《じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出の魔導士、通訳兼相棒の新米回復士と一緒ずてツートな無詠唱魔で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】》イデバ(もういいぜ)
なんだ、一何なんだ、この二人は――!?
レジーナは、カチカチ……という自分の奧歯の音、頭のが下降してゆく音とを同時に耳に聞いていた。
これらは――果たして人間だろうか。
影そのものになっていてよくわからないが、それはどう見ても常人の背丈と軀ではない。
ふたりとも特大の椅子に腰を落ち著けているが、それだけでレジーナのの丈を圧倒する、まるで小山のようなである。
蝋燭の燈りだけでは到底足りない暗がりの中で影そのものになりながらも、二人の男たちはレジーナたちの品定めをやめない。
「興を抑えろ、執政。見ろ、貴公があまりに威圧するから萎してしまったではないか」
「何を馬鹿なことを。威圧したのは貴公の方であろう。貴公の顔は怖いのだ。趣味で何人人を殺めて來たのか知れぬ顔をしておる」
「それを言うなら貴公の方もであろう。とりあえず食事をやめろ。客人を前にして失禮ではないか」
「こうして人と話しながら食べている限りは太らぬから得なのだ。カロリーは慎み深い。客人を前にすれば遠慮する」
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「ちょっと何を言っているかわからんのだが」
「何故わからぬ」
「そろそろ本題さってけねが」
意を決したように、オーリンが口を開いた。
はっ、と、レジーナもその聲に我を取り戻した気分になる。
「わざわざそっち(そっつ)がら呼び出したっつうごどば、何が俺たち(わだ)ささせでぇごどばあるんだべや。こいでも忙しいでの。用事ばあんだら早く(はぐ)言ってけねが」
その一言に、ぴたり、と影たちがきを止めた。
「そうだ……そうであったな、客人。まずは禮を言おう。暴走していた飛竜――マサムネを正気に戻してくれたそうであるな」
男の一人、どうやら黒髪であるらしい、將軍と呼ばれる男が言った。
「マサムネはズンダー大公軍を持ってしても調伏の葉わなかった魔――それを討伐するならまだわかる。だが貴公らはマサムネを正気に戻すことまでしてくれたと聞いている。……失禮でなければ、一どうやったのか教えてくれまいか」
「なも造作もない(じょさね)ごどであった。呪いだ。マサムネは誰ががら呪いばかげらえでいだった。それを解除すただげだ」
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「ほう――呪いとな」
金髪の男が代わりに答えた。
だが、言葉の容とは裏腹に、その聲には些かの驚きも揺もじられなかった。
彼らズンダー大公家がこの事件の黒幕であるのか否か、到底判別など不可能な聲である。
「一誰が、とは問うまい。おそらく貴公らにもわかってはおらぬのだろう。とにかくその働きには謝している。まずそれだけは理解していただきたい」
言葉こそ丁寧だったが、それは事実上の命令に聞こえた。
否、この二人から発せられる言葉であれば、それはどんな言葉でも命令であったに違いない。
「さて、ここからが本題だ。その貴公らの腕を見込んで頼みがある」
やはり來たか――數段固くなったオーリンの表がそう言っていた。
この二人は自分たちにただ禮が言いたくてここまで呼びつけたわけではない。
竜殺し(ドラゴンスレイル)をし遂げたオーリンに何かをさせるつもりでいるのだ。
「頼み、っつうど?」
「とある方を連れ戻してほしい。生かしたまま、だ」
生かしたまま――不穏な一言に、レジーナはごくりと唾を飲み込んだ。
「ここから東にある景勝地を存じおるか。東の絶海、マツシマ群島――」
「マツシマ、っつうど、あのマツシマがえ?」
マツシマ。その言葉に、レジーナも思い出すものがあった。
だがそれについての予備知識を呼び起こす前に、金髪の男が口を開いた。
「そう、マツシマ――絶景を謳われるしき島々。ズンダー大公家蔵の庭であり、完全足の聖域でもある。その目的の人はその島のいずれかに潛伏していることはわかっている。それを貴公らに連れ戻してほしいのだ」
「誰だ? 犯罪者でも逃げ込んだっつうのが? それを俺たち(おらだ)に捕まえろ(おしぇろ)ど? それはいぐらなんでも――」
