《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》伝説の大賢者再來!?
「やれやれ。ギルドで暴れるとは、気盛んな冒険者ばかりのようだ」
その言葉に視線を向けると、窓口の奧から一人の男が出てきた。
ずっとハラハラした様子でり行きを見守っていた付嬢が、「ギルドマスター……!」と聲を上げる。
隻眼に眼帯をつけたギルドマスターは、屈強そうなつきで、立ち振る舞いも堂々としている。
おそらく冒険者上がりだろう。
ギルドマスターはフェンを見て、片眉をわずかにかした。
しかし、他の冒険者たちのように騒いだりはしなかった。
「マーガレット、何があったか説明してくれ」
「は、はい……!」
尋ねられた付嬢マーガレットが、振り手振りをえて事の顛末を話す。
「ほお。あの者たちは、大人數で冒険者志の年に攻撃をしかけた結果、あっさり撃退されたというわけか。冒険者の登録試験をけ直させたほうがよいかもしれんな」
「ちょっ、ギルドマスター……!! 俺たちが弱いんじゃねえ!」
「そうだよ! その小僧、いや年が強すぎるんだよ!!!」
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檻の中の冒険者たちが、必死の形相でぶ。
ギルドマスターはまったくというように肩を竦めた。
「さあ、君とは別室で話すとしよう。ついてきたまえ」
やっとちゃんと話を聞いてもらえるようなので、ホッとした。
部屋を移する前に、冒険者たちを閉じ込めた氷の檻を解除することも忘れない。
応接室に通されソファーに座ると、マーガレットが紅茶とマドレーヌを運んできてくれた。
フェンは僕の足元で伏せをしている。
「どうやってそれほどまでにフェンリルを手懐けたんだ?」
ギルドマスターは興味深そうに僕とフェンを互にみやった。
「手懐けたってことじゃなくて……仲間になってくれたんです」
それから僕は、ざっくりと自分が冒険者ギルドを訪れることになった経緯を話した。
奈落の谷のくだりになってから、明らかにギルドマスターの表が変化した。
何事にも揺しなさそうな人なのに、今は驚愕のあまり目を見開いている。
「奈落の谷から生還しただって……? まさかそんな……。あの谷はな、命しらずの冒険者たちが、何度も調査に挑んできたが――。生きて帰って來たものはいない場所なんだ」
ええっ……。そんな危険な場所だったの?
「でも、たしかに、危険度SSランクの魔が何匹もいました」
「SSランクの魔に遭遇したのか?」
「はい」
「その話が事実ならどうやって逃れられたんだ?」
「最初のうちは、逃げるのは無理だと思ったので、遭遇するたび加護を使って吸収しました」
途中からは、逃げる手段を手にれたけれど、逃げる必要をじなくなったので、敢えて挑んでいったのだけれど。
「待て待て待て……!! 君は、SSランクの魔の能力を手にれたということか!?」
「まだほとんど試したことがないので絶対とは言えませんが、多分できると思います。同じ方法で吸収した水竜や、フェンリルの力は普通に使えるので」
「信じられん……。そなたの加護は何という名なのだ?」
「神長は『悪喰』と言っていました」
「な、なんだとおおおおッッッ……!?」
び聲とともに、ギルドマスターが立ち上がる。
反で、重そうな一人がけのソファーが後ろにひっくり返った。
ガタンと響いた音に文句を言うように、フェンが一吠えする。
「私としたことが取りしてしまってすまない……。しかし、あの伝説の加護『悪喰』!? 唯一、二百年前に活躍した最強の大賢者が使えた加護だぞ!?」
「そういえば、神長からも二百年前の賢者の話が出ました」
「有史以來もっとも強かったとされる賢者なのだ。未だに冒険者で知らぬ者はない。最強を極めようとむ者が目指す人だからな」
「はあ……」
隨分すごい人と同じ加護をもらえたんだなあ。
ギルドマスターは自分を落ち著かせるように、紅茶をぐびぐびと飲み干した。
「ところで、そのフェンリルだが……」
きた。
僕にとってはフェンの話のほうがずっと重大だ。
「フェンリルの危険度を考えると、先ほどの冒険者たちの主張も一理ある。もちろん、素材を手にれるためなどという理由に関して擁護する気はないが」
「この子は優しいフェンリルです。むやみやたらと人間を襲ったりしません」
「魔使いと使役される魔の間のパワーバランスはとても重要だ。何かあったときに、自分の魔を抑えられないのなら、使役を許可することはできない。君は本當にそのフェンリルを従えられているのか? 今は子供だが、長と共に力は増していくし、とても危険な存在になるのだぞ」
出會って間もないけれど、僕とフェンの間には確かな信頼関係がある。
ただそれをどうやって証明すればいいのかわからない。
僕が悩んでいると、不意にフェンがごろんと転がり、おなかを見せてきた。
『主、我の首に手をかけろ』
「え!? どうして……」
『首はフェンリルの急所だ。どんな相手にもれさせることはない。この男がそれを知っていれば、我が主にそれを許すのを見るだけで納得するはずだ』
急所にれられるなんて、フェンからしたらとても怖いことのはずなのに。
「ごめんね、フェン。すぐに手をどかすから」
そう伝えてから、フェンの首にそっとれる。
ギルドマスターは、フェンリルの弱點について知ってるのだろうか。
知らなければ説明する必要がある。
フェンの首に手をかけたまま顔を上げると――。
「……ああ。……なるほど。……そうか」
ギルドマスターが再び席を立つ。
今度は靜かにゆっくりと。
そして、しているような態度で、瞬きを繰り返した。
「……これは……本當にとんでもないことになった……。大賢者の加護を持つうえ、フェンリルと強い絆で繋がっているとは……。君は、何百年に一人しか現れない伝説級の逸材だ……」
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