《じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出の魔導士、通訳兼相棒の新米回復士と一緒ずてツートな無詠唱魔で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】》ヘナガ・バ・アンズゲル(背中を預ける)
「先輩! オーリン先輩!」
レジーナが駆け寄ると、砂浜に大の字になっているオーリンの頭がいた。
一瞬、死んでしまったのではないかと心配になったが、その表は笑っていた。
「おお、レズーナ。俺(おら)は無事(けね)ぞ」
「ああよかった! 死んじゃったかと思いました!」
「ややや、げねぇ。これっぐらいの戦闘でなもかもはぁ參って(おだって)まったで」
オーリンは再び照れたように笑い、レジーナが肩を抱き抱えたイロハを見た。
「エロハ、お前(な)がやったんだべ?」
「あ、ああ……」
「途中までは見でいだったぞ。よぐやった。お前(な)がベニーランドば護ったんだね。お前(な)は最高の大公さんだじゃ」
その言葉に……イロハは何だか困ったように俯いた。
あれ? とレジーナが不思議に思うと、イロハがもじもじと言った。
「そう、なのだろうか……」
「なんだや?」
「私は……なってもよいのだろうか、その、大公に」
「はぁ?」
イロハは自分の両手のひらを見つめた。
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「結局、そなたたちがいなければ今頃ベニーランドはどうなっていたかわからん。私一人ではとても事を治められなかった。それに結局、原因は私のようなものでもあるのだ」
イロハは言葉に詰まった。
「やはり、私は誰かに大公位を禪譲すべきではないのだろうか。私のような愚が大公などになったら、今後も領民に迷がかかるのでは……」
こう見えて――イロハは意外にも心配癥らしい。
こういうときは思いっきり喜べばいいのに、おそらくそういうことすら自分にじてきたのだろう。
レジーナが何か聲をかけてやろうとする前に、オーリンが半笑いの聲を発した。
「エロハ、こっちゃ來(こ)」
「え?」
「いいがら、俺(わ)の側さ座れ(ねまれ)」
「イロハ、先輩の側に」
レジーナが通訳してやると、おずおずとイロハがオーリンの側にしゃがみ込んだ。
どれ、と大義そうに持ち上げられたオーリンの右手が、イロハの頭をでた。
「うえっ――!?」
「なも心配する(あんつがる)ことねぇ。よぐやった、よぐやったぞお前(な)は。お前(な)は世界一のお姫さんになれんど。俺(わ)が保証してけるはんで……安心して大公さなれ、な?」
よくやった、よくやった……とオーリンは繰り返し、まるで刷り込むかのようにイロハの頭をでた。
なんだか、隨分気持ちよさそうな表ででられているうちに……はっ、とイロハの表が変化し、その顔がポポッと桜に変わった。
「あ、ぶっ、ぶ、無禮者……!」
イロハは弾かれたように立ち上がり、ふらふらと十歩ほど歩くと、こちらに背を向けてしゃがみ込み、何かブツブツと唱え始めた。
何かを察したらしいワサオがワン! と吠え、しゃがみ込んでいるイロハの周りを尾を振ってぐるぐる回り始める。
褒めら慣れていないのが丸わかりの反応に、レジーナもオーリンも苦笑してしまってから――あ、とレジーナは忘れていたことを思い出した。
「それにしても先輩、あの後凄い勢いで走っていっちゃいましたね」
「何(なぬ)が?」
「マツシマの海が割れたときですよ! 私たちを放ったまま振り返りもせずに走って行っちゃって……。正直、イロハがいてくれなかったら私、死んでましたよ?」
ああ……とオーリンが頷いた。
レジーナは苦笑して腰に手をやった。
「全くもう、急事態だったから仕方なかったですけど……次からは後先考えてくださいね? 可くて有能な相棒が死んじゃいますからね」
し口を尖らせ気味に言ってみると、あはは、とオーリンが笑った。
なんだこの反応? ちょっとムカッと來てオーリンを睨むと、オーリンがぼんやり目を閉じた。
「何言ってる(しゃべってら)んだ、お前(な)だって冒険者だべや。あれは放っといだんでねぇ、背中(へなが)ば預けだ、って言う(そう)んだ」
「え――?」
意外な言葉に、レジーナは目を丸くした。
「俺(おら)だって最初(しょで)がら黙って預けられねぇ奴(やづ)を相棒にした覚えはねぇ。お前(な)なら大丈夫だって思ったのさ。だから走っていげだ、そいだけださ」
オーリンは低く笑い――それからそんなことを言ったのが恥ずかしかったのか、ぷい、とレジーナとは反対の方向を向いてしまった。
まぁ予想がつくことと思うが――この一言を聞き逃すようなレジーナの分ではない。
