《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》村の集會

夜、集會場に集まったのは村長を初めとしたリーダー格の者達だ。カイナ湯を建築した大工のオーラス、多數の牛を所有するポール、村一番の畑を持つブラン。

村の産業のリーダー達と共に警備隊の隊長を務めるドルガー、アイリーンとエルメダ、カノエとロウメルがテーブルを囲んでいた。

議題はメディのお悩みについてだ。一人のの為に集會を開く事に異議を唱える者はいない。その本人は申し訳なさそうにアイリーンの隣に座っている。

遅れてやってきたドルガーもすでに事は把握しており、拳を震わせていた。

「メディ、顔を上げよ。全員、お前を思って集まっているのだ」

「村長……皆さん……」

「簡単に解決とはいかんだろうが志は同じだ。皆の者、そうであろう?」

全員が同時に頷く。メディは目頭が熱くなって、また顔を伏せた。

「村長。メディを治療院に送り屆けるくらい訳ないぜ?」

「ドルガー、それは確かに簡単だろう。だがこれについてはカノエ、話してほしい」

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「えぇ、まず部外者であるメディが治療院にって患者に薬を與えるのは無理。これは常識で考えて當然よね。

それに今の治療院はイラーザを王とした國が築かれている。彼の息がかかった人達ならメディを治療院に立ちらせる事すらしないわ」

誰もが意見しなかった。無言で肯定しているのだ。

まずはカノエの言葉を最後まで聞けば、今後の指針になると考えている。

「で、これは私の予想なんだけど……。すでに治療院に捜査が及んでいた場合、王様はどういう手に出るか。

メディに濡れを著せるよ。下手をすれば連行されていただろうに、ロウメル元院長はいい仕事をしたわ。追放で済んだのだからね」

「……しかし、誇るつもりはない」

「いいのよ、ロウメルさん。結果的に王様はもう取り返しがつかない事になってるかもしれないわ」

「どういう事かね?」

王様はおそらく毒事件のキーパーソンであるあなたとメディを消そうとする」

予想しなかったカノエの言葉にメディは固まる。なぜ殺されなければいけないのか。

あんな仕打ちをけて追放されたというのに。メディは怒りとも悲しみともつかずに歯ぎしりをした。

「なんでですか……。あの人がそこまで……?」

「そ、そうだぞ! カノエさん! 大、そのイラーザってのはただの治癒師だろ?」

「ポールさん。自分で殺せなくても、誰かを雇う事はできるわ」

「……なるほど」

アイリーンが納得して口を開く。

「手っ取り早いのが冒険者だな。特に低級でくすぶっている者ならば、し金をちらつかせればく可能がある」

「アイリーンさん、私も低級なんだけどぉ?」

「すまない、エルメダ。配慮が足りなかった」

「まぁそれはそれとして、そんな馬鹿な事を引きける奴なんている?」

「いても不思議ではないな」

アイリーンは黒い噂が立っている名のある冒険者を思い浮かべた。

萬が一にでも彼らが雇われて、狡猾な手口で仕掛けてくれば一切の隙も見せられない。

だからこそ、村が一丸とならなければいけないのだ。

「でもよ、メディがここにいるなんてどうやって突き止めるんだ?」

「ドルガーさんは鼻が利くでしょう? 人間の中にもそういった手合いがいるのよ」

「どーいうこっちゃ?」

「ほんのわずかな手がかりさえあれば、人探しはそう難しくない。死んでなければね」

「じゃあ、怪しい奴が來たらぶっ飛ばしておけばいいんだな?」

「その怪しい奴をどう特定するか。そこが重要なの」

このカイナ村には冒険者ギルドや宿もなく、訪れる冒険者はない。アイリーンやエルメダ、アンデ達のような者は稀だ。

つまりここに流れ著く者は大、訳ありだが黒と斷定できる拠はない。

だからこそ、カノエはまず警備態勢を強化しようと提案した。ドルガー達だけではなく、狩人達も當番制で村の警備に當たってもらう。

特にアイリーンは冒険者に詳しく、カノエならば生半可な誤魔化しは通用しない。刺客かどうか、より見抜ける可能が高まる。

そう聞いた一同の大半は安心した。しかしアイリーンはまったく楽観視していない。

が想定する刺客ならば時に大膽に、時に狡猾に仕掛けてくるからだ。

「……皆、これから報の共有を行いたい。今から私が挙げる人は黒い噂が絶えない連中だ。極力、特徴を話すから頭に叩き込んでほしい」

アイリーンが話した者達は一同に嫌悪を與えた。そんな者達が狙っている可能があるというのだから、メディは恐怖でが締め付けられる。

しかし間もなく彼の手をアイリーンとエルメダが溫かく包んだ。その溫もりがメディから恐怖心を取り去る。

拠はないがこの二人ならどんな相手でも怖くないとじた。

「反吐が出る奴らばかりだな」

「ドルガー、特に『不死』のデッドガイと『炎狐』のサハリサは危険度で言えばトップクラスだ」

「デッドガイは度重なる殺人容疑……。フレイムサラマンダーに焼かれたと言われている村は実はサハリサの仕業……。なんでそんなのが冒険者をやってんだかな」

「奴らは冒険者という分を利用しているに過ぎない。あと一歩のところで証拠を摑ませず、國やギルド側もろくに調査をしないのだ。まったく呆れるよ」

ドルガーは大きく鼻息を吹いた。獣人の価値観では考えられない者達だった。

彼らはが単純で、狡猾な知恵を回す事はない。毆る、毆られる。勝つ、負ける。正義、悪。事を二極化して単純に捉える傾向にある。その基準でいえばメディは正義だ。

ドルガーが立ち上がって、メディの下へいく。

「心配するな。全部、オレ達の敵じゃねぇ」

「ドルガーさん……」

ドルガーの大きな手がメディの頭を包んだ。メディはふさふさとした大きな溫もりがたまらなく心地よかった。

敵じゃない。その言葉が慢心ではない事はここにいるごく一部の者達しか気づいていなかった。

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