《【WEB版】灼熱の魔様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】》12.魔様、思わぬ人材発掘に度肝を抜かれる
「ご主人様、1週間の寄付が貯まりましたよ! 見てください、これ!」
ララはそう言うと機の上にがばぁあっと公衆浴場からの寄付を広げる。
そこには沢のある皮、キラキラと輝く魔石、香木の樹皮、丁寧に編み込まれた組みひもなど、様々なものが広がっている。
どれもこれも品質の高いもので、溫泉の対価にしてはやりすぎに見える。
野菜とか木の実とか、そういうのをイメージしてたんだけどなぁ。
「……どういうこと? まさか、無理やり徴収したわけじゃないよね?」
村人から強制的にお寶を収奪してしまったのではないかと危懼する私なのである。
もしかすると、公衆浴場についての通達が高圧的で、領民のみなさんを委させてしまったのかもしれない。
善意でやってるっていうのに、これじゃ私、悪徳領主みたいじゃん!
「ふふ、心配はご無用ですよ。領民の皆さんは溫泉のおかげでとにかく元気ですからね。毎日のようにモンスターを狩ってますし、仕事をどんどんこなしてますから」
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ララの話によると、溫泉によって村人の力が強化され、ばんばんモンスターを狩り、ばんばん農業をしているらしい。
いわば、健康のお禮としての大盤振る舞いだそうだ。
うーむ、ありがたくけ取っておくべきか。
「それにしても、魔石がすごいわね……」
魔石というのは世界中で様々に使われるもので、生活に欠かせないものだ。
魔道の明かりや魔よけのエネルギー源になったりもする。
「ご主人様、この魔石を見てくださいよ!」
ララはそう言って、きらきらとる魔石を持ち上げる。
その大きさは手のひらサイズで、かなり大きめだ。
「こんな大きな魔石、なかなかお目にかかれるものではありませんよ! 王都で売れば1ヶ月は遊んで暮らせるかもしれません!」
ララは瞳をキラキラとさせて、村人から徴収した「寄付」について熱く語る。
辺境の魔は魔石が大きいとは聞いていたけど、規格外ってことなんだろうか。
しかし、よくよく考えれば、こういう魔石を私は昔、見たことがあった。
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「これって、実家で取り扱っていたものに似ている気がするけど」
「ふふふ、そうですよね。ラインハルト家は代々、魔石の売買で有名ですからね!」
ララはテンション高く返事をする。
そう、私が追放された実家は魔石の流通を一手に引きけて、巨萬の富を得ているのだ。
実家は辺境に莫大な領地を持ち、そこでモンスター討伐をすることで魔石を収集しているのだった。
実家が魔法第一主義になってしまうのは、結局の所、モンスター討伐に大きく貢獻するからでもある。
魔法=お金という側面も確かにあるんだろう。
「しっかし、こんな魔石がぽんぽん出てきたら、ラインハルト家のみなさんも度肝を抜かれるでしょうねぇ」
ララはそう言ってニヤニヤと笑う。
確かに、目の前にごろりと転がる魔石はそうそうお目にかかれるものではなかった。
こんなものが外から流してきたときには、実家は大慌てするだろう。
あの傲慢な父親が慌てふためくのを見てみたい気もする。
「それにしても、村長さんと孫娘のハンナさんはすごい活躍ですよ」
「本當にあの二人がやってるの!?」
「えぇ、そうですよ。思わぬ人材発掘です!」
モンスター狩りの主力が、あのコンビだと聞いて、私はさらに驚く。
村長さんはこの間まではよぼよぼだったし、ハンナはただのやせたかなしい風味のの子だったのだ。
老人とがモンスターをばっさばっさ切り捨てるなんて想像できない。
「ふふふ、百聞は一見にしかずですよ! ご主人さま、外をご覧ください!」
「ひぃいいい、何あれ!?」
ララが屋敷の外を指さすと、そこには私と同じぐらいの大きさの竜の首が鎮座していた。
こっちを睨みつけていて、怖い。
い、生きてないよね…?
