《【WEB版】灼熱の魔様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】》21.別視點:ドワーフのドレスは斷の大地で灼熱の魔に出くわす
「ドワーフ魂を見せろ! こいつは親父たちの仇なんだぞ!」
「団長、いくら親の仇だからって、こいつは無理です!」
「なんだこいつ! 炎が効かないってどういうことだ!?」
私の名前はドレス、ドワーフ共を引き連れて素材回収の旅をしている。
目指すはあの【破滅の森】。
ザスーラ連合國の北の奧にある、斷の大地にある広大な森だ。
そこにはとんでもなく強いモンスターがいる一方で、貴重な素材が回収できると言われていた。
とはいえ、普通、そんな無謀な旅をするやつはいない。
魔王領に近い斷の大地はいわば無法地帯。
兇悪すぎるモンスターと連日連夜戦わなければならないのだ。
いくら貴重な素材が手にるといっても、命と引換えにするものはいない。
しかし、私にはどうしても回収しなければならない素材があった。
それは魔王軍に所屬する巨大トレント、ボボギリの樹皮。
めちゃくちゃいその素材を使えば、鉄壁の要塞でも防でも、なんでも作れると言われていた。
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いつかそれを使って無敵の城でも作ってみたいと私は思っていたのだ。
それにボボギリは私の親父の敵でもある。
素材回収に目のなかった親父は私が小さい頃に斷の大地に遠征をし、ボボギリと戦って敗れたという。
親父はドワーフの中でも歴戦の勇士として知られていた。
つまりあいつを倒すということは、親父の敵討ちでもあるのだ。
私も今回の遠征のために鍛錬に鍛錬を重ね、冒険者ランクも Aランクまで上げた。
自分のひきいるドワーフ旅団もしは有名になった。
これでついに仇をうてる!
そう思って意気揚々と遠征してきたのだが、結果はこれだった。
破滅の森にいたボボギリに遭遇し、攻撃を加えてみたものの全く効く様子がなかった。
森の毒にやられて、足がし麻痺気味だったのも災いし、攻撃に彩を欠いたのもあるだろう。
しかし、それだけではない。
相手がすぎるのだ。
気づいたときにはやつからの攻撃を避けるのに一杯。
このままでは死ぬ。
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久々にそう思った。
恐怖で足が震え、がからからになった。
団員をまとめて必死に逃げ出す。
だが、執念深い格のようでボボギリは木をなぎ倒しどこまでも追いかけてくる!
相手は超高級素材だ。
私も倒せるなら倒したい。
皆を勵まして、必死に攻撃してみせるが、頼みの綱だった火炎魔法も一切効かない。
トレントのくせに火炎がきかないなんてどうなってんだ。
そうこうするうちに平地に出てみると、驚いたことにそこには小さな村があった。
見るからに貧しそうな村だ。
おそらく人口は100人に満たないかその程度だろう。
ボボギリは城壊しとさえ言われたモンスターだ。
このままでは村を全滅させかねない。
自分の判斷ミスを心から口惜しくじる。
「おぉっ、面白そうなやつと戦っとるのぉ! わしも助太刀いたすぞい!」
しかし、そこの門番をしていたじいさんが尋常じゃなく強い!
我々が傷一つつけられなかったボボギリの腕を切り落とし、その侵攻をなんとか食い止める!
その剣速は目で追うことさえ難しい。
年老いているとは言え、おそらくきっと名のある剣士だったのだろう。
とはいえ一人で相手をできるものではない。
ボボギリのサイズは小さな山ほどもあり、一人の人間が立ち向かって勝てる相手ではないのだ。
しばらくすると村からさらに何人かが現れる。
一人は金髪の、一人は黒髪のの子、一人は貓族のの子、そして、もうひとりはメイド姿のだ。
彼たちは何かを話し合ってるようだが、早く逃げ出した方がいい。
こいつは貧しい村などを簡単に壊滅させてしまうぞ。
「村長さん、ハンナ、敵をひきつけといて!」
「心得たぞい!」
「りょーかいです! あははは、こっちにおいで!」
逃げ出すのだろうと思っていたが予想は大きく外れた。
あの黒髪のは門番のじいさんと金髪のの子に號令をかけて、ボボギリを食い止めるというではないか。
なんと無謀な。
あの金髪のの子の細い腕では勝ち目はないだろうに。
しかし、次の瞬間、私は生唾を飲み込むことになる。
彼は自分に迫り來る無數の枝を尋常じゃない速度で叩き斬るのだ。
「あはははは! 楽しいですぅううう!」
しかも笑いながら。
巨大なモンスターと戦って何が楽しいというのか。
彼はなにか悪魔にでも取り憑かれているのだろうか。
もしかして、彼もモンスターなのか?
