《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》父も追放
「ただ、出て行く前に家督相続の手続きをしていってください。冒険者ギルドで魔獣使いの登録を行う際に、後見人の許可証か當主証明書が必要なんです」
「わ、わかった!! 何十枚だって後見人許可証を書こう!!」
「いえ、後見人の許可証は必要ありません。僕が當主になってしまったほうが、今後手続きがあるたび面倒な思いをしなくて済みますし。ということで、今すぐ僕に當主の座を譲るという書類を用意してください」
「わかった! すぐに書く! しかし、別に家から出て行く必要などないだろう!? 一切おまえのやることにケチは付けないと約束する! だから儂の老後の面倒を見てくれ……!」
そう言って、父が泣きながら足に縋り付いてくる。
「何の害もない老いた父に優しくしても罰は當たるまい……! なあ、ディオよぉおお」
「父さんは、僕が死んだと勘違いして大喜びしていたじゃないですか」
父は必死な形相で、ぶんぶんと頭を振った。
「そ、それはおまえのことを加護も持たない出來損ないの息子だと勘違いしていたからだ! 今はなによりおまえが1番大切なのだよ!? わ、わかってくれるだろう!?」
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「ずいぶん都合がいいんですね」
「そんな意地悪を言わないでくれ。な? な!?」
「荷をまとめるのに一時間もあれば十分でしょう。それ以上は待ちません」
「……っ。出て行けと言われてもきくものか!!!! この家と家名だけが私の心のよりどころなのだ!!! 何があっても手放すものかあああああ」
涙と唾と鼻水をまき散らしながら、父が絶する。
何があっても、この家にしがみついていたいようだ。
「わかりました。それなら――」
僕は今いる応接室の窓際から、屋敷の中心部分に向かって攻撃魔法を放った。
応接室の一部を殘し、屋敷は一瞬で倒壊し、瓦礫の山が出來上がった。
「これで何の未練もなく出て行けますね」
そう言って振り返る。
そこには、一瞬で髪が真っ白になってしまった父の姿があった。
◇◇◇
目の前で屋敷を吹き飛ばした結果、父は腑抜けになり、勝手な言い分を並べ立てて抵抗することもなくなった。
おかげで家督相続の手続きは、滯りなく行うことができた。
手続きを行ってみると、ブライス家には貯蓄などまったくないことが判明した。
どうやらもうずっと前から、財産は屋敷と土地しかなかったようだ。
その屋敷もさっき僕が吹っ飛ばしちゃったんだけど。
魂の抜けた父によると、屋敷の裁を維持するために祖父の殘してくれていた財産を使い果たしてしまったらしい。
それを知った兄は、再び大騒ぎをして父を責め立てた。
もともとブライス家の財産には興味がなかったので、僕にとってはどうでもいい問題だ。
というか財産があったところで、兄に渡す気なんてなかったのに、なんであの人は喚いているのだろう。
「手続きはすべて終わったので、二人ともこの土地から出て行ってください」
「……」
「……」
兄も父も黙り込んだまま、こうとしない。
「かないのなら、屋敷と同じように二人のことも吹き飛ばしますよ?」
「ひっ……!」
「で、出て行く!! 出て行くからあ!!!」
尾を撒いて逃げていく間も、二人は醜い言い爭いを繰り広げていた。
「ちょっと父さん著いてこないでくださいよ! あなたと一緒に行するつもりはありませんよ!!」
「何を言っている! 父の面倒を見るのは長男の責務だろうが!!」
「冗談じゃない! 役立たずな老害なんてお荷なだけです」
「私が一人で生きていけるわけがないだろう!?」
「だったら死ねばいいじゃないですか!!」
「親に向かってなんてことを言う! この!!!」
「痛っ……!? 子供に手を挙げるなんて親のすることですか!! このこの!!」
「痛い!! 痛い!! 老人待だ!!!」
ようやく聲が聞こえなくなった。
『主……。今までよくあの二人のもとで我慢してきたな……』
フェンが同した様子で聲をかけてくれる。
「……あんな人たちでも家族だと思ってきたんだけど。が繋がってるだけで、僕らの間には存在してなかったんだと思う」
兄と父に対して、淡々と振舞ったけれど、本當のことを言うと実の家族から死をまれて平気なわけがなかった。
彼らが目の前から消えた今、怒りは靜まってくれたけれど、その代わり重い悲しみと空しさをじる。
そんなことを考えていると、落ち込む僕をめるようにフェンが僕の手のひらを舐めてきた。
『俺が主の新しい家族だ。だから寂しがらなくていい』
「フェン……」
フェンの優しさがしみて、鼻の奧がツンとなる。
「……ありがとう」
お禮を言って頭をなでると、フェンはうれしそうにすり寄ってきた。
家族とわかりあえなかった空しさを、フェンの優しさが拭い去ってくれる。
フェンを大切にしていこう。
彼の母に託されたからだけではなく、辛いときにそっと寄り添ってくれたフェンの存在に本當に救われたから。
心の中でそんなことを想いながら、僕は俯き気味になっていた顔を上げた。
「――さてと、フェン。僕たちは冒険者ギルドへ向かおう」
僕の後ろに寄り添うように続くフェンとともに歩き出す。
今までの最低な日々はこの何もなくなった土地に捨てて、これから新しい生活をはじめるのだ。
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