《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》覚醒への儀式(マッサージです)

「メディ、採取依頼ではないようだが?」

招かれた容姿端麗なにエルメダは見惚れてしまう。スタイル抜群、まるで品のようなの完度はエルメダにとっても憧れだった。

こんな田舎の村に似つかわしくない。失禮な想を抱いたエルメダは何故か深々と頭を下げた。

「ど、どうしたのだ?」

「エルメダさん。こちらがアイリーンさんです。あの、頭を上げてくださいね」

「ごめん。あまりに神々しかったから……」

型のせいで甘く見られてきたエルメダにとって、アイリーンのは理想型だった。

元々エルフは小柄な種族なので仕方ない一面ではある。

「あの、まさかとは思いますが。極剣で知られるアイリーンとはもちろん別人ですよね? そうですよね」

「そう呼ばれることもあるな」

「そう呼ばれることもあるんですかー。呼ばれて……」

エルメダはのけぞって後頭部を壁に打ち付けた。心配したメディに支えられても尚、よろける。

「ほ、ほ、ほほほ、ほんもにょ!」

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「ほんもにょという事になるな」

「王國騎士団百人抜きを達したと言われている……!?」

「いや、もうし多かったはずだ」

「ア、アハハ……なぜそんな方が、目の前に……」

落ちこぼれていたエルメダにとって、アイリーンのような冒険者は雲の上の存在だ。

以前のパーティですら、口々にその名を語っていた。行く先々で極剣の名を聞かない事などない。

メディはエルメダの肩に手を置いて、アイリーンに微笑む。

「アイリーンさん。今日はこのエルメダさんのマッサージをお願いしたいんです」

「私にマッサージだと?」

「あ、不都合があるなら遠慮しますけど……」

「いや、大歓迎だ。昔、マッサージ師を目指していてな。得意なほうだぞ」

「それはいいですねぇ!」

アイリーンの指がわきわきとく。

メディが手放しで喜ぶも、アイリーンはケーキ職人やパン職人などを目指していたことを思い出す。

いったいいくつの夢を持ってきたのかと思わなくもない。年齢についての言及もしたかったが今日に至るまで、何故か果たせないでいる。

がそうさせないオーラのようなものを纏っているとメディはじ取っていた。

「さて、やりましょう!」

奧にあるメディの部屋に移して、エルメダをベッドに寢てもらう。

アイリーンにもエルメダの事を一通り、説明した。

「まずはエルメダさんの強力な魔法耐を緩めないといけません。ただしそれには強い力が必要なんです。まずはこれを塗りましょう」

「え、その塗り薬は?」

「魔法耐を下げる薬です。私は塗り薬として調合しましたがポーションとしても知られていて、昔の薬師はこれを魔にぶっかけていたそうですよ」

「へぇー、知らなかった」

メディがエルメダのに薬を塗り込む。

「ふぁっ……!」

「ぬりぬりー」

「ひゃんっ! あぅっ……」

「ぬりりー」

「んっ……」

くすぐったさとなんとも言えない心地にエルメダは恥ずかしくなってきた。

やがて全に塗り終わると、アイリーンの出番である。エルメダは張と興に支配されている。

人生において、誰もが憧れる極剣のアイリーンからマッサージをしてもらう機會がどれほどあるか。

辺境の村に立ち寄った時點で、こんなことになるとは思いもしなかった。馬鹿にされて蔑まれたエルメダは今、自分の人生を祝福している。

ここはもしかして楽園なのではないかと、アイリーンのマッサージを心待ちにしていた。

「で、ではお願いします!」

「うむ、腕が鳴るな」

アイリーンがエルメダのに手をれる。エルメダの人生の祝福の最後だった。

「いだだだだだだっ!」

指圧だけで皮を貫通して臓と骨に屆かんばかりだった。普通であればここで手心を加えるのだが、アイリーンはマッサージに対して獨自の理論を貫いている。

「痛いほうがの為になる」

「ならならない痛い痛い痛いぎゃあぁぁーーーーーーーっ!」

エルメダがメディに手をばして救いを求めている。しかしメディは見守っていた。

こうでもしないと治療の意味がないからだ。

「私の力じゃエルメダさんのに薬を浸させることができません。アイリーンさんみたいな力持ちじゃないとダメなんです」

「なにそれ聞いたことないたーーーーいぃぃっ!」

傍から見れば無殘な景であり、エルメダはからかわれているのではないかと激痛の中でぼんやりと考える。

手でバンバンと叩いてギブアップを求めるも、地獄は終わらない。

「あのあのあのもうどうでもいいんで終わり痛い痛い痛い!」

「どうでもよくないんです! 今までの事を思い浮かべてください!」

「今まで……いたたたたっ!」

「終わればエルメダさんはすごい魔導士になれるはずです!」

エルメダは自分を見捨てたパーティメンバーの蔑むような目を思い浮かべた。

もうあんな思いは嫌だ。その涙は激痛によるものだけではない。過去を振り返れば、そこには絶しかなかった。

歯を食いしばり、時が経ってアイリーンは手を止める。

「メディ、一通り終わったがこれでいいのか?」

「はい! バッチリですよ! エルメダさんも起きてみてください!」

「へ? もう死ぬから無理……」

この痛みで起き上がれるはずがないとエルメダは渋々かした。

するっといて芯が溫かい。以前、どこかじていた息苦しさのようなものが今になってようやく認識できる。

「なんか変……」

「服を著てください。さっそく訓練しましょう」

「訓練?」

「魔法ですよ! 今までより制できるはずです!」

半信半疑ではあるが、エルメダは自の中で何かが変わったと実している。

それがなんなのかはわからないが、今は何故か魔法に対して強烈な自信を持てるようになっていた。

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