《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》皆殺しの真相

エルフのはエルメダと名乗った。エルフは魔力に長ける種族のため、活躍の幅は広い。

宮廷魔導士団、治療院、魔法學者。多岐に渡る分野で出世の機會があるが、中にはエルメダのような問題を抱える者もいた。

「これは?」

「ご存知ないです?」

「ないですな!」

の前に出されたのは、桃のポーションだった。この反応を見て、メディは自論の正しさを認識した。

魔導士であれば知らないはずがない。お世話にならないはずがないそのポーションは――

「マナポーションです。魔力を回復するんですよ」

「マナポーション……。そういえば飲んだことないなぁ」

「おそらくエルメダさんには必要がないからです」

メディの狙い通り、エルメダはマナポーションを手に取ろうとしない。

見た目はフルーツドリンクに近くて親しみやすいだというのに、エルメダはどこか恐れているようでもあった。

當然、メディは催促しない。エルメダが手を出しては引っ込めて、かなり躊躇している。

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「こ、これを飲まなきゃダメ?」

「どうしても飲めませんか?」

「う、うん。ごめんね……」

「やっぱりエルメダさんは優秀な魔道士ですねぇ」

「どうして急に褒めるの」

メディが頷いて心する。エルメダは怪訝な顔をするが、メディとしては本心なのだ。

「エルメダさんはマナポーションを本能で避けてますね。それはきっと膨大な魔力のせいです」

「……自分の魔力くらいはわかるよ。でもそれと何の関係が?」

「多すぎる魔力がエルメダさんに詰まっているんです。もうパンパンです」

「ぱんぱん?」

「それをギュっと押し込んでいるんです。さっき腕を押さえていたのも、本能が溜まり過ぎた魔力を放ちたくなったからと思います」

メディが両手でギュっと押し込む仕草をした。エルメダの頭の上には相変わらず『?』が浮かんでいる。

「私、魔力は完全に知できないんですけど、靄みたいな形で見ることはできます。魔導士の人達には大、靄がかかってますね。ですがエルメダさんにはそれがありません」

「それって他の魔導士は魔力が常にれてるってこと? そういえば、他の魔道士は確かにそんなじだったかな……」

「そうです。それが自然なんです」

「じゃあ、私の中にパンパンになった魔力が常に詰まっていて……いつかバァァァァァンって破裂しちゃうってこと!?」

「そうならないようになんとかしましょう」

エルメダが二の腕をさすっている。自が破裂するところを想像してしまったのだ。

無駄に富な想像力が彼をより恐怖の底に落とす。

「あ、あの。ちょっと魔法を使ってくる」

「ダメです!」

「だ、だよね……」

メディはこの出會いに謝した。もしエルメダがこのままこの村に立ち寄らず、問題解決に至らなければ大慘事になっていた可能があるからだ。

「魔法を使った時に高威力になりすぎてしまうのは、エルメダさんのの特からです。強力な魔法耐が外側と側にあるんです」

「……魔法を放つ時、いつも時間差がある。それと関係が?」

「膨大な魔力がから放たれる時に、強力な魔法耐をかすかに破っているんです。水がたくさんったカップにがあいたら、勢いよく流れ出るのと同じです」

「で、でも魔法耐を破ったらそのままれ続けるんじゃ?」

「そこがエルメダさんのすごいところです。破ってもすぐに修復されちゃうんですよ。特異質といってもいいです」

エルメダは理屈の前に、メディという心した。彼がこんな辺境に來たのは、誰にも迷をかけたくないからだ。

以前、所屬していたパーティからも危険すぎるとされて追放された。いつ発するかもわからない弾を抱えたがるパーティなどいない。

エルメダもそれがわかっていたから、せめて誰かが怪我をしてもポーションで治せばいいなどと末期的な発想に至った。要するにヤケクソだったのだ。

「……そんなのまでわかっちゃうんだ。あなた本當に薬師?」

「薬師なら人のあらゆる問題に通してないと務まりません。魔法が使えないからわかりませんなんて言い訳できません」

「そ、それにしてもどこでそんな知識を……」

「さて、いよいよ始めちゃいますか?」

「は、始めるって? もしかしてどうにかなったりする?」

「なったりします!」

エルメダはほろりと一筋の涙を流した。まだ治る拠がない。それなのに不思議と希を抱いてしまうのだ。

メディの心遣いもそうだが、何より一切の迷いがじられない。突然、押しかけた自分のために薬師がそこまでしてくれるという事実も嬉しい。

「あなた、メディちゃんだっけ……。なんだかごめんね……」

「な、なんで泣くんですかぁ!」

「この質のせいでひどい目にあったから……」

「ではさっそく始めるのでアイリーンさんを呼びます!」

「アイリーン?」

なぜ第三者を呼ぶのか。エルメダは唐突に嫌な予がした。アイリーンとは面識はないが、偶然にも『極剣』と同じ名前だ。

さすがに同一人ではないだろうとエルメダは楽観視するが、答え合わせは數分後だった。

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