相棒=人生の、という厄介な誤変換を起こした乙脳が急激に勵起し、レジーナは「やっ、やだぁ……!」と悲鳴に近い聲を上げ、顔をポポッと桜に変させた。
「まっ、またそういうこと言う! 人前と犬前でそんな大聲で私を(・)棒(・)扱いするなんて……!」
「はぁ――? レズーナ、何言って(しゃべて)らのや」
「せっ、先輩……! 何度も言いますけど先輩はこういうときに熱的すぎます! せっ、先輩が私のことをして、あ、いや、好いていてくれるのはわかりますけど……! の準備は萬端でもまだ心の準備が……!」
「おりょ、また始まったっきゃ……。おいレズーナ、レズーナ、戻ってこいっつの」
「だっ、だからストレートすぎます! 何があっても俺のところに戻ってこいだなんて! 騙されませんよこの人喰いイモめ! 近づいたら思いっきり抱き締めるつもりなんでしょう!? ダメですって子供と犬が見てるんですから……!」
「はぁ……お前(な)ってば結構厄介な奴だな。この先大丈夫がえ」
呆れたように、否、心底呆れて、オーリンがもっくりと起き上がった。
「さて、馬鹿話は終わりにすんべ、レズーナ、エロハ」
オーリンの聲に、それぞれあちらの世界に行っていた二人の意識が戻ってきた。
さっきとは打って変わった表で、オーリンは切り出した。
「問題は、あの護衛の処遇だ。どうすんだ、エロハ」
イロハの顔が曇った。
「それは……」と俯いたイロハに、オーリンは靜かに続けた。
「こんた事やらがしてしまったんだ。もうごめんでは済まねど。何がすらは責任背負わ(しょわ)さねばねぇ。それが命令でぎんのはお前(な)だげだ。わがるな?」
イロハはしばらく無言になってから、顔を上げた。
「とりあえず――今は詳しいことはわからん。わかっているのはアルフレッドから話を聞く必要があるということだけだ」
迷いない口調でイロハは言った。
「アルフレッドが何故こんなことをしでかしたのか。そして誰の命令をけて、誰の差し金があったのか、それはなんとしても明らかにせねばならん。やつは自分を殉教者であると言っていた。裏で何かしら危険な組織、もしくは思想が働いていると考えるべきだ。事実関係を調査した後……アルフレッドの処分を改めて考える」
決然と言い切ったイロハに、オーリンも「それで良い(い)」と頷いた。
「どれ、それだばそうするが。……レズーナ、ちょっと肩貸してけれ」
「はっ、はい!」
よろよろと立ち上がったオーリンに肩を貸すと、ずっしりと重かった。
一歩一歩、砂浜に足を取られないように慎重に歩くと、ふと風が吹いて、オーリンの匂いがレジーナの鼻に屆いた。
「やれやれ(ややや)、まるで爺様(ずさま)だなえ。たかが魔の百や二百相手にしただけでこったザマだ……」
いいえ、とレジーナは心の中で反論した。
先輩は凄い、凄いです。
誰がなんと言ったって、一番凄いのは先輩ですよ。
マツシマの怪たちをたった一人で食い止めるなんて、他に誰が出來ます?
ボロボロになって、神経すり減らして、ちゃんとみんなを護ったじゃないですか――。
そんなことを言いたくもなったけれど――どうしてもその言葉は口にできなかった。
そう、これはのストーリーではない、冒険のストーリーだから。
それに、今更言葉をわさなくたって、尊敬の念はきっと伝わっている、そんな確信があった。
なんてったって、私たちは相棒なんだから。
なんだか無に気恥ずかしくなって、どうしても表がにやけてしまう。
下を向いてそれをオーリンに見せないようにはしたけれど――きっと心臓の鼓が伝わってしまっているに違いなかった。
凄い、自分はなんて凄い人と一緒にいるのだろう……その事実が嬉しかった。
しばらく、無言で砂浜を歩いて――先頭を行くイロハが、はた、と足を止めた。
ん? と顔を上げた先に――見覚えのある剣が砂浜に突き立っていた。
「アルフレッド――?」
イロハが、きょろきょろと辺りを見回した。
逃げた? いや――あのズタボロの有様でそんな遠くへ逃げていけるわけがない。
どこへ行った? とレジーナも辺りを見回した先に――アルフレッドがいた。
「イロハ、海を見て!」
レジーナが聲を上げると、イロハとオーリンがはっと海を見た。
斷ち割れた海の底、海底に通された一筋の道を――とぼとぼとアルフレッドが歩いていた。
「たげおもしぇ」
「続きば気になる」
「レジーナ・マイルズ、本當の意味で復活」
そう思らさっていただげるんだば、下方の星コ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。
まんつよろすぐお願いするす。
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