《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》皆殺しの魔導士と呼ばれた
あらすじに、破壊神と呼ばれたみたいな事を書いてたと思うのですが「皆殺し」に変更しました。
「お前、なんてことしてくれたんだ!」
パーティメンバーが口々に一人のを非難している。仲間の一人が腕を押さえてを流していた。
討伐戦の際に魔導士であるは起して、魔を一網打盡にしようと狙い撃つ。しかしその際に威力が大きすぎた。
仲間の一人を巻き込んでしまい、は何もできずに愕然としている。
「お前の魔法は威力が高すぎるんだよ! 撃つタイミングを考えろって言っただろ!」
「ご、ごめんなさい……」
「もういい! どうせ回復魔法も使えないんだ! お前とは今日限りだ!」
「そ、そんな! 待って! チャンスを……」
が近寄ろうとした時、リーダーに突き飛ばされる。強い拒絶をけたはへたり込んだ。
仲間の治癒師が怪我をしたメンバーを回復する景を見守ることしかできない。
その際に治癒師は仲間達から稱賛された。助かった者も禮を言っている。
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「あの、私……」
「エルフってのは面倒だよな。魔力が高すぎてオレ達、人間とは相容れない」
違う。そうじゃない。悪いのはエルフじゃなくて自分だ。そう聲に出したかったがのから何も出ない。
そんなを軽蔑するかのように、リーダーは一瞥してから背中を見せて去っていく。
「待って!」
「今までも危なっかしい場面は多々あった。それでもオレ達は許容していた。でも、今回のは決定的だ」
「今度こそうまくやるから!」
「お前をれるくらいなら、きちんとした魔導士をうよ。もちろんエルフじゃなくて人間のな」
差別的なリーダーの発言にはまた失する。
パーティに加した際には笑顔で歓迎してくれて優しかったリーダーの豹変ぶりに、ついに涙を流す。
その際にを揶揄する『皆殺しの魔導士』という言葉が耳に屆いてしまった。仲間の誰かが言ったのだ。
自分との対比であるかのように、治癒師が持て囃されているのが嫌でも目に焼き付く。
は回復魔法が使えない。使えるのは攻撃魔法のみだ。しかし今、歓迎されているのは敵を攻撃するよりも味方を癒やす治癒師。
去り行く仲間の後ろ姿を見て、は膝をついたまま考えた。
「どこか……遠くへ行こう」
そこで靜かに暮らそう。自分の魔法は誰にも必要とされていない。人を傷つけて軽蔑されるだけだ。
項垂れたまま立ち上がり、も歩む。その足取りは魔導列車が発著する駅へと向いている。
到著した魔導列車に乗り込む際、の中に一つの願いが思い浮かんだ。
「私にも……人を癒やすことができたらよかったのに」
を乗せた魔導列車がき出す。向かう先は寒冷地として知られる地方だった。
* * *
「いらっしゃいませ! お薬、出し……」
「ここが薬屋って本當!?」
カウンター越しに迫られたメディが引く。來店したは鬼気迫る表だった。
白の、銀の髪を一つ結びにしているの最大の特徴は尖った耳だ。メディも初めて見る。
がエルフだと理解しても、まさかこんな辺境の地にやってくるとは思わなかった。
「い、いらっしゃいませ。お薬――」
「やり直さなくていいから! それより薬がほしいの!」
「お客様の薬ですか? 至って健康ですし」
「私じゃなくて相手! 相手が怪我した時のための薬!」
話が見えず、メディは困した。店を続けていると珍妙な客が來るが、メディの接客歴は淺い。
アイリーンからは知名度が上がるとクレーマーも増えると聞いている。そんな時はすぐに呼べというが、騒な方法で解決するには早計だ。
メディは今一度、エルフのを見つめる。エルフといえど、基本的に人間との構造はほぼ変わらない。
ただし保有する魔力が桁違いだ。魔力に恵まれないメディでも、目の前にいるエルフのの異質さが理解できた。
「怪我した相手とは?」
「私が魔法を使うでしょ。誰かが怪我するでしょ。だったら薬があれば治るよね?」
「な、治りますけどぉ。治したい相手はどちらに?」
「今はいないよ」
「はい?」
要領を得ない會話が続く。さすがのメディもすっかり困り顔だ。
「私が魔法を使うと誰かが巻き込まれる。でも薬があれば治せるよね」
「巻き込まなければいいのでは……」
「巻き込んじゃうの! 私の魔法、威力が高すぎるから……」
「ははぁ、なるほどなるほど」
「というわけで、お薬をお願い」
どこかずれたの提案をメディはけれることができなかった。もちろんここは薬屋なので、薬を要求されたら売るしかない。
しかし買い手は健康そのものな上に怪我人はどこにもいない。怪我人が出る前提の言い回しが気にらなかった。
とはいえ、メディにとっては來店した時點で客には違いない。慎重に話すことにした。
「威力は抑えられないんですか?」
「ダメダメ……。何度やってもダメ。ついたあだ名が『皆殺しの魔導士』……」
「皆殺しですかぁ……」
話している間にも、メディはを観察した。に異常はない。し栄養の偏りが見られるものの、許容範囲だ。
魔力を完全にじることができないメディでも、には違和がある。魔道士であれば故意でもない限り、中に靄がかかって見えるのだ。
この靄が魔力であるが、メディにはその程度でしかじ取れない。は魔法が使えるにもかかわらず、靄が一切なかった。
そしてメディは思う。味方を巻き込むほどの魔法ならば薬どころではないはず、と。
「それにね……。なんだかこうしてると抑えられないんだ。こう……が……」
「?」
「魔法を放ちたくてたまらなくなる……あぁ、私の腕が震えるっ! 靜まれ! 私の腕!」
「し、靜まってください!」
メディも一緒になっての腕を押さえる。特に効果はないのだが、は呼吸を整えて落ち著いた様子を見せた。
「はぁ……はぁ……。ね?」
「ね、と言われましても……」
「だから薬が必要なの。ポーションをいくつかちょうだい」
「汎用ポーションならあります。これなら誰が飲んでも一定の効果が見込めます」
「じゃあ、それをお願い」
客がしいといえば売る。ただしメディはやはり納得していない。本的な解決になってないからだ。
そしての今の挙で、おおよその原因に見當がついていた。魔力や魔法の知識がなくとも、人には通している。
それを確かめるためにポーションを渡した後、一つ思いついた。
「あの、一つだけお願いできますか?」
「え、客の私に?」
「は、はい。あなたがそうなっている原因を特定するためにやってほしいことがあるのです」
「ま、まさかわかっちゃったの?」
「まだ斷定はできません」
メディは一つのポーションを差し出した。
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