《じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出の魔導士、通訳兼相棒の新米回復士と一緒ずてツートな無詠唱魔で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】》ビラリ(瞬間移

フェンリルだと? レジーナは思わずオーリンと顔を見合わせた。

オーリンも眉間に皺を寄せて男を見た。

「その……ふぇ、ふぇ……ヘンリルはどこにいる(どごさえだ)?」

「そのフェンリルは今どこに?」

「ここから四里ほど北の村だ……俺たちはその場にたまたま居合わせた冒険者で、住民を避難させつつなんとか侵攻を喰い止めようとしたんだが……」

このザマだ。その先を言い淀んだ男に、オーリンは「なも言わなくて(へわなくて)いい」と制した。

「それにしてもフェンリルなんて……今までそんな魔が王都に接近したことなんかないのに……」

「確がに、し(わんつか)妙(えぱだ)だけんた話だな……」

オーリンも顎に手を當てて不審そうな表を浮かべる。

フェンリルとは巨大な狼型の魔で、兇暴な質ではあるものの、その生息地域は広大な森や草原に限られ、王都のような中心部までやってくることは滅多にない。

ましてや今治療した傷は――如何に大型の魔とはいえ、たかだか牛程度の大きさが関の山のフェンリルであるのに、その爪痕はまるで恐竜に屠られたかのような巨大さだった。

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どうやら、今暴れ回っているフェンリルは異常とも言えるほどの、特大の個であるらしい。

そんなものがってきたら、王都は――! 焦燥に駆られるレジーナの橫で、オーリンは落ち著いた聲で冒険者に言った。

「詳すぃごどはわがった。とにがく、よぐ頑張って(けっぱって)ぐれだな。後の事ば他さ任せでゆっくりど休んでけへ」

オーリンが言うのと同時に、《ギルド通り》の人々をどやどやと押しのけながら衛兵隊がやってきた。

傷だらけの冒険者二人は衛兵隊の擔架に乗せられ、順次救護所へと運ばれていった。

その様を見ながら、レジーナは頭一つ分高いオーリンの顔を見上げた。

「先輩……!」

「ああ、わがってる。ヘンリルとなれば、これは衛兵隊でなんどかなる相手でばないだろう(ねびょん)。どうにかしないと(なじょぬがすねば)」

「そうと決まればとにかく戦力を集めないと……各冒険者ギルドにこの事を伝えて……!」

「そんな(すたな)時間はねぇ。俺(わ)が一人(ふとりこ)で行ぐさ」

「そうですね、私たち二人でなんとか戦力を掻き集めて……」

そこまで言いかけて、はい? とレジーナはオーリンを見た。

「せ、先輩――今なんて?」

「何喋てる。俺(わ)で喰い止めるしかねぇど喋たんだ。今がら王都のギルドさ布告(フレゴド)して回る時間なんかねぇべや」

「そ、そんな無茶な!」

正気なのか!? とレジーナはオーリンの前に回り、翻意を促した。

「せ、先輩! いくらなんでも無茶ですよ! 今の人たち見たでしょう?! 結構ベテランの冒険者でも敵わなかったのに! いくら先輩でも一人でいくなんて無茶ですよ!」

「なぁに、ツガルもんばナメんなよ。ツガルにはコブラもいるしゾウもいる。なぁぬがヘンリルだ、あすたら犬コロよりもシラカミの人喰い熊の方がなんぼ兇暴(きかねぇ)がわがんねど」

「そんな無茶苦茶な……!」

「とにがぐ、俺(おら)は行ぐ。あんな(あさな)もの、王都に近寄らへるわげにぁいがねぇ。なくとも時間ば稼がねばまいね」

どうやら表を見る限り、オーリンは本気らしい。

ツガルものは誰でも強――そう言っていたのを思い出し、説得は不可能だと悟ったレジーナに、オーリンは言った。

「お前(な)はここで待ってろ」

え? とレジーナはオーリンの顔を見た。

「お前(な)の言う通り、危険だのはその通りだべしな。それに、怪我人がまだ王都さ來るがもわがんね。回復士ばいだ方が良いべ」

「な……何を言ってるんですか! 先輩だけを行かせるわけには行きませんよ!」

レジーナが大聲で言い、ローブの腕を摑むと、オーリンがし驚いたようにレジーナを見た。

「お前(め)……」

「昨日言ったこと、もう忘れたんですか!? 先輩と私は同じパーティなんです! 先輩がどうしても行くって言うなら私もついていく、そうでしょう!? 先輩がなんと言っても、私はついていきますよ! いいですね!?」

必死に言い張ると、オーリンはしばらく、こいつは本気なのかと言いたげな顔でレジーナの顔を見つめた。

嫌だと言ってもついていくぞ、という意志を全から立ち上らせて仁王立ちしていると、ふと――オーリンが笑った。

「なるほど。お前(な)、なっかながの強(じょっぱり)らすぃの」

「それ、褒めてるんですよね?」

「もぢろんさ。――さぁ、そうど決まれば覚悟ばええが。暴な(あらげねぇ)手段で行くど」

「へ?」

暴な手段……? まさか馬にでも乗っていくのか、と思った途端、レジーナの右掌をぐっとオーリンが摑んだ。

「わわ、せ、先輩……!?」

「黙っででけろ。今ヘンリルの生命力ば探知すてるはで」

そう言うオーリンは瞑目し、何かに意識を集中させるように沈黙して數秒。

克、と目を見開いたオーリンは「見つけだど」と低く言った。

「よし、そこまで瞬間移ばするべし」

「はい?」

「瞬間移だ、瞬間移。何、最初はし(わんつか)頭ばぐらぐらする(ばやばやずぐ)なるども、すぐによぐなるはで。よし、準備ばいいが――」

瞬間移って――!? レジーナは仰天していた。

空間にを開け、亜空間を瞬時にして移する瞬間移――それは高位の魔導士でなければ扱えない、やはり高難易度な魔法だ。

呪魔法まで平然と使いこなすオーリンにしてみればできて當たり前の蕓當なのかも知れないが――しかし、もちろんレジーナは験したことがない。

「ちょ、ちょっと待って! 先輩、心の準備がまだ――!」

そこまで言いかけた時、それに押し被せるようにオーリンがんだ。

「【瞬間移(ビラリ)】!」

その瞬間、レジーナが見ていた目の前の景が、コマ落としのように消えた。

こごまで読んでもらって本當に迷ですた。

「おもしぇ」

「続きば気になる」

「まっとまっと読ましぇ」

そう思らさっていただげるんだば、下方の星コ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。

まんつよろすぐお願いするす。

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