《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》薬屋開業

今は使われていない空き家を改修して、メディの店が完した。調合室や薬を保管する倉庫など、すべてメディの思い通りだ。

これに自宅が併設して、メディはすでに至る所に頬ずりしている。工事費用は村長が負擔しており、至れり盡くせりの狀態にメディは遠慮しないこともない。

ないのだが、工事擔當者の村人はすでに引いている。

「はぁぁ……これが私の店……。ここでたくさんの人に薬を……うふふ……」

「だ、大丈夫か?」

「心共に健康ですよ?」

「そうか……。一通り、工事は終わったから何かあったら呼んでくれ」

そそくさと村人達が出ていく。カウンターにへばりついて頬ずりするはしばらく自分の世界にいた。

「それにしてもあの村長さん、すごいお金持ちですね……。こんな小さな村なのに、なかなか立派なお店ができました」

心してばかりもいられない。メディは村の様子を考えていた。

寒冷地では農作があまり育たず、農業従事者はあまり多くない。生計はもっぱら狩猟と酪農だ。あまり裕福とは言えない村の狀況を考えると、薬の代金も高く請求できない。その上で次の課題は素材の仕れだ。

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とはいえ、治療院の時も質素な食事をしていたほどである。メディにとって薬の調合以外の楽しみなどなく、食べて飲んで眠れる場所さえあればいい。収などメディにとっては二の次だった。

* * *

「ここが薬屋でいいのか?」

「はい、そうです! いらっしゃいませ!」

カウンターから離れて、メディは客を迎えた。ふらついてカウンターまでやってくるは腰に鞘を攜えている。

そのを見た途端、メディは息を飲んだ。

しい腳線や整ったボディラインなど、外見だけの話ではない。彼は健康どころか、が完されすぎているのだ。

どう鍛え上げればこうなるのか。メディは考えたが、それは彼の生まれつきによるものだと捉えた。

「この村に薬屋ができたと、村人が話しているのを聞いてな」

「はい。お疲れのようですのでまずはフィジカルポーションを……」

「フィジカルポーションか。とりあえず、それを」

店のドアが暴に開かれる。ってきたのは三人の男達だ。

「貴様らは……」

「よう、アイリーンちゃん。ちょうどこの店にっていくのが見えたんでな」

「失せろ。この店に何かすれば無事では済まさんぞ」

騒なこと言うなよ。こちとらポーションは間に合ってんだ。アイリーンちゃんと話がしたくてな」

アイリーンが三人の男達を睨む。ただならぬ雰囲気だが來店した以上、メディにとっては客だ。

「いらっしゃいませ! お薬、出します!」

「あ?」

「あ! あなた……寢不足に暴飲暴食、管や臓が悲鳴を上げてます。心臓もこれだいぶ危ないです。お薬でもこれは長期戦になりますねぇ……」

「なんだ、このガキはよぅ!?」

の男が顔を歪ませて怒りをわにする。アイリーンがメディを庇う。男達の興味が再びアイリーンに移った。

「アイリーンちゃんよ。今日の狩りは不調だったみたいじゃねぇか。その傷、どうしちまったんだ? あ?」

「余計なお世話だ。人の心配より、とっとと仕事を探しに行け」

「だからオレ達がこの村で狩人をやってやろうってんだろ」

「勝手にやればいい。私には関係ない」

「三人より四人、だろ? パーティあっての冒険者だ。仲良くしようぜ」

冒険者というフレーズでメディは閃いた。素材採取を依頼するという願ってもない展開だからだ。

しかしアイリーンが頑なにメディの前からかない。

「足手まといと組む気はない」

「そうは言うけどよぉ。すでに息が上がってるぜ? お前こそ実力不足なんじゃねえの?」

「いえ、そんなことないですよ」

アイリーンの後ろでメディが男達に反論した。またか、という男達の怒りが表に表れている。

「アイリーンさんのほうが適任だと思います。あなた達はやめたほうがいいです。そんな健康狀態で山にって倒れたらどうするんですか?」

「おい、さっきからお前は何なんだよ」

「薬師として見過ごせません」

「薬師ねぇ……」

男の一人が肩をすくめて仲間に目配せで訴える。時代遅れだと言いたいのだ。

「お嬢ちゃん。薬なら間に合ってるんだよ。ポーションならたっぷりとあるからな」

「そ、それがポーション……?」

男が見せつけたポーションに、メディは思わず眉を顰める。合いや明度など、視覚報だけでも悪品だとわかった。

ポーション ランク:G

「それじゃダメです。合いが悪いのは質が悪いレスの葉を使ったせいでもありますし」

「ごちゃごちゃうるせぇな!」

暴はよせ」

アイリーンが男達を牽制する。まさに毆りかかろうとした男だが、振り上げた拳を下ろした。

「この村で暴れたら居場所がなくなるのは貴様らだ」

「チッ! アイリーンちゃんよ! 自分の立場をよーく考えるんだな!」

男達が店から出ていく。ただならぬ雰囲気だが、メディはひとまずアイリーンの様子を見た。

強がってはいるものの、力を消耗させている。り傷も目立った。

「アイリーンさん、ありがとうございます。あの人達は一?」

「奴らは最近、この村にきた冒険者だ。奴らのように等級が低い冒険者の中には落ちぶれる連中もいる。この村ならば、自分達でも幅を利かせられると思ったのだろう」

「アイリーンさんはパーティにわれてましたね。嫌ですか?」

「下衆な下心が見えてはな」

メディにその言葉の意味はわからなかった。ひとまず休めるように、メディは椅子を差し出す。

「すまない」

「まずは休んでください。こちら、フィジカルポーションです」

「ありがとう……。こ、これは」

アイリーンがポーションを一口だけ飲んで固まった。また一口と、ついに我慢できずに一気に飲む。

「ぷはっ……。これがポーションなのか? 越しもよく、の中にするっと流れ込む! どういうことだ!?」

「ポーションは飲みやすさも大切です。良薬、口に苦しとはいいますが患者さんを不快にさせるようでは三流……とお父さんも言ってました」

「飲みやすいどころかおいしい! 今まで飲んでいたポーションは何だったのだ!」

「さっきの人達が持っていたポーションみたいに、無理がある大量生産のせいで質が悪いものも多く出回ってますねぇ……」

治癒師の臺頭や大量生産の手段が生まれたことによって、昔ながらの薬師は姿を消しつつある。そんな時代において、メディのような薬師は珍しい。

「おーい、メディちゃん。言い忘れとったが……おや、アイリーンちゃん」

「村長、いい薬師が來たな」

村長がってきた時にはアイリーンの目はうっとりとしていて恍惚とした表だ。そんな彼に生唾を飲む村長だった。

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