《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》あの子、一何者なのよ……
誤字字の修正ありがとうございます……!
「【アリシア薬師店】――ここだ」
月の明かりを頼りに看板を見上げる。
當然、店の明かりは消えていた。
それに二階の住居と思われる部屋の窓も真っ暗だ。
フェンのは、今や燃えるように熱い。
しかし、呼吸のほうは明らかに弱まっていた。
竊盜団の男は十二時間経てば酔いがさめるなんて言っていたけれど、どう考えても様子がおかしい。
開いた口からは、力の抜けた舌が覗いている。
「フェン? フェン……!」
呼びかければ微かに返ってきていた反応も、今や完全になくなってしまった。
迷をかけることは申し訳ないが……。
「すみません……! 助けてください……!」
拳で扉を叩いて呼びかける。
戻ってくるのは靜寂のみ。
靜まり返った夜の中に、僕の聲は空しく飲み込まれていった。
もう一度だ……!
「すみません! お願いです……! 急患なんです……! 起きてください……!!」
諦めることなく、何度も扉を叩いては呼びかける行為を繰り返す。
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そのとき、かすかな音がして、二階の部屋にオレンジの小さな明かりが燈った。
起きてくれた……!
オレンジのが移するのを目で追っていると、不意に一階の店が明るくなった。
ガラスの扉越しに、寢間著姿のがこちらに近づいてくるのが見える。
ガタガタッと鍵をいじる音が響き、きいっと扉が開く。
「……どうしました?」
長い赤を首の橫でひとつにくくったが、大きな貓目をりながら顔を覗かせる。
年は僕より、二つ、三つ上に見えた。
「夜分遅くにすみません。あなたがアリシアさんですか?」
僕の言葉に彼が頷く。
こんな若くして店を構えているなんてすごいと思ったが、今はそれどころではない。
「この子がまたたびを嗅がされてしまって……。解毒薬を分けてしいんです」
僕の腕の中にいるフェンを見た途端、アリシアの眠そうな表が変わる。
「えっ、子犬じゃなくてフェンリル……!? って、すごく弱ってるじゃない……! この子に何があったの?」
「魔を狙った竊盜団から、部屋中に充満するほどのまたたびを嗅がされてしまって……」
「竊盜団ってあの!? 信じられない……! 鼻の利くフェンリルがそんな量のまたたびを嗅いだら、中毒を起こすに決まってるわ」
「中毒……。またたび酔いをしているだけじゃないですね……」
「ええ。――ちょっと、ごめんね」
フェンのにそっとれ、そう聲をかけてから、アリシアが瞼を指先で持ち上げる。
「……目が充しているし、瞼の側が白くなってる。中毒を起こしている証拠よ。急いで解毒薬を飲ませないと、取り返しのつかないことになるわ」
「高価な薬だということは知っています。何をしてでも必ずお金を払うので、どうか譲って下さい……!」
「……私だってできればそうしてあげたいわ。でも、調合するための素材が足りないのよ。【白蓮魚の鱗】っていうすごく珍しいレア素材だから、常備してるようなお店なんてない」
「【白蓮魚の鱗】……。それはどうやったら手にりますか?」
「うーん……。この街から馬車で二日ほど東に向かった場所に、ウェルゲルの森という場所があるの。その森の奧に、白蓮魚の生息する池があるんだけど……。
「わかりました。すぐ捕まえてきます」
「待って待って! 白蓮魚って危険度SSランクの超大型魔なのよ! 捕まえるなんて絶対に無理。攻撃を食らわせれば、ごく稀に鱗が剝がれ落ちるから、みんなそうやって鱗を手にれるの。だけど、馬車で二日もかかる場所なのよ。……この子の、そんなに保たない……」
アリシアは自分が痛みを覚えているような表で、を噛みしめた。
「……一時間以に必ず帰ってきます。だから、その間、フェンを見ていてくれませんか」
フェンを置いて行くのは心配だけれど、アリシアなら信頼できると思えた。
「一時間……!? あなた何を言って……」
「説明している時間が惜しいので、どうか僕を信じて、このままいかせてください」
「……」
アリシアの瞳を見つめて、真剣に語りかける。
彼の青い目は一瞬揺らいだが、フェンを助けたいという僕の想いが伝わったのか、しっかり頷き返してくれた。
「……わかった。この子は私がしっかり看ていてあげる」
「ありがとう……! ――フェン、すぐに戻るから、もうしだけがんばるんだよ」
アリシアの腕に託したフェンをそっとでてから、顔を上げる。
「白蓮魚は狂暴な牙を持っているわ。くれぐれも気をつけてね!」
「はい、フェンをよろしくお願いします!」
アリシアに頭を下げた僕は、すぐに飛翔魔法を発させた。
地面を蹴り上げ、勢いよく飛び立つ。
「え……!? 噓でしょ!? 飛べるのっ……!?」
ぐんぐん上昇していく途中で、一度、下界を振り返ると、目を真ん丸に見開いたアリシアの姿が見えた。
「……すごすぎる……。あの子、一何者なのよ……」
そう呟いたアリシアの聲は、さすがに僕の耳には屆かなかったけれど。
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