「アークワイバーンです。空飛ぶ小型のドラゴンですね」
「いや、アークワイバーンですって、冷靜に言わないでよ!? いったい、誰が…」
「村長さんと孫娘のハンナさんがやったんだそうです」
つい最近のこと、村の近辺に現れたアークワイバーンを孫娘のハンナと二人だけでやっつけてしまったらしい。
小型とはいえ、竜は竜だ。
優秀な冒険者じゃないと手に負えないと聞く。
老人と村娘が討伐するなんて、とてもじゃないが信じられる話じゃない。
それと、人の家の庭に竜の首をおくなんて、けっこうな嫌がらせだと思う。
「ええ、ハンナさんを村長さんが投げて、その勢いで首をずばっと一発らしいですよ。さすが剣聖ですね、サンライズさん」
「は……? 剣聖?」
ララは笑顔でそう言うのだが、私の表は一気に固まる。
だって、この村には似つかわしくない<<剣聖>>なんて言葉が出てくるんだもの。
「村長のサンライズさんって、あのサンライズなの!? まさか竜殺しのサンライズ・サマー!? 黃昏(たそがれ)のサンライズ!!?」
「まさかもなにも、最初から名乗ってたじゃないですか」
「いや、そりゃそうだけどさぁ……、そんな伝説上の人がこんな村にいるなんて思わないでしょ。そもそも、普通のおじいさんだったし」
村長に初めて會った時、彼は怪我と老衰でぷるぷると震えていたのだ。
どうしてあれを悪竜殺しで名高い、伝説の騎士だと思うことができるだろうか。
ララも気づいていたのなら早く教えてほしい。
それにしても、黃昏のサンライズって朝なのか、夕方なのかどっちつかずな二つ名だな。
「ハンナさんもメキメキ剣の腕をあげてらっしゃるそうですよ」
溫泉にって以降、ハンナは運能力がどんどん開花して、化け(モンスター)じみた剣の達人になっているのだ。
剣聖の孫ってことになるから素養はあったんだろうけど、私の溫泉がとんだ化けを誕生させたのではないかと複雑な気分になる。
あの子、思い込みが激しいから、ちゃんと見張っておかなきゃいつか何かしでかしそうだし。
「とにかくご主人様への謝と畏敬をこめての供……、いや寄付ですから素直にけ取りましょう」
「ん? 今、供って言わなかった?」
私はララの言葉を聞き逃さなかった。
供、それは神様にささげるためのお供えということだ。
決して、領主におさめる類のものではない。
「あはは、村人の皆さんに『寄付でいい』とお伝えしたら、魔様にお供えをするぞと盛り上がってしまいまして。現在は、あの公衆浴場は神殿の代わりになりつつあります。名前も『魔様に逆らうやつは地獄行き、仲間は天國送りの湯』という名前に全會一致で決まりまして……」
ララがしれーっととんでもないことを言う。
あはは、じゃ済まされないし!
塩の時もそうだったけど、勝手に名前がつけられちゃってるし!
しかも、長い!
「なによそれ! 天國だか、地獄だか、わかんないけど、怖すぎない!?」
「いやぁ、村長さんとハンナさんがぜひ、この名前がいいと押し切ってしまいまして……」
「押し切られるな!」
「私も地獄っていうのはいい響きだと思いまして、イチオシです!」
「ぐむむ……」
由々しき事態だ。
いつの間にか名前が決まっていたと思ったら、とんでもなく不吉なじになっている。
だいたい、逆らうやつは地獄行きって不穏すぎるでしょ。
私は人の湯とか、の湯とか、泉の湯とか、そういうのがよかったのだ。
「それじゃあ、間をとって魔地天國の湯としましょう」
「間をとってない! 省略しただけじゃん!」
「いいじゃないですか、まじてんごくの湯ってゴロもいいですし。やっぱり、そういうの大切ですよ」
こんこんと諭され、私の村の溫泉がマジ天國の湯となってしまった。
マジ地獄の湯になるよりはマシだけど、なんだかなぁ。
それにしても、だ。
そろそろ、私を「魔様」扱いするのをやめてほしいところだ。
はっきり言って、冗談から出た駒みたいなじで定著してしまったことである。
魔力ゼロの魔なんて、この世界にいるわけない!
「それに神殿とか神様扱いされるのは絶対嫌なんだけど!」
「そこまでではありませんよ。あくまで人間として尊敬している、頼りにしているということですから。ちょっと魚を発させたり、塩を作ってくれたりする魔っぽい人ってだけですよ」
「魔っぽい人……? なんだか、人外扱いされてない……?」
「大丈夫ですよ。それに領主としては結果がよければすべてよしなのではありませんか? 領民の皆さんの敬の表れですし……」
「ぐむむ……、そりゃそうだけどさぁ」
確かにララの言う通りな部分もある。
領民のみんなが溫泉のおかげで元気で暮らせるのなら、それはそれで素晴らしい。
それに寄付されたものは村の発展のためにしっかり使っていけばいいのだ。
とりあえず、道とか、集會所とか、學校とか建設しなきゃいけないものはたくさんあるし。
「頑張りましょうね! ご主人様!」
ララはそう言っていたずらっぽく笑う。
だけど、私はちょっと腑に落ちないのであった。
灼熱の魔様なんて呼ばれて、平常心でいられるわけないじゃん!
