《【WEB版】灼熱の魔様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】》44.魔様、リリに仕事をお願いすると、一生を捧げるとか重いことを言われる

『私はこれからどうすればいいんだろう……』

溫泉から出た「リリ」は休憩所で大きなため息を吐く。

の本名はリリアナ・サジタリアス。

名前の通り、サジタリアス辺境伯の長なのである。

はとある貴族との政略結婚を控えていたのだが、どうしても我慢できずに家出をしたのだった。

その後、クエイクに連れられて、この辺境に流れ著いたのだ。

は迷っていた。

冒険者としてこの危険な村に居続けるか。

それとものほどをわきまえて実家に帰るか。

しかし、実家に帰るということは安全と引き換えに、リース王國のローグ伯爵との結婚が控えていることになる。

ローグ伯爵はでっぷりとえ太った人で、格的にも難ありの人なのだ。

「ひひひっ、かわいらしぃ、娘さんですのぉ」

ローグ伯爵と初めて會った時のことをリリはよく覚えている。

その時のことを思い出すだけで背筋がぞわぞわっとしてくる。

それでもローグ伯爵家は商売だけはうまく潤沢な資金を保有しており、サジタリアスにとって重要な取引相手だった。

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ローグ伯爵は何度も婚姻を迫り、リリの父親はそれに負けして婚約を決めてしまった。

それに反発したリリは夜更けに一人、家出をしたのだった。

溫泉から上がったリリは一人でぼぉっと今後のことについて考えていた。

「あ、リリ! 調子はどう?」

後ろから聲をかけてきたのはユオだった。

どうやら一人一人の冒険者に溫泉の想を聞いているらしい。

「すっごくいいです。とっても気持ちよくて、が溶けそうになりました。こんなものが世界にあるなんてびっくりです」

溫泉を堪能したリリはお世辭でもなんでもなく思ったままを伝える。

「でしょ? ってみたら病みつきになっちゃうんだよね」

溫泉を褒められたユオはとても嬉しそうな顔をしている。

その笑顔には一切の屈託がなく、心底、明るい格であるように思えた。

『ユオ様は本當に太のようだ』

にこにこしているユオを見て、リリは心からそう思う。

ユオは誰もが恐れる辺境であっても、たくましく生きている。

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それを見ていると、リリは自分の弱さを痛してしまうのだった。

「うーん、リリ、なにか考え事してるでしょ? 話してみなよ」

「……」

リリの表が一瞬だけ曇ったのを発見したユオはにまぁっと笑って、リリの脇をくすぐる。

ユオはもともとお節介焼きだったのだが、領主になってさらに磨きがかかっていた。

「そ、そんな、何もありませんよ! って、どこって、あわっ、あひゃひゃひ」

ユオがリリの脇腹をくすぐったおかげで、リリは途中から聲にならない笑い聲をあげる。

「ほぉら、話してみなってば、悪いようにはしないから!」

「あはははは、あふっ、わ、わかりました! 話しますから!」

そして、ものの數秒で陥落したリリはこれまでの自分のいきさつを話すのだった。

辺境伯の娘であることを話すと政治問題になってしまうので、親は商人であると伝える。

「商人の親さんが勝手に結婚を決めたねぇ……。それでこの辺境まで逃げてきちゃったとはねぇ」

「はい……」

ユオは心細そうにうつむいているリリを見ていると、かつての自分自を思い出す。

そして、「大丈夫だよ」と言って、リリの細い肩を抱きしめてあげる。

「ひゃ……!? ユ、ユオ様!?」

突然の抱擁に當然、リリはびっくりする。

しかし、それ以上にあることに気づく。

ユオのはとても溫かいのだ。

まるで溫泉にっているみたいに、普通の人よりも溫が明らかに高い。

そのおかげか、彼の腕の中はとろけそうな覚をリリに與えるのだった。

「リリの気持ちはよく分かるよ」

ユオはリリを見つめて、自分の生い立ちについて話す。

自分が元貴族であることも含めて、正直に話すことにした。

「ほんとうに魔法が使えないんですか? だってあの、森でモンスターを一瞬でやっつけたというか」

リリは森でモンスターを一刀両斷したのを見ていた。

突然現れた兇悪なモンスターをユオが瞬時に迎撃したのだ。

それも、一度に4も。

リリは當然、ユオの話がとても信じられない様子だ。

あれを魔法と言わずして、なんと表現すればいいのだろう。

「ふふ、あれは魔法じゃないんだよなぁ。まぁ、別に魔法だろうが、魔法じゃなかろうが、今となってはどうでもいいんだけどね。ここには魔力で人の価値を測る人間はいないから」

