《じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出の魔導士、通訳兼相棒の新米回復士と一緒ずてツートな無詠唱魔で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】》タンボ・ノ・マナガ(田んぼの真中)

「……へっくし! ……ぶあああ……!」

「わい! ……おいレズーナ、口ば押さえなが! ご飯粒(ままつぶ)飛んで來たでぁ!」

「あー、すびばせんねぇ……。なんですかね、花癥ですかね」

「今は秋口だがな」

ベニーランドを発ち、北西に進路を取って數日。

レジーナたちはとある鄙びた農村のり口の店で、この地域の名であるというイワナの天丼を一心不に掻き込んでいた。

イワナの天ぷら、というのは初めて食べたが、サクサクのにかかったタレの甘じょっぱさが淡白な白になんとも香ばしい逸品だった。

當然の如くオーリンはその味付けでは不満だったらしく、醤油でドブ漬けにしてから賞味していたのだけど……とにかく、これはなかなかの逸品であった。

イワナの天丼をあらかた平らげたところで、オーリンが楊枝で歯をせせりながら言った。

「シーハー……そいでエロハよ、どうやってヴリコさ向かえばいいのや?」

「本來であればもうし北上してから西に折れるのが安全なのだが、それだと時間がかかりすぎてしまうし、何よりとんでもなく遠回りになるな」

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「シーハー……まぁ、そんだびのぉ。俺(わ)もそうでねぇがなぁとは思ってだども、っつうごでば……」

「ああ、多危険だが、山道を採るしかないな」

流石はここら一帯の地理にも明るいらしいイロハは淡々と説明した。

「ズンダーとヴリコの間は峻厳な山岳地帯ではあるが道がないわけではない。何よりヴリコ大森林の南部にはそれなりに人間も住んでいる。山岳地帯を突破し、ヴリコ南部で一度裝備を整えるなり、報を収集するなりした方がいいだろう」

「え、ええ……また山道ですか……」

レジーナは骨に顔を歪めた。

そう、もう二月も前、レジーナとオーリンは遠くグンマーの山中で遭難し、危うく生命を落としそうになった経緯がある。

「ワウー」と名乗った雪男……見た目は怪だが山男らしく心優しかった彼がいなかったら、レジーナたちは春まで雪の下だったのだ。

それ以來、レジーナはあの厚く雪が積もり、始終凍てつく風が吹きつける山岳の景が半ばトラウマになっていたのだった。

「シーハー……こりゃレズーナ、冒険者が冒険心忘れだらまいねって喋ったのは誰だびの。山越えぐらいなんでもねぇべ」

「いや、オーリン。レジーナの懸念は尤もと言えるかもしれんぞ」

イロハがし居住まいを正して、それから意味深にオーリンを見た。

「オーリンよ、そなたも知っておろう? ヴリコとズンダーを隔てる山は、あのクリコ魔(ま)高原なのだ」

クリコ魔高原。

その禍々しい響きの言葉に、オーリンの歯をせせる手が止まった。

えっ? とレジーナがその様子に驚くと、オーリンが眉間に皺を寄せて楊枝を手の中に仕舞い込んだ。

「クリコ……そうが、そうであった。なるほど、こいづは々(わんつか)厄介だな……」

「えっ、ちょ、なんですか? 置いてかないでくださいよ」

レジーナはイロハとオーリンに向かって慌てた。

「なんですか? クリコってそんなヤバいところなんですか? ちょ、やめましょうよそんなところ行くのは……! っていうか、何がそんなにヤバいんですか!? 例えばめちゃめちゃ怪が出たり、溶巖が噴き出してたり……!」

慌てるレジーナを、イロハとオーリンはその貧しいイメージを憐れむかのような表で見つめ、それから二人でコソコソと話し始めた。

「なぁオーリンよ、聞いたか今の」

「ああ聞いだでぁ。溶巖だってさ」

「多が出るぐらいならまだよいのだよな」

「都會(かみ)の人間だっきゃこいだから嫌(やんた)よな」

「自分の常識で地方を評価するしか能がないのか全く……」

「いつの間にあんたらそんなに仲良くなったんですか!? 地元トーク丸出しにしないでくださいよ! 私が王都生まれ王都育ちなのがそんなに悪いんですか!?」

「ヒソヒソヒソヒソ……」

「ヒソヒソヒソヒソ……」

「ちょ、ヒソヒソやめてくださいよ! うわ地方の人って! 人が見てる目の前で!」

「ヒソヒソ……プーックスクス……」

「ヒソヒソするな! それに今、私の一何を笑った!? いい加減にしてくださいよもう!」

レジーナが喚き立てると、呆れたように二人がのけぞり、両腕でを突っ張った。

「まぁよレズーナ、そったに慌てる(うだでぐ)な。どうせ越えねばまいねぇんだがら慌てたって仕方ねぇよ」

「そうそう、いい歳した淑があまり騒ぐでない、みっともないぞ」

「あんたたちがヒソヒソするからでしょうが! それになんですか、いい加減もったいぶらないで教えて下さいよ! クリコって何がそんなにヤバいんですか!?」

「クリコばかりは言葉で教えても仕方ないのだ、レジーナ。それにな」

イロハが、窓の外に視線をやった。

ズンダー北西部の高い空を、トンビがを描いて飛んでいく。

「我々は今現在――既にクリコ魔高原の只中にいるのだ」

はぁ? とレジーナは気が抜けた聲を発した。

「は……? いや、いやいや。それってどういう……だ、だって、今までずっと田んぼで、平地で……」

「その通りだ。今(・)の(・)と(・)こ(・)ろ(・)は(・)な(・)」

イロハは意味深に言って、オーリンの顔を見た。

何かを理解したオーリンも頷き、ゆっくりと立ち上がった。

「さて、腹一杯(ちぇぐ)なったら野宿の準備でも始めるがな。どうせ一日でばクリコは越えられねぇべし」

野宿って……レジーナはその言葉の真意がますますわからなくなった。

冒険者らしく野宿ぐらい抵抗はないけれど、第一ここはまだ人里で人家がある。

こういう農村はいくらか払えば割と安易に泊めてくれたり、離れを使わせてくれたりするもので、いくらなんでもすぐすぐ野宿になるとは考えにくい。

それ以上に――レジーナがここに到達するまで、山なんて周囲のどこにも見えなかった。

ズンダー北西部はただただ広大な平野部で、そりゃ山も見えたことは見えたが、どれもが半日もあれば越えられそうな規模の小さいものだ。

しかし、オーリンやイロハによれはクリコという高原はとんでもなく峻厳で、しかも々と凄まじい山であるはずなのだが――どこにもそんな規模の山は見當たらなかったのだ。

なんだ? クリコ魔高原とはそんなに不可解極まりない高原地帯なのか?

いまくっているレジーナに構わず、オーリンとイロハは立ち上がって食事代を払うと、ぽいと店の外に出てしまった。

慌ててその後を追って外に出たレジーナは、よくよく辺りを見回してみた。

やはりどこをどう見ても完全なる平野部で、田んぼがどこまでも広がっている穀倉地帯だ。

山のなど――いくら目を凝らしたところで見えはしない。

「さぁて、明日はクリコ越えだ。まぁ、そうなるかどうかはお山の気分次第だけどの」

オーリンが、食べたものを胃にふるい落すかのように背びをしながら言った。

「たげおもしぇ」

「続きば気になる」

「まっとまっと読ましぇ」

そう思らさっていただげるんだば、下方の星コ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。

まんつよろすぐお願いするす。

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