《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》悪徳神の顛末

「ところで君の名前なんだけど、なんて呼んだらいい?」

『フェンリルは個名を持たない』

「え? そうなの?」

『群れをさないから、呼び合う機會など皆無だ。「おい」でも「おまえ」でも、主の好きなように呼ぶといい』

仲間を「おい」なんて呼ぶわけにはいかない。

「うーんと、それじゃあフェンリルだから【フェン】でどうかな?」

安直すぎるかな。

心配しながら尋ねると、數秒間黙り込んだ後、威厳に満ちた態度で頷いた。

『悪くない名だ』

ふさふさな尾がめちゃくちゃ高速回転してることは、フェンの名譽のためにも見て見ぬふりしておく。

さて。

イエティ、水竜、親フェンリルを続けざまに取り込んだことで、僕は氷魔法、水魔法、回復魔法、かぎ爪攻撃が使えるようになったわけだ。

ただ、いくら使える魔法が増えても、僕自の魔力が枯れてしまえば魔法を使うことはできなくなる。

さっき水魔法を試したときのように、魔法を使うたび気絶するように眠ってしまったのでは問題がある。

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次は魔力を自できる魔の力を手にれたいな。

どんな魔がその能力を持っているのかわからないから、出會う魔を次々取り込んでいくことにした。

を探しながら進んでいく俺の隣を、フェンもついてきている。

それから數時間。

と遭遇するたび取り込むのを繰り返して、あっという間に一〇〇匹以上の能力を手にれられた。

さすがにそれだけ回數を重ねれば、加護も思い通りのタイミングで発できるようになった。

運が悪かったのか、能力がそもそもレアなのかわからないけれど、魔力自の力は一〇五匹目を吸収したときにようやくについた。

「目的は達できたし、フェン、そろそろ地上に移しようか」

をぐるぐる歩き回っているうち、気づけば最初に落下した崖下近くに戻ってきていた。

これまで取り込んだ魔の中に飛翔魔法を持っている魔が何かいたので、その能力を使おうと思う。

フェンは飛べないので、僕が抱えていくことにする。

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「フェン、おいで」

両手を広げて呼びかけると、俺の腕の中に勢いよく飛び込んできた。

ふわふわもふもふで気持ちいい。

思わず頬ずりをしたら、鼻先を舐められてしまった。

「じゃあ出発するよ。――飛翔魔法、発

地面を蹴りあげ、その勢いのままにグングンと上空へ向かっていく。

「空を飛べるようになるなんて、想像もしたことなかったよ」

抱きかかえているフェンも、目を細めとても気持ちよさそうな顔をしている。

地上に辿り著くと、森は朝日に包まれていた。

「まさか突き落とされた翌日に戻ってこられるとはね」

『主、これからどうする? 主を崖に落とした兄を噛み殺しに行くか?』

フェンが大真面目に騒なことを言いだす。

僕は苦笑を返した。

フェンには、魔力自を持つ魔を探して崖の中を歩き回っている間に、僕に何があったかを説明してあったのだ。

フェンと母フェンリルは、お互いをとても大切に想い合っていたから、家族に殺されそうになった事実を話すのは正直すごく恥ずかしかった。

でも、フェンは『恥じるのは主の兄であって、主は何も悪くない』と言い、勵ますように僕に寄り添ってくれた。

「家のことはとりあえず置いといて、まずは僕の加護について正確な報がしいかな。今は加護の名前もわからないし。魔の能力や知識を吸収できる力だってことはなんとなく理解できてるけど、他にも知っておくべきことがあるかもしれないし」

加護について教わるなら、神殿にいる神が最適だ。

というわけで僕はフェンを連れて、神殿へと向かった。

◇◇◇

僕が昨日偽りの鑑定をけたルタ神殿は、町の北側に広がる林の中に建っている。

もとはどこの田舎にもある寂れた神殿だったが、王都にあるグラナダ神殿で神長を務めていた人が、五年ほど前に半ば隠居のような形で移してきてから、注目を集めるようになったのだった。

