《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》剣士アイリーン、立つ
「メディちゃん。言い忘れておったが、家の裏手に畑だった場所があってな。うまく耕せば使えるかもしれんぞ」
メディの家の裏手は荒れ放題だった。元は何かを育てていた畑とわかる場所には雑草が生い茂っている。
村長のアドバイスに従って、メディは畑を耕すことにした。とはいってもこの土地で育つ作はかなり限られている。
「私には剣しかないのだ」
裏手に連れ出したがアイリーンは尚も突っぱねて、メディが一人で作業にる。
しかし時によろめき、時に転びそうになるメディを見かねたアイリーンはつい手伝ってしまった。
「助かります!」
「仕方ない……」
これでアイリーンは剣以外の労働に取り組んだわけだが、何か違和を覚えた。かすかにが思うようにく。
アイリーンとメディの二人がかりで數日かけて、雑草は除去された。荒れている地面を耕す作業にまた數日、今度は鍬だ。
「おかしい……」
アイリーンの持ち前の力で荒れていた畑がみるみる生まれ変わる。作業の合間にメディはハーブティーをご馳走した。
Advertisement
アイリーンが一口、飲むたびにがほぐされた心地になる。軽くなったようにじたがより作業効率を上げた。
「はぁ、はぁ……に、労働は苦手です……」
「メディは休んでいてくれ」
「遠慮なく……」
本當に遠慮せず、メディが畑の外に寢っ転がった。アイリーンの視線はしばしの間、メディに注がれる。
自の異変の原因は間違いなく彼にあると、アイリーンは考えていた。アイリーンは作業を中斷して、メディの隣に座る。
「メディ、私に何をした」
「ふぇ?」
「ここ數日間、異様にが軽いのだ。以前の私なら、こんな労働ですら手に負えなかった」
「アイリーンさん、すごく元気になりましたねぇ。いいお顔です」
「なに?」
「アイリーンさんはですね。たぶん真面目すぎるんです」
仰向けになったまま、メディが額の汗を拭う。
「私が真面目だと?」
「自分を追い込んで、徹底して磨き上げようとする。その素敵なを見ればわかります。でも、それが枷にもなってたと思うんです」
「枷……?」
「自分には剣しかないとずっと思い込んで、それがプレッシャーになってきを鈍らせたんです。神的に重荷になって、気を張りすぎてたんだと思うんですよ」
アイリーンは何も言えなかった。否定できる材料がない。の軽さ、常に落ち著いている心。
空気を吸えば、おいしくじられる。以前なら気にしなかったことだ。
「あのハーブティーはですね。リラックス効果があるんです。仕事なんかで昂った心を鎮めてくれます」
「一、何がってるのだ? 私も冒険者稼業はそれなりに長いが、そんなもの聞いたことがない」
「ブルーハーブを中心にビスの、アフラの実、オルゴム草……。これだけあれば、調合次第でリラックス効果を最大まで高められるんです」
ブルーハーブはアイリーンでも知っているありふれたハーブだ。本來は魔力の回復や安定化が期待できる素材である。
そんなアイリーンの疑問を待っていたかのように、メディが起き上がった。
「治癒魔法は魔力を使って回復しますよね。魔法が使えない私はブルーハーブを介にして魔力に手を加えます。魔力って面白いですよねぇ……。魔法が使えたらなって、ブルーハーブを見るたびに思います」
「そうか。を巡る魔力が作用しているのか」
「ブルーハーブはまだまだ研究の余地があるんですよ。マナポーションだけに使うのはもったいないです」
「……熱心だな」
アイリーンは自と比べてしまった。あらゆる素質に恵まれなかった彼が最後に辿り著いたのが剣だ。
果たして自分はそこまで剣に対して向き合っているか。ただの手段としていないか。
メディのようにどこまでも追求して、生き甲斐とできるような熱があったか。そう問われたとしても、アイリーンは頷けなかった。
「メディ、薬師は楽しいか?」
「すっっっっっごく楽しいですよっ!」
「そ、そうか」
「楽しくなければ薬師じゃない!」
「そこまで言い切るか……」
楽しくなければ剣じゃない。アイリーンはメディの言葉を剣に置き換えて考える。