ユオはそう言って笑う。

しかし、ユオの出自であるリース王國は魔法至上主義を採用している。

もし、魔力ゼロの場合には、貴族の家に生まれたとしても確実に侮られてしまう。

リリはユオに聞かされた話が自分よりもよっぽど過酷だったことに驚いてしまう。

そして、親から勘當されても不貞腐れず村の狀況を大幅に改善していることに強い尊敬のを覚えるのだった。

「あのぉ、ユオ様は……どうしてそんなに強くいられるんですか? 私は逃げてばっかりで、何もできなくて……」

リリはユオの笑顔にほだされて、直球で相談してみることにした。

貴族の娘という共通項はあっても、その生き方は全然違う。

「うーん、別に逃げてもいいじゃん? 自分が咲けない場所で頑張る必要なんかないと思うし」

「逃げてもいい……?」

「そう、逃げることは弱いことじゃないよ。自分の咲ける場所を探してるだけなんだから」

リリは逃げてもいいという言葉を聞いて、涙が溢れそうになる。

これまで自分自を攻め続けてきた言葉がしずつ癒やされていくのをじる。

「それに悲劇のヒロインを気取ってても、お腹は膨らまないし、誰も笑顔にならないじゃん?」

「笑顔……ですか」

「そう。くさい言い方だけどね。今はララやメテオやハンナを始め、みんな、私を助けてくれるし、私もみんなのために頑張ろうって思えるんだよね」

ユオは腕組みをして、自分がこの辺境でなにゆえここまで働いているのかについて考える。

「だから、この村にきてくれた人は私が絶対に守りたいんだよね。もちろん、リリ、あなたもよ」

満面の笑みでにこっと笑うユオを前にして、リリは心があらわれるような気持ちになる。

心の側にあった不安な気持ちが霧散した瞬間だった。

『この方はきっとスキルの力がなくても強いんだろうな』

リリはユオの強さはスキルとは別のところにあると理解する。

自分の周りを信じる心、明日をもっとよくしたいと願う心。

その圧倒的な意志の力こそが、彼を支えているのだろう。

そして、あのメイドや商人たちは彼のそんな部分に惹かれているのだろう。

何より、自分のような無し草さえも「守る」と言ってくれたことに、リリの心は強く揺さぶられるのだった。

しかし、リリの心はまだ揺らいでいた。

この村で頑張りたいと考えてはいるものの、これといって彼には特技はなかった。

「ユオ様、私は何の能力もなくて……」

リリはそう言ってうつむいてしまう。

「リリはヒーラーっていうすごい能力があるじゃん!」

「ヒーラーですか? わ、私、初級の回復魔法しか使えませんけど……」

「それってね、すごい能力だよ。よっし、リリにはうちの村で治療所をお願いしたいんだけど、どうかな?」

「治療所ですか!!? 私が!!? で、でも、溫泉もありますよ?」

「ううん。溫泉と言えども萬全じゃないと思うんだよね」

「やれるだけ、やってみない? もちろん、お手伝いもつけるし、お給料はしっかり出すよ!」

ユオが提案したのはこの村のヒーラーになって治療所をやってもらうことだった。

大きめの街にはかならず教會や病院があり、そこではヒーラーや薬師が回復魔法や薬剤を通じて人々の健康を守っている。

彼ら・彼らの存在があるからこそ、住民の健康は守られると言ってよい。

一方、この村では病気になっても薬草を煎じて飲むぐらいの対処法しかないのだ。

現狀では溫泉があるため、村人たちはピンピンしている。

とはいえ、溫泉だけに頼るのは危険だとユオは考えている。

怪我をしたり、熱があったりした場合には、溫泉にることはできないからだ。

この村にはモンスターと戦っている人が大勢いる以上、バックアップするヒーラーはとても貴重な存在なのである。

「もちろんです! 私にできることなら、喜んで!」

リリは大喜びでユオの手を握る。

の目はキラキラとまぶしくっていた。

ユオはリリに元気だが出たことを、心からうれしく思うのだった。

「私、ユオ様に一生、ついていきます! ユオ様に一生を捧げます!」

「はいぃいいい!? そこまで言ってなくない?」

そして、今度はリリがユオに抱きつくのだった

の瞳からは熱いしずくがこぼれた。

しかし、それはもはや諦めや悲しみの生み出すものではなかった。

リリはユオの描く夢に自分も參加したいと心から思うのだった。

【魔様の人材】

・リリ・サジタリアス:ザスーラ連合國の北部を占める貴族であるサジタリアス辺境伯の長。ピンクの髪にしいだが、気が弱い。力も弱い。回復魔法が多使えるが、まだスキルは開眼しておらず、これからの長を期待したい。

「面白かった!」

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「リリ、頑張れよ……」

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