背筋にぞくりと冷たいものが走る。
「ハンナ、脇が甘いぞい!」
そして、門番のじいさんは相変わらずめちゃくちゃ強い。
ボボギリの腕をひたすら切り落とし、にも打撃を與える。
「つ、つえぇええ!?」
「何者だ、こいつら!?」
二人の思わぬ援軍に私も団員たちも、目を丸くしてしまう。
しかし、それでもボボギリ本は圧倒的にいのだ。
じいさんと金髪のの子が渾の一撃を繰り出すも、 大きなダメージには至っていない。
特に唯一の弱點と思われるボボギリの魔石には一切屆かない。
モンスターの魔石はひときわい。
長い年月をかけて結晶化したボボギリの魔石なら、なおさらだ。
「ちょっと、うそ、まじでぇぇえええええ!?」
しかも、あの黒髪のがボボギリに近づきすぎて捕まってしまったではないか。
これは危ない。
彼からは魔力をじないし、きは多俊敏だけどあの巨大なモンスターにかなうほどではない。
じいさんとの子の強さに任せて、油斷してしまったのだろうか。
ボボギリの太い腕に摑まれてしまっては、もう終わりだ。
どんな剣の達人でも抜け出せないだろう。
きっと數秒後には彼はボボギリに取り込まれてしまう。
もしくは潰されてしまう。
私がボボギリを倒すなんてことを思わなければ……。
後悔の念がどどっと押し寄せてくる。
「ええい、とにかく、魔石だけ発して!」
しかし、私の予想はことごとく外れることになる。
黒髪のがそうんだ瞬間、ボボギリのに赤い線が走る。
そして、ガッシャーーーンという音とともに、額に埋め込まれていた魔石が弾け飛んだ。
「はぁああああ!?」
「魔石が砕けた!?」
「そんなのありか!?」
あの魔石には黒ミスリル並のさがあるはずだ。
それなのに、あっさりと、あっけなく、まるでガラスを叩き割るように。
數秒もしないうちに、あの【城壊し】は沈黙する。
「さすがは我らが灼熱の魔様ですじゃ!! いけにえでも供えねば!」
「魔様に一生、ついていきます! またいけにえになっても大丈夫です!」
あのめちゃくちゃ強い二人がわぁわぁと聲を上げる。
彼らが【灼熱の魔】と黒髪のを呼んだのを私は聞き逃さなかった。
かつて、大地を焼き、生きとし生けるもの全てを追い詰めた恐怖の存在、灼熱の魔。
それはあくまで「おとぎ話」であって、現実世界に存在するはずがない。
灼熱の魔などと名乗るのは、笑いの種だ。
しかし、私は黒髪ののあの姿を見ていた。
魔石を破壊する直前、彼の黒髪の一部は真っ赤に変化した。
まるで炎のような真っ赤な筋がの髪のに浮かび上がったのだ。
私はあの言い伝えを思い出す。
真紅の髪を持つ魔の話を。
世界を崩壊寸前まで追い込んだ、あの邪悪な魔のおとぎ話を。
「ま、魔……!? 灼熱の魔って本當にいたのか!?」
私達はただ呆然と黒髪のを眺めていた。
彼は仲間たちに囲まれ、はにかんだ笑みを浮かべていた。
それは【灼熱の魔】には似つかわしくない、とても無邪気な笑顔だった。
「面白かった!」
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「の子ドワーフ……!」
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