《じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出の魔導士、通訳兼相棒の新米回復士と一緒ずてツートな無詠唱魔で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】》キタグッテ・マルドー(斬り殺すぞ)

ウウー、とワサオが唸り聲を強めた。

その様を一瞥し、剣の柄に手をばしたアルフレッドは、すらりと白刃を抜き放った。

「あなたとその犬で協力し合えば、數分は生きている事ができるかもしれない。ただそれは度や覚悟の話ではない。単純に力、技の話になる」

そのまま、アルフレッドは剣の鋒を真っ直ぐレジーナの鼻先に據えた。

十歩ほどの距離が開いているはずなのに、研ぎ澄まされた殺気がそうさせるのか、まるで目の前に鋒を突きつけられている気さえする。

「この一週間、つぶさにあなたを観察させていただきました。どう見てもあなたは戦闘などできない――否、それに巻き込まれる可能すら一顧だにしたことがないらしい。逃げる以外のの護り方を知らないんでしょう? 無力な人だ」

わかっていますよ、というようにアルフレッドはの端を持ち上げた。

「護られることに慣れ、己が剣を振るうことを知らない。護ってくれるはずだった青年は今それどころではない。さぁ、あなたは赤ん坊になったも同然だ。どうします? 多できるらしい回復魔法を応用して目眩ましでも仕掛けてみますか?」

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挑発的な一言に、今まで怯え一になっていた心の底に、怒りの赤が一滴垂れ込んだ。

「ふざけないで……!」と歯を食いしばったレジーナは爪が食い込むほどに握り拳を握った。

「結局、私は足手まといだって言いたいんでしょう? ハッキリ言わないでアレコレ言葉選んでんじゃないわよ、クズのくせに!」

その罵聲に、アルフレッドは整った眉をし震わせたように見えた。

「力や技がなくても意地は人一倍あるわよ、これでも冒険者よ! 絶対に無傷で通すもんか、アンタの腕でも足でも喰らいついて、ハムみたいに食い千切ってやる!」

ワン! と、ワサオがレジーナの啖呵に呼応するように吠えた。

一歩も退かぬ、という決意でアルフレッドを見つめると、アルフレッドの顔が苛立ちに歪んだ。

「おやおや……あなたを々見くびっていたようだ。これは気をつけて、全力で叩き斬らないと、確かに指の一本や二本は危ないかもしれない」

遊んでいたアルフレッドの左手が、剣の柄に回る。

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その瞬間、凄まじい殺気がをびりつかせるほどに放たれ、レジーナの肝が冷えた。

「さぁ、覚悟はよいか。あなたの度に敬意を払い、全力でお相手しましょう――!」

瞬間、アルフレッドが地面を蹴った。

ゴォ――という音が耳の橫を通り過ぎた気がしたのは気のせいだろうか。

絶対に逸してたまるか、と決めた目を見開き、アルフレッドの振るう白刃の円軌道を追いかけた、その時だった。

スッ、と視界に割り込んできた黃が――真っ直ぐレジーナに吸い込まれるはずだった燐け止めた。

ギィン! という音が鼓に突き通り、うっ、とレジーナは顔をしかめた。

何だ、何があった――! と薄目を開けたレジーナの前に――巖のように立ちはだかるものがある。

「な――!?」

アルフレッドさえ、己の剣をけ止めたそれを驚愕の目で見つめた。

小さな一杯怒らせ、差させた二本の木刀を頭で固定して――。

イロハが、アルフレッドの一撃を渾の力でけ止めていた。

「アルフレッド――」

低く、それでも捨てきれない何かを滲ませて、イロハがいた。

その一撃をけ止めることもこの小柄では相當に辛かったはずなのに、イロハはまるでそういう形の銅像であるかのように微だにしない。

「そなたの言う通り――いや、そなたの言う通りであったのだろうな」

カタカタ……と、木刀を持つ手が震え、剣とれあって金屬音を立てる。

「私がそなたを側に置いたのは、確かに大公位を簒奪してほしかったからだ。知らず知らずのうちに私はそなたの存在に甘えていた。私より遙かに優れたるそなたに……。わかっているなら大公位を禪譲すればよかったのに、その覚悟さえ私にはつかなんだ。何もかも――私は怖くてたまらなかった」