楽しくなければ、やる価値などない。それなのに自分は剣しかないと、すがるように打ち込んでいただけだ。
等級が上がり、名聲を得るにつれてプレッシャーとなるのも仕方ない。失敗は許されず、常にいい結果を出し続けなければいけないのだから。
アイリーンは立ち上がり、鞘から剣を抜く。
「私は……剣に失禮だったな」
「アイリーンさん?」
アイリーンは剣を振る。空を切るが今までにない軽さだった。山にった時にじていた剣やの重さすらじない。
「剣の道を選んだのも私の意思……。どこか心の底で言い訳していたのかもしれない。私は初めから自由だったな」
「剣のことはわかりませんが、アイリーンさん。すごく綺麗ですね」
「わ、私が綺麗だと?」
「おのことじゃありませんよ。いえ、おも綺麗ですけどアイリーンさんそのものが輝いてます」
「お前にそう言ってもらえると、なんだか不思議とその気になるな」
出會って數日だが、アイリーンはメディに不思議な心地を抱いていた。
恥ずかしい言葉を躊躇なく口にする。それでいて聞いているほうは真にけてしまうのだ。
メディの飾らない本心だからこそ、素直にけれてしまう。アイリーンは凝り固まった心がよりほぐされていくようにじた。
「メディ。明日からは私は狩りに出る。素材の採取依頼をけつけよう」
「本當ですか! よかったです!」
「村の安全にも関わるからな。素材手の助けになろう」
「手持ちの素材も心もとないですからねぇ……」
手持ちの薬もいつかは盡きる。畑、そしてアイリーンのような調達してくれる人材が揃えば薬屋は本格的に発進できるのだ。
アイリーンは剣を振るう理由を本格的に見つけられた。村の安全という義務だけではない。
自分で選んだ剣の道をもって、メディを支えてやりたいと思ったのだ。メディのような人間を生かしてこその剣。
メディが言うプレッシャーに潰されそうになり、人があまりいない辺境の町まで逃げた選択が今になって正しいと証明できる。
「そうと決まったからには初仕事をしないとな。メディ、さっそく採取に向かおう」
「助かります!」
「ここ薬屋なんだってな。さっそく頼みたいんだが……」
店のほうから村人の聲が聴こえた。メディ達が向かうと、り口に列ができて薬屋の需要を語っている。
それぞれが抱えた持病であったり怪我であったり様々だ。
「これは急がないとな。ではメディ、行ってくる」
「はいっ!」
メディは一人目の客を迎えながら、アイリーンを見送った。
この日、薬屋は大繁盛する。治らないと言われていた難病を治療したり、狩人時代に負った怪我を完治させる。
怪我が治れば狩人として復帰できるため、メディの薬屋は村の繁栄に大きく貢獻することになった。
ブックマーク登録や応援ありがとうございます!
まだしていないという方はほんのごくわずかでも
「いいんじゃない?」「ええんじゃない?」と思っていただけたなら
ブックマーク登録や広告下にある☆☆☆☆☆の応援のクリックかタップをお願いします!
めっちゃモチベーションになるのでぜひ!
最弱な僕は<壁抜けバグ>で成り上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】
◆マガポケにて、コミカライズが始まりました! ◆Kラノベブックスにて書籍版発売中! 妹のため、冒険者としてお金を稼がなくてはいけない少年――アンリ。 しかし、〈回避〉というハズレスキルしか持っていないのと貧弱すぎるステータスのせいで、冒険者たちに無能と罵られていた。 それでもパーティーに入れてもらうが、ついにはクビを宣告されてしまう。 そんなアンリは絶望の中、ソロでダンジョンに潛る。 そして偶然にも気がついてしまう。 特定の條件下で〈回避〉を使うと、壁をすり抜けることに。 ダンジョンの壁をすり抜ければ、ボスモンスターを倒さずとも報酬を手に入れられる。 しかも、一度しか手に入らないはずの初回クリア報酬を無限に回収できる――! 壁抜けを利用して、アンリは急速に成長することに! 一方、アンリを無能と虐めてきた連中は巡り巡って最悪の事態に陥る。 ◆日間総合ランキング1位 ◆週間総合ランキング1位 ◆書籍化&コミカライズ化決定しました! ありがとうございます!
