《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》さっそく噂になっている
魔盜難事件の主犯格であったジェレマイアを憲兵隊に引き渡したりしているうちに夜が明け――。
結局、僕はほとんど眠らないまま賢者の模擬試験に挑むこととなってしまった。
冒険者ギルドに到著すると、何やらバタバタしている。
職員たちは忙しなく飛び回っているし、冒険者たちはいくつもの集団を作って噂話をしていた。
「ほんと驚いたよなあ。まさかジェレマイア試験が捕まるとは」
「相次いでいた魔竊盜事件の黒幕だったらしいな。竊盜団の手際が良すぎて全然捕まらないって話だったが、犯人を聞いて納得だよ」
「ギルドに出りしている教なら、他の魔使いの報も々持っていただろうしな」
「犯罪とは無縁みたいなツラしてたのに。いやあ、人は見た目によらないよなあ」
「にしても、どうやって捕まったんだろうな?」
「誰かが通報したって話だけど、よっぽどの実力者なんだろうなあ!」
どうやら、あの騒の話でもちきりのようだ。
やっぱり昨日のうちにジェレマイアを捕まえておいてよかった。
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『主、主』
フェンが僕の服を甘噛みして呼び掛けてくる。
「ん? どうしたの?」
『竊盜団は主が捕まえたのだと皆に教えてやるといい』
「いやいや、いいよ。注目されたくないし……」
『なぜだ。皆、主のすごさを思い知ればいいのに』
僕は苦笑して、フェンの頭をでた。
ちょうどそのタイミングで、付嬢のマーガレットが僕らを呼びに來た。
「ディオさん、お待たせしてしまってすみません……! ちょっと今日々あって……!! でも準備が整いましたので、こちらにどうぞ!」
前回と同様、マーガレットに案され闘技場へ移する。
「今日はいよいよ賢者の模擬試験ですね……! 擔當のルカ試験はそのぉ、し……いえ、かなり……厳しい方ですが……。でも、ディオさんだったらきっとルカ試験にも認めてもらえると思うんです! がんばってくださいね!!」
ジェレマイアが賢者擔當の試験は癖が強いと言っていたけれど、マーガレットも同意見なのか。
一、どんな人なのだろう。
見送ってくれたマーガレットにお禮を伝え、闘技場の扉を開ける。
前回とは違い、今度は先に試験が待っていた。
「あなたが本日の験者ですね。私は擔當試験のルカ・ディアスです」
試験の姿を見て、かなり驚いた。
……僕と同じぐらいの年齢、だよね?
どうみても十五、六歳にしか見えない。
年齢もそうだけど、ルカ試験の態度が僕を揺させた。
なんだか生きてるじがしないというか……。
無表な上、すごく淡々としゃべるのだ。
サラサラの銀髪と、整い過ぎた顔立ちが、余計人形っぽい印象を與えてきた。
始終笑顔を浮かべていた犯罪者と、人形のような。
ギルドの擔當試験たちって濃いなぁ。
「ここに座って下さい」
前回はなかった一人がけのソファーがふたつ、向き合う形で部屋の真ん中に用意されている。
ルカ試験がソファーにちょこんと座ったのを確認し、僕も腰を下ろす。
「さっそく、あなたの知識を試させてもらいます。これから五十の魔の名前を上げ、その魔をあなたならどういう方法で倒すかを答えていってください。一につき制限時間は二十秒です。躓いた時點で不合格です。それではどうぞ」
これは僕にとってサービス問題のようなものだ。
悪喰を使って吸収した魔の知識は完璧に覚えられている。
すらすらと答え続け、あっさり五十に到達した。
「なるほど。記憶力がいいのですね。それに、プレッシャーに負けない肝の座った格をしているようです。ちなみに今の試験で、験者の二割が不合格になります」
その數字が多いのかないのかいまいちわからない。
「ところで、あなたが選んだ魔は、SSランクのものばかりでしたね。かなり意外でした」
相変わらず無表のままなので、意外だと言われてもが全然伝わってこない。
「どうして意外なんですか?」
「時間制限を設けられている狀況では、スライムなど馴染み深い近な魔を上げる人が大多數です」
「なるほど……」
逆にそういうレア度の低い魔に関して、僕はまだ知識が足りていない。
試験が終わったら、低レベルの魔もちゃんと吸収したほうがよさそうだ。
「知識に関しては、Aランクの賢者が求められるレベルに達しているようです。戦闘能力に関しても、すでにギルドマスターから報告をけています。そちらも問題ないようですね。――ですが」
微笑むことなく、むしろ冷たすぎる眼差しで、ルカ試験が僕のことをじっと見つめてくる。
「そのふたつの能力は、あって當然のようなもの。それぐらいでは合格にはできません」
「……本當の試験はこれからというわけですね」
ルカ試験が靜かに頷く。
「もうお聞きになっているかもしれませんが、私はこのギルドの賢者擔當試験になってから、ただの一人も合格者を出していません。だから落とされたとしても気にしないでください」
「あ、はい」
そんな忠告をけてからわずか數分後。
この氷のような試験が、ふにゃっと笑って、僕に合格の言葉を告げてくることになるなんて――。
おそらくルカ試験自も、まったく予想していなかったはずだ。
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