イロハの獨白を、アルフレッドは意図の知れぬ強張った表で聞いている。

ぼたぼた、と、イロハの顔から汗の雫が落ち、砂浜に落ちて染みを作った。

「今も……正直、私はそなたが恐ろしくてたまらない。そなたがどんな大義名分を持ってこんなことをしでかしたにせよ……私には正直、これは狂人のやることとしか思えぬ」

「な……なんだと……!?」

そこで初めて、アルフレッドの顔がほんのし歪んだ。

一瞬、取り繕いきった鎧のような空気に亀裂がり、イロハの言葉が初めてアルフレッドのに突き刺さったかのように思えた。

「三百萬のズンダーの無辜を殺す大義……その大義が如何なるものであるのか、卑小な私には想像すらつくことではない。だがそなたはもう、そうと決めておるのだろう。そんな酷いことでも、一度決めたらやり通すのだろう? そうすると決めたら愚かにもそう思い定める男だよ、そなたは――」

イロハが、克と目を見開き、アルフレッドを剣越しに見つめた。

その目に――し、しだけ、同じを分けた人間に対する哀れみが滲んだ。

「私の兄である男ならそうであろうさ。――妹である私がそうだからな」

「――ッ!?」

アルフレッドが、何か意表を衝かれたような表を浮かべた。

け止められた剣を外し、飛び退ったアルフレッドに向かって、イロハは二本の木刀を構えた。

「アルフレッド! もう貴様を赦すことは出來ないッ!」

迷いを吹き消すようにして、イロハが小さなを振り絞って絶した。

「大逆の重罪人、トーメ伯アルフレッド・チェスナットフィールド! そして、ズンダーを、そしてベニーランドを破壊せんと企てる忌まわしき者よ!」

小さな足を踏ん張り、を張り、背筋を正し、短い手足をいっぱいにばして。

イロハが天をも轟かすほどの大音聲で宣言した。

「來い! その歪んだ心を、痛みに狂った人生を、この大公息(プリンセス)、イロハ・ゴロハチ・ズンダー十四世が叩き直してくれるわッ!!」

轟く波濤の音をも圧して、その聲は響き渡った。

まるで赤められた鉄が灼熱を発するかのように、イロハは全から闘気をみなぎらせてアルフレッドの前に立ちはだかった。

一瞬、その意気に圧されたようにたじろいだアルフレッドだったが――數秒後にはし呆れたような表で笑った。

「これはこれは……隨分勇ましいものだな」

アルフレッドは肩を竦めた。

「冗談でしょう? あなたでは私には敵わない。斬り結ぶことすら……。今の一撃をけ止められたことはし意外でしたが、偶然がそう何度も続くわけではない」

挑発にも、イロハは何も答えない。

それを恐怖の表れとけ取ったらしいアルフレッドは更に続けた。

「無駄な抵抗はおよしなさい、プリンセス・ゴロハチ……いや、イロハ様。あなたは護られる側であって護る側に回るお方ではない。楽に死ぬ機會を逃すことになりますよ? それは々……」