8 188【書籍化】男性不信の元令嬢は、好色殿下を助けることにした。(本編完結・番外編更新中)
「クレア・ラディシュ! 貴様のような魔法一つ満足に使えないような無能は、王子たる私の婚約者として相応しくない!」 王立學園の謝恩パーティで、突然始まった、オリバー王子による斷罪劇。 クレアは、扇をパタンと閉じると、オリバーに向かって三本の指を突き出した。 「オリバー様。これが何だかお分かりになりますか?」 「突然なんだ! 指が三本、だろう? それがどうした」 「これは、今までラディツ辺境伯家から王家に対して婚約解消を申し入れた回數ですわ」 「なっ!」 最後に真実をぶちまけて退出しようとするクレア。 しかし、亂暴に腕を摑まれ、魔力が暴走。 気を失ったクレアが目を覚ますと、そこは牢獄であった。 しかも、自分が忌み嫌われる魔女であることが発覚し……。 ――これは、理不盡な婚約破棄→投獄という、どん底スタートした令嬢が、紆余曲折ありつつも、結果的にざまぁしたり、幸せになる話である。 ※本編完結済み、番外編を更新中。 ※書籍化企畫進行中。漫畫化します。
8 136暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが
気配を消すことが得意な高校生織田晶〈おだあきら〉はクラスメイトと共に異世界へ召喚されてしまう。 そこは剣と魔法の世界で、晶達は勇者として魔王討伐を依頼される。 依頼をしてきた國王と王女に違和感を感じた晶は、1人得意な気配消しで國王の書斎に忍び込み、過酷な真実を知る。 そうとは知らないクラスメイト達を、見捨てるか、助けるか、全ては晶の手にかかっていた。 そして、自分のステータスと勇者のステータスを見比べてみて、明らかな違和感に気づく。 作者の都合でできない日もあるかもしれませんが、1月27日から1日1更新を目指して頑張ります。 オーバーラップ文庫様により書籍化しました。(2017年11月25日発売)
8 91クリフエッジシリーズ第一部:「士官候補生コリングウッド」
第1回HJネット小説大賞1次通過‼️ 第2回モーニングスター大賞 1次社長賞受賞作! 人類が宇宙に進出して約五千年。 三度の大動亂を経て、人類世界は統一政體を失い、銀河に點在するだけの存在となった。 地球より數千光年離れたペルセウス腕を舞臺に、後に”クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれるクリフォード・カスバート・コリングウッドの士官候補生時代の物語。 アルビオン王國軍士官候補生クリフォード・カスバート・コリングウッドは哨戒任務を主とするスループ艦、ブルーベル34號に配屬された。 士官學校時代とは異なる生活に悩みながらも、士官となるべく努力する。 そんな中、ブルーベルにトリビューン星系で行方不明になった商船の捜索任務が與えられた。 當初、ただの遭難だと思われていたが、トリビューン星系には宿敵ゾンファ共和國の影があった。 敵の強力な通商破壊艦に対し、戦闘艦としては最小であるスループ艦が挑む。 そして、陸兵でもないブルーベルの乗組員が敵基地への潛入作戦を強行する。 若きクリフォードは初めての実戦を経験し、成長していく……。 ―――― 登場人物 ・クリフォード・カスバート・コリングウッド:士官候補生、19歳 ・エルマー・マイヤーズ:スループ艦ブルーベル34艦長、少佐、28歳 ・アナベラ・グレシャム:同副長、大尉、26歳 ・ブランドン・デンゼル:同航法長、大尉、27歳 ・オルガ・ロートン:同戦術士、大尉、28歳 ・フィラーナ・クイン:同情報士、中尉、24歳 ・デリック・トンプソン:同機関長、機関大尉、39歳 ・バーナード・ホプキンス:同軍醫、軍醫大尉、35歳 ・ナディア・ニコール:同士官 中尉、23歳 ・サミュエル・ラングフォード:同先任士官候補生、20歳 ・トバイアス・ダットン:同掌帆長、上級兵曹長、42歳 ・グロリア・グレン:同掌砲長、兵曹長、37歳 ・トーマス・ダンパー:同先任機関士、兵曹長、35歳 ・アメリア・アンヴィル:同操舵長、兵曹長、35歳 ・テッド・パーマー:同掌砲手 二等兵曹、31歳 ・ヘーゼル・ジェンキンズ:同掌砲手 三等兵曹、26歳 ・ワン・リー:ゾンファ共和國軍 武裝商船P-331船長 ・グァン・フェン:同一等航法士 ・チャン・ウェンテェン:同甲板長 ・カオ・ルーリン:ゾンファ共和國軍準將、私掠船用拠點クーロンベースの司令
8 113天才と煩悩
小さい頃から天才と稱されていた泉信也 怪我によって普通へと変わってしまう そんな泉信也にある出來事をきっかけに 自分への考えなどを変える 新たなスタートを切る泉信也 そんな中、煩悩であった木下と出會う 天才と煩悩の二人が協力し兇悪なテロリストに向かう 天才と煩悩が作り出すストーリー 初めての小説です 掲載は毎週月曜日更新です よろしくお願いします
8 132現代帰ったらヒーロー社會になってた
主人公 須崎真斗(すざきまさと)が異世界に飛ばされ魔王を倒して現代に戻ってくるとそこはヒーロー社會と化した地球だった! 戸惑いながらもヒーローやって色々する物語バトル有りチート有り多分ハーレム有りハチャメチャ生活!
8 52