「口を慎め」
黒髪の男の野太い聲での叱責に、オーリンが口を閉じた。
「とにかく、その方の氏素はいずれ知れることとなるだろう。よいか、もう一度確認する。その方を連れ戻せ。可能ならば無傷で、なくとも生きておりさえすればよい」
なんだ、一誰を、何故連れ戻せというのだ。
肝心なところは完全にマスクしたままの依頼に、レジーナは強い懸念を覚えた。
いずれにせよ、一介の冒険者に依頼する容ではないことだけは確かである。
「それ以上は――教ぇねっつうのがい」
「いずれわかる、と言ったはずだ。よいか、あのしき島々がただしいだけの観地であると思っているなら、今ここでその先観は捨ててゆくがよい。あの島々を渡って何もないなどとは思うな。あの島の正は――いずれ貴公らも知ることになるだろう」
かなり不穏な一言とともに、「依頼」は終わったらしかった。
それ以上は何も言うことはない、というように、金髪の男が食事を再開する音が聞こえた。
「以上にて謁見は終了、もういいぜ」
金髪の男が手を叩くと、先程の口ひげの男が広間にってきた。
さぁ出ろ、と促されたレジーナは、莫大に救われた気分で広間を後にした。
◆
しばらく経っても、まだ歯のが合わなかった。
再び広い通路を歩きながら、今のは一……と悶々と考えているレジーナは、ふと前を黙々と歩くオーリンの姿を視界にれた。
珍しいことに、今までどんな修羅場に於いても冷靜だったオーリンの額に――脂汗が浮かんでいた。
オーリンも恐怖していたのだ、と理解したレジーナは、そこでやっと口を開く気持ちになった。
「先輩、今のは一――」
「俺(わ)さもわがんね。ただ、話ば斷ればどんな目に合わされだもんだがわがんねど。あの威圧、どう考えでも人間でばねぇ――」
オーリンはローブの裾で額を強く拭った。
「ややや、とにがく、あいつら(えづら)の機嫌を損ねねぇようにするのが一杯であった……」
ぼそっ、と、安堵とも痛恨とも取れる一言を最後に、オーリンは無言になった。
そのまま黙々と宮殿を歩き、正門に出ると、すっかりと空は夕焼け模様になっていた。
「執政、ならびに將軍閣下より、お二人への依頼は伺っております。マツシマへ向かわれる……ということでしたな」
口ひげの男が居住まいを正して言う。
二人とも無言でいるのを同意とけ取ったのか、男は話を再開した。
「今夜は最高級の宿を城下に用意しておりますので、そちらにご逗留下さい。既に馬車も仕立ててございます。湯浴みなどして、明日への鋭気を十分に養っていただきますよう」
それでも――ふたりとも無言だった。
あまりに不穏な依頼容、明日から自分たちは一何をさせられるのだろうという不安は、最高級の宿、湯浴みなどという言葉でもめられることはなかった。
それを察したのか、口ひげの男がレジーナとオーリンに視線を往復させた。
「これもほんの好意から申し上げることですが――これからのお二方の旅路は々つらいものになるでしょう。執政と將軍の命令は絶対です。逃げることも、斷ることも出來はしない。ましてやあの方を連れ戻せなどとは――」
男はそこで、そう言いかけた自分を戒めるかのように無言になった。
「まぁいい、それ以上のことは言わなくてもわかっているでしょう。どうぞ、くれぐれもお気をつけて。――私からは以上です」
口ひげの男はそう言い、レジーナたちを馬車へとった。
今まで乗ってきた馬車とは段違いの広さ、そして豪華さを誇る馬車に腰を落ち著けると、馬車はゆっくりとき出した。
「――もう考えでもダメだなや。覚悟決めるすかねぇべや、レズーナ」
ふと――出発からしばらく経ったとき、オーリンが重く口を開いた。
この國ではかなり珍しいはずの漆黒の瞳が、ある種の決意を浮かべて夕暮れのベニーランドの夕焼け空に結ばれる。
「何は無くとも――意地張る(じょっぱる)すかねぇさ」
意地張る(じょっぱる)――。
その不思議な語に何故だかし勇気づけられた気がして、レジーナは頷きを返した。
こごまで読んでもらって本當に迷ですた。
「たげおもしぇ」
「続きば気になる」
「ちょっと何言ってるかわかんないですけど」
そう思らさっていただげるんだば、下方の星コ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。
まんつよろすぐお願いするす。
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