◇ 一方そのころ、村人たちは
「魔様の溫泉は最高だな! 疲れなくなったおかげで毎日のモンスターの討伐がぐっと楽になったぜ」
「あぁ。農作業だってどんどんはかどるぞ!」
「あんまりしたんで緑の魔石をお供えさせてもらったぜ」
「俺もジュエルリザードの皮をお供えさせてもらった。魔様にお供えするだけで幸せな気持ちになるんだよな」
「ぼくだって、組みひもをお供えしたよ!」
「あぁ、えらいぞ! みんなで魔様の村の発展のために頑張ろうな!」
溫泉の中で、和気あいあいと談笑する村人たち。
彼らは溫泉のり口にある寄付箱に次は何をいれるのか楽しみにしていた。
【魔様の手にれたもの】
・村人からの供:魔石・モンスターの牙や革など。辺境のものは全て高品質のため、売卻益は大きいと考えられる。
【魔様の人材】
・黃昏の剣聖サンライズ:數十年前に活躍していた黃昏の剣聖こと、サンライズ・サマー。ここ數年は腰痛の悪化により大幅に能力がダウンしていたが、溫泉により回復。黃昏の剣聖の名前のとおり、変幻自在な技を得意とする。
・剣聖の孫:サンライズの孫のハンナ。ここ數年はサンライズの介護のために能力を発揮できずにいたが、祖父の回復を機に能力が開眼。戦うことが楽しいらしく、笑いながら戦う。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「公衆浴場で健康革命じゃ……!」
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***マンガがうがうコミカライズ原作大賞で銀賞&特別賞を受賞し、コミカライズと書籍化が決定しました! オザイ先生によるコミカライズが、マンガがうがうアプリにて2022年1月20日より配信中、2022年5月10日よりコミック第1巻発売中です。また、雙葉社Mノベルスf様から、1巻目書籍が2022年1月14日より、2巻目書籍が2022年7月8日より発売中です。いずれもイラストはみつなり都先生です!詳細は活動報告にて*** イリスは、生まれた時から落ちこぼれだった。魔術士の家系に生まれれば通常備わるはずの魔法の屬性が、生まれ落ちた時に認められなかったのだ。 王國の5魔術師団のうち1つを束ねていた魔術師団長の長女にもかかわらず、魔法の使えないイリスは、後妻に入った義母から冷たい仕打ちを受けており、その仕打ちは次第にエスカレートして、まるで侍女同然に扱われていた。 そんなイリスに、騎士のケンドールとの婚約話が持ち上がる。騎士団でもぱっとしない一兵に過ぎなかったケンドールからの婚約の申し出に、これ幸いと押し付けるようにイリスを婚約させた義母だったけれど、ケンドールはその後目覚ましい活躍を見せ、異例の速さで副騎士団長まで昇進した。義母の溺愛する、美しい妹のヘレナは、そんなケンドールをイリスから奪おうと彼に近付く。ケンドールは、イリスに向かって冷たく婚約破棄を言い放ち、ヘレナとの婚約を告げるのだった。 家を追われたイリスは、家で身に付けた侍女としてのスキルを活かして、侍女として、とある高名な魔術士の家で働き始める。「魔術士の落ちこぼれの娘として生きるより、普通の侍女として穏やかに生きる方が幸せだわ」そう思って侍女としての生活を満喫し出したイリスだったけれど、その家の主人である超絶美形の天才魔術士に、どうやら気に入られてしまったようで……。 王道のハッピーエンドのラブストーリーです。本編完結済です。後日談を追加しております。 また、恐縮ですが、感想受付を一旦停止させていただいています。 ***2021年6月30日と7月1日の日間総合ランキング/日間異世界戀愛ジャンルランキングで1位に、7月6日の週間総合ランキングで1位に、7月22日–28日の月間異世界戀愛ランキングで3位、7月29日に2位になりました。読んでくださっている皆様、本當にありがとうございます!***
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【第二章開始!】 ※タイトル変更しました。舊タイトル「真の聖女らしい義妹をいじめたという罪で婚約破棄されて辺境の地に追放された騎士好き聖女は、憧れだった騎士団の寮で働けて今日も幸せ。」 私ではなく、義理の妹が真の聖女であるらしい。 そんな妹をいじめたとして、私は王子に婚約破棄され、魔物が猛威を振るう辺境の地を守る第一騎士団の寮で働くことになった。 ……なんて素晴らしいのかしら! 今まで誰にも言えなかったのだけど、実は私、男らしく鍛えられた騎士が大好きなの! 王子はひょろひょろで全然魅力的じゃなかったし、継母にも虐げられているし、この地に未練はまったくない! 喜んで行きます、辺境の地!第一騎士団の寮! 今日もご飯が美味しいし、騎士様は優しくて格好よくて素敵だし、私は幸せ。 だけど不思議。私が來てから、魔物が大人しくなったらしい。 それに私が作った料理を食べたら皆元気になるみたい。 ……復讐ですか?必要ありませんよ。 だって私は今とっても幸せなのだから! 騎士が大好きなのに騎士団長からの好意になかなか気づかない幸せなのほほん聖女と、勘違いしながらも一途にヒロインを想う騎士団長のラブコメ。 ※設定ゆるめ。軽い気持ちでお読みください。 ※ヒロインは騎士が好きすぎて興奮しすぎたりちょっと変態ちっくなところがあります。苦手な方はご注意ください!あたたかい目で見守ってくれると嬉しいです。 ◆5/6日間総合、5/9~12週間総合、6/1~4月間ジャンル別1位になれました!ありがとうございます!(*´˘`*) ◆皆様の応援のおかげで書籍化・コミカライズが決定しました!本當にありがとうございます!
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