《【WEB版】灼熱の魔様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】》19.魔様、巨大な木の化けに相対する

「それじゃ、メテオ、この素材を鑑定してくれる?」

「おぉっ、地竜のウロコに、ウェアウルフの牙も! お寶の山や!」

商人のメテオは機の上に広げられたモンスターの皮を前に大きな聲をあげる。

「うちの村の皆さんが、お供え……じゃなくて、納めてくれたものなんだけど、どんなじ?」

「すごいで! こんだけ珍しい素材が取れるんなら冒険者もぎょうさん來るかもわからんな」

いわく十分に価値のある素材だとのことで、冒険者が目のを変えるのではないかということだ。

私たちの領地には<<古代種>>とよばれる珍しい種類のモンスターが発生するらしく、素材回収という意味では魅力的なのだそうだ。

の鑑定結果にワクワクしてしまう私なのであった。

「……せやけどなぁ、それでも、この村に來る冒険者はおらんやろうなぁ」

しかし、次の言葉で撃沈してしまう。

「やっぱり、村が貧しすぎるのが原因でしょうか?」

ララが尋ねると、メテオは深く頷く。

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「今は各地のモンスターが活化して、冒険者が足りないぐらいやからなぁ。わざわざこんな辺鄙な街に來るかっちゅうと微妙やろな」

「宿屋も武の修理屋もないもんねぇ。いくら冒険者が命知らずって言っても難しいかぁ」

そういってため息をつく私である。

まとめてみると、この村がなかなか発展しない理由は以下の2つ。

・村が安全じゃない!

・村が魅力的じゃない!

わかってはいるけど、客観的に言われるとけっこう凹むなぁ。

「そこで、この溫泉リゾート計畫っちゅうわけか……。発想はすごいんやけどなぁ」

そういうと、メテオは計畫書をぴらぴらと宙に振る。

そして、溜息を一つらすのだ。

「これ全部を建てるとなると數億ゼニーじゃきかんかもしれんな。とっかかりだけでも5千萬やで」

「……そんなにかかるの?」

「そりゃそうやろ。仮に人件費を村人で浮かせたとしても、設計する技師が必要やし、材料も必要やし。それを運ぶお金も必要やし。最近はきな臭くなってきたから、木材も釘も高騰しとるんやで」

メテオは私の描いた溫泉の設計図を見ながら、うーむとうなる。

いわく、私の思い描く建をたてられるのは凄腕の職人じゃないと無理とのことだ。

そして、凄腕の職人は貴族や王族のために召し抱えられていて、こんな辺境までは來てくれないらしい。

仮に設計だけお願いしたとしても、數千萬かかることもざらだとか。

うぅ、お金が、お金が足りない……!

どこかの親切な職人が材料を背負って、もってきてくれないかしら。

そんな風に都合のいいことを考えている晝下がりのことだった。

どんどんどんっ!

三人でお茶を飲みながら腕組みをしていると、館の玄関が激しく叩かれる。

「魔様! 樹木鬼(トレント)が現れました! それも尋常じゃなく大きいやつが旅人を追いかけているようです。私たちだけじゃ無理なかんじです!」

焦りの混じったハンナの聲が響く。

どうやらモンスターのお出ましらしい。

それも、ハンナと村長さんじゃ片付けられないレベルの。

私たち三人は大急ぎで村の柵のところへと駆け出すのだった。

「な、なによ、あれ!? 大木じゃん……?」

それは私の実家ほどの大きさの木の化けだった。

その幹部分には巨大な目玉と口のが開いていて不気味にっている。

まさしく邪悪そのものの面構え。

モンスターはっこ部分を足のようにして、にょろにょろと歩いてくる。

「ぬぉおおお、こやつ、なかなかやりおるわい!」

剣聖の村長さんが戦しているようだけれど、腕を切ってもすぐに再生するようで相はよくないようだ。

「ひぃいい、あれって東にある破滅の森のとんでもない奴やんか! 名前持ちのモンスターやで!」

メテオがモンスターを指さしてぶ。

いわく、かなり有名なモンスターらしい。

しかし、そんなやつがどうしてこんな村まで來ちゃうんだろう!?

「ドワーフ魂を見せろ! こいつは親父たちの仇なんだぞ!!」

村長さんと一緒に冒険者のみなさんが、モンスターと戦っているのがわかる。

団長と呼ばれた人は聲の高さから言って、の子だろうか。

はすばしこく駆けまわりながら大きなハンマーを振り回している。

「団長、いくら親の仇だからってこれは無理です!」

「なんだこいつ! 炎が効かないってどういうことだ!?」

「ここは撤退したほうがいいのでは!?」

団長のの子は元気いっぱいだけど、部下の人はそうでもないようだ。

巨大な樹木鬼を前にして、慌てふためいている。

「ええい、逃げるな! あんな村に逃げ込んでもたかがしれてるぞ!」

化けがここまでやってきた理由がなんとなくわかる。

このモンスターと戦していた冒険者の一団か何かが、この村へと逃走してきたのだろう。

それにしても、「あんな村」で悪かったわね。

私の村の防力がゼロなのは事実だけど。

「まずいですね、あれは城破壊王(キャッスルクラッシャー)のボボギリですよ。 ほら、十字の傷がついています! うわぁ、初めて見ました!」

ララは嬉しそうにやたらと詳しく解説してくれる。

モンスター好きの彼いわく、昔の魔王大戦のときに魔王の先兵として人間の都市まで攻め込んできたらしい。

キャッスルクラッシャーとか言われても、この村には城壁どころか木の柵しかないんですけど。

「ご主人様、ここは危険です! 避難してください!」

ララが相を変えてぶけど、そうもいかない。

私にはこの村を守る義務がある。

そもそも、この村を追われたら、他に行く場所なんてない。

尋常じゃなく巨大な木の化けを前に、私は大きく息を吐くのだった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「ドワーフ魂……!」

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