今でもその神長に助言を求めて、遠路遙々王都の貴族や、國王の使者が尋ねてくるのだという。

ちなみに兄に買収されて偽の鑑定結果を伝えたのは、その神長ではなく、もっと全然分の低い神だ。

神殿の一部は常に解放されているので、僕はフェンと共に中へっていった。

まだ時間が早いこともあり、僕以外、他に人の姿はない。

ちょうど祭壇の火に油を指すため神が現れた。

あの人に鑑定の申し出をしてみよう。

そう考えて近づいていくと――。

「あれ?」

「……!?」

兄に買収された神だった。

「き、君は追放されたはずだろう……! こんなところで何をしている……!?」

めちゃくちゃ揺しまくった聲で神ぶ。

「僕の加護鑑定結果が偽のものだったので、もう一度鑑定してもらいにきたんです」

「なっ……何を言って……!! 私の仕事に言いがかりをつけるというのか!?」

「言いがかりかどうかは、別の人に鑑定してもらえばわかるはずです」

「……そ、そんなことは許さん! 衛兵! 衛兵!!」

が喚き散らすと、數人の衛兵が武を手に現れた。

貴族が訪問するだけあって、田舎町の神殿のわりに警備がかなりしっかりしている。

「この者が私に狼藉を働いた! さっさとつまみ出してくれ!!」

「狼藉? 噓の上塗りはやめてください」

「衛兵!! 何を迷っている! 神が噓をつくわけがないだろう!? 早く捕まえるんだ!」

困ったな。

僕はただ自分の加護について知りたいだけなんだけど……。

に命じられた衛兵たちが、力技で僕を摘まみだそうと襲い掛かってくる。

から得た能力を使い、軽々と攻撃を避けた僕のもとへフェンが駆け寄ってきた。

『主! 主に害をなすものを噛み殺す許可をくれ』

また騒なことを言ってるし!

「殺すのはだめだ、戦意を奪えればそれでいいんだから」

フェンはちょっと納得のいかない顔をしたが、渋々という態度で頷いてくれた。

『それなら雄たけび一つで奴らのきを止めてやろう』

「そんなことができるの?」

『うむ。主は耳を塞ぐのだ。我に任せろ』

言われたとおり僕が両手で耳を塞いだ直後、フェンは鼻先を天井に向けて遠吠えを上げた。

オオオオオオオオオオオオンンンンッッッッ――。

うわっ。

耳を塞いでいても、がぴりっとなる。

フェンの遠吠えを直に聞いてしまった衛兵と神などは、目を回してその場に倒れ込んでしまったぐらいだ。

「……生きてるよね?」

『気絶させただけだ』

ならよかった。

「フェンの遠吠えすごいね」

『主に影響が出すぎないようだいぶ加減したがな。居合わせたものをすべて破壊していい狀況なら、もっと威力を発揮できる』

ちょっと得意げにフェンが鼻をかす。

「母フェンリルの力を引き継いだから、僕も使えたりする?」

『もちろん』

おおっ。

孤軍闘するような狀況では、かなり使えそうな能力なのでうれしい。

「衛兵たちはとりあえず気絶させたままにしておくとして――」

僕は転がっている神の前にしゃがみ込むと、その頬をペチペチと軽く叩いた。

の瞼がパチッと開く。

僕と目が遭った途端、神の顔は真っ青になった。

自分のほうが分が悪いと気づいたのだろう。

「あっあっ……ぁひいいいッッどうかお助けをぉおおおッッッ……!!」

あっさり態度を翻した神が、床に額をりつける勢いで土下座してくる。

「ほんっとうに申し訳ございませんッッッ。私だってあんな事はしたくなかったのです! しかし、あなたのお兄さんがどうしてもと頼んできたので斷り切れずッ……。ああっ、どうお詫びをしたらいいものか……!!」

一方的にび続けている神を前に、ため息を吐いたとき――。

「なんの騒ぎだ?」

靜かで威厳に満ちた聲がした。

振り返ると、神殿の奧の扉から、杖を突いた老人がゆっくりと出てくる。

「し、神長様……」

土下座したままの勢で、神が呟く。

なるほど。

この髭のおじいさんが、かの有名な神長か。

「神長様、これにはそのわけが……!」

が捲し立てようとするのを、神長が手で制する。

長は、そのまま無言で杖を翳した。

杖の先端がぽうっとり、ししてから消える。

「……なるほど。けない話だ。神に捧げるべき心を、に乗っ取られ買収されるとは……。申し訳なかった。改めて儂が加護鑑定をさせていただこう」

「な!? そんな……! 神長様ともあろうお方が、こんな一般人の加護鑑定を行うなんてなりません……!! 神長様の加護鑑定をけられるのは、王族だけのはず……!!」

「黙れ!」

「ひっ……!」

「まったく馬鹿者が。分や立場ばかりに気を取られているから、くだらん過ちを犯すことになったのじゃ」

長に威圧され、兄と組んでいた神は震え上がった。

「さあ、ついてきなされ。奧で鑑定を致そう」

悪徳神に対する時とは違い、穏やかな聲音で神長が僕に呼び掛けてきた。

僕は頷き返し、フェンとともに神長の後に続く。

長は奧の間に繋がる廊下に出る時、青ざめている悪徳神のほうを振り返った。

「悪に魂を売った者を神殿に置いておくわけにはいかぬ。すぐさま荷をまとめて出て行け」

「ああ、そんな……」

悪徳神が床に頽れるのと同時に、扉が閉まった。

本日、あと2話更新します。

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