところにある港灣都市まで送ってってやるよ」
これまで俺に対して當たりの強かったチャーリーだが、そんなふうに聲をかけてきた。
「何してる、早く乗れ」
「あ、はい……!」
これで今生の別れになるかもしれないし、同してくれたのかな?
兄の隣の者席に上がろうとしたら、客車のほうを顎で示された。
「父上が窓から見ているかもしれない。お前を家の馬車で送ったことがバレると、後で何を言われるかわからない」
「……そうですね。すみません」
「気にするな。俺もあの父親に苦しまされてきたからな。お前の辛さはよくわかるよ」
兄に禮を言って、客車に乗り込む。
――それから半日ほど経ったころ。
前れなく馬車が止まった。
休憩を取るのかな?
途中からかなり道が悪くなっていたので、おそらくここは森の中だ。
魔が現れる可能のある森で、馬車を止めて休んでも大丈夫なのだろうか?
心配しつつ、外に出る。
「えっ」
馬車が止められた場所は、斷崖絶壁のすぐ傍だった。
谷は深すぎて底が見えない。
港灣都市に向かうのに、わざわざこんな危険な場所を通る必要があるとは思えない。
そのうえ振り返っても、まともな道などなかった。
「兄さん、迷ってしまったんですか?」
「ディオ、知ってるか? ここは『奈落の谷』と呼ばれる場所だ。時々、この谷の中から危険度の高いA級ランクの魔が現れるから、この周囲の森は立ちり止區域に指定されてるんだ。いったい崖の下はどうなってるんだろうなあ?」
立ちり止區域?
「……なんでそんなところに連れてきたんですか?」
「決まってるだろ。こうするためだよ……!!」
チャーリーはびながら、僕の背中を全力で突き飛ばしてきた。
「……!?」
バランスを崩して谷底へ落ちそうになった僕は、なんとか崖のくぼみに両手をかけた。
宙ぶらりんの狀態で崖にしがみつく僕。
それを見下ろすチャーリーの目は、追放を宣言した父と同じぐらい冷たいものだった。
「……っ。兄さん……っ、なんでこんなこと……」
「実をいうとな、今日のあの鑑定結果は俺が仕組んだものだったんだよ」
「……な!?」
「どんな結果が出ても『能力が低くて加護が覚醒しない』と言うように、神を買収しておいたんだ。お前に跡継ぎの座を奪われたくないんでな」
兄は意地悪く笑いながら、俺を見下ろしている。
たしかにこれまでも意地の悪いところがあった兄だったけれど、まさかここまでするとは……。
「跡継ぎなんて僕はんでいません……!」
「そんなことはどうでもいいんだよ! だいたいお前を見てるとムカつくんだよ! いつもヘラヘラしやがって! 俺のことも心のどこかで馬鹿にしてんじゃねーのか! おい!」
忌々しそうに怒鳴りながら、兄が俺の指をぐりぐりと踏みつける。
そのせいでしずつ指から力が抜けていってしまう。
「てわけで、あの世で幸せに暮らせよ。じゃーな!!!」
気力だけでしがみついていた指先を、最後に思いっきり兄が蹴りつける。
「……!」
だめだ……。
もたない……!
「……っうわああああ」
落下する瞬間、歪んだ顔で笑っている兄の姿が見えた。
壁に何度もぶつかり負傷しながら、猛烈なスピードで奈落の底へと落ちていく。
ぶるぶると頬の皮が震える。
息がまともにできない。
がどんどん遠ざかっていく。
俺はなすもなく、ぎゅっと目を瞑った。
衝撃を覚悟したそのときーー。
ーーぼよよーん。
「…………………………えっ」
弾力のあるらかいものの上に落ちた俺は、そのままぼよよんぼよよんとバウンドを繰り返した。
なんだかわからないが助かった?
落下するときあちこちぶつかって打ち付けたりりむいたりはしたけど。
「ははは……。もう絶対だめだと思った……」
僕は悪運が強いタイプなのかもしれない。
ところが安心できたのも束の間。
らかい地面が、突然グラグラと揺れきだした。
「……!?」
これ地面じゃない……!
生きだ……!!
俺は慌てて揺れる地面の上から飛び降りた。
『グゥオオオオオッッッ』
唸り聲を耳にして振り返ると、全白いに覆われた巨大な魔の姿があった。
これは――危険度Aランクの魔イエティだ。
イエティが、両手を真上にあげて威嚇するように吠えると、周囲の空気が凍てつくほど冷たくなった。
逆立つから、イエティが激怒していることが伝わってくる。
まずいな……。
「こいつの上に落ちちゃったのか」
『ギィアオオオオオオッッッ』
雄たけびを上げて、イエティが突進してくる。
逃げ場所はないし、僕には戦うもない。
ああ、もう。
せっかく墜落死を免れたというのに……!
今度こそだめかと思ったとき――。
「え」
突然、俺の腕から七のが放たれた。
『ギッギャ……!?』
「……!」
眩いは激しく輝きながら、まるで大蛇のようなきでイエティのを絡めとる。
唸りながらイエティが藻掻くが、まったく効果はない。
……なんだこれ。
そのうえさらに信じられないことが起こった。
ぐるぐると絡みついているの先端に突然口のようながぽかっと開く。
その口は、あーーんと大口を開けて――。
――シュボオオオッ!
猛烈な吸水音を立て、いっきにイエティを吸い込んでしまった。
「えええ……」
驚いている間もなく、僕のに不可思議な変化が起こりはじめた。
の側から、今までじたこともないような冷たい力が湧き上がってくる。
自分の中の魔力が増大したのをじる。
それと共に、脳みそが引っ搔き回されるような覚がして、イエティに関する知識がり込んできた。
イエティの生態、習、そしてイエティが習得している『氷魔法』の魔法式と扱い方――。
知らなかったはずのことを知っている。
なんでこんなことに……。
まさか、僕、今、あの魔を取り込んじゃったの?
本日、あと五話更新します。
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