「黙れ!」

再びの一喝に、アルフレッドが口を閉じた。

「敵わなくたって護ってみせる、それが王なるものの務めだ! やせ我慢なら生まれた頃から何度もしてきた! 元より非才の私にはそれしかない! ならば……!」

イロハが、奧歯を噛み砕くほどに歯を食いしばった。

「そのやせ我慢、死の間際まで張り通すのみ!」

瞬間、イロハが気合の怒聲とともに地面を蹴った。

小さなを砲弾のように小さく丸め、アルフレッドに斬りかかる。

一瞬、アルフレッドの挙が遅れた、ように、レジーナには見えた。

イロハの覚悟に気圧されたか、あるいは……と考えるより先に、なんだかはっとしたような表でアルフレッドは剣を構えた。

ガキン! という音が発し、イロハの一撃が剣の峰でがっちりとけ止められた。

うう、とまるで猛獣のように唸り聲を上げ、イロハはアルフレッドの顔を睨みつける。

「ちっ……!」

アルフレッドが右足でイロハを蹴飛ばし、イロハは砂を巻き上げながら後ろに吹き飛んだ。

「イロハ……!」とレジーナが聲を上げるのに続いて、アルフレッドがいた。

「何か小手先でも凝らしてくるかと思いきや、力任せの突進とは……。まるで獣だな」

心底軽蔑すべきものを見た、というように、アルフレッドは砂浜に転がって咳き込むイロハに大で歩み寄るや、そのまま剣を大上段に振り上げ――慈悲なく振り下ろした。

ぐっ、と砂を摑んだイロハが地面を蹴り、貓の敏捷さでその一撃を躱した先で、イロハはなんとか地面を踏みしめ、勢を立て直した。

ぶん、ぶんっ……と次々振り抜かれる冷酷な剣戟を紙一重で躱しながら、イロハはやがて飛び退って間合いを開ける。

「やれやれ、あまりすばしっこくかれると斬りにくくて敵わないな」

「黙って斬られるつもりなどないと言ったはずだ! 私の背中には三百萬人の命が乗っておる!」

イロハは再び木刀を構えた。

「どうした、アルフレッド・チェスナットフィールド、それでも我が兄か! 私を一刀のもとに斬り伏せるのではなかったのか! それとも、妹可さに太刀筋が鈍ったか!」

そのイロハの言葉に、アルフレッドの顔がはっきりと歪んだ。

「黙れ……!」と聲を荒げたアルフレッドが地面を蹴り、イロハに向かって剣を振り下ろした。

隨分短絡的で隙だらけな――と思ったのは、イロハも同じだったらしい。

真下に振り下ろされた剣を最小限のきで避け、返す刀で振り上げられた木刀に――アルフレッドが目を見開いた。

ゴ! という音ともに、アルフレッドの顎先が強かに跳ね上げられる。

レンズが砕ける音が聞こえ、銀縁の眼鏡が砂浜に落ちた。

「ぐっ……!?」

アルフレッドが慌ててよたよたと後退し、剣を下ろしたまま右手の服の袖で顔を拭った。

まさか一撃を喰らうだろうとは思っていなかったことは、振り返ってイロハを見るその表語っていた。

「今のが真剣ならば……貴様は死んでいたな」

イロハの靜かな指摘に、アルフレッドの白い顔が紅した。

イロハの一言一言、挙のたびに――アルフレッドが取り繕った見えない鎧が剝がれ、千切れ、その下に隠されていた何かが剝き出しになてゆくのがわかる。

「イケる――」

レジーナは確信を込めて呟いた。

「イケる! イロハ、頑張って!」

レジーナは、まるで數倍も大きくなったようなイロハの背中にんだ。

「あなたは絶対に無力じゃない! あなたならできる! お願い、絶対に負けないで! ズンダーの未來を護る……今のあなたならそれがきっとできる! 頑張って!」

ワウ! とワサオも吠え、尾をちぎれんばかりに振り回した。

イロハ、そしてアルフレッドがそれぞれ発する闘気。

そしてその熱に浮かされた一人と一匹の力強い聲援が、マツシマの(うま)しき海を沸騰させた。

「たげおもしぇ」

「続きば気になる」

「まっとまっと読ましぇ」

そう思らさっていただげるんだば、下方の星コ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。

まんつよろすぐお願いするす。

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