《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》薬屋の一日 2

「いらっしゃいませ! お薬、出します!」

「お薬、出すのです!」

八時に開店すると、間もなく客がやってくる。最初の客は牛飼いのポールだった。

餌やりの時にうっかり腰を痛めたらしく、メディのポーションの世話になる。

大怪我でなくとも、畑仕事中にすりむいてしまったブランも常連だ。このように、作業中の怪我は減らない。

怪我であればロウメルの治療所が適切だが、そちらは老人達が通い詰めている。老齢に差し掛かる彼だが、一部ではかに人気があった。

待ち時間との兼ね合いでメディの薬屋を利用する者も多い。

「なんだか、かわいらしい店員がいるなぁ」

「お薬、出すのです!」

「ロロ、いらっしゃいませですよ」

脅迫めいた言いにブランは思わず笑ってしまう。自信たっぷりで、口をへの字に曲げた接客は張を隠せていない。

やがてやってきたのは常連客のエルメダだ。青ざめてふらつきながらやってくるその様で、メディには何があったか察せる。

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「エルメダさん。また食べすぎですか」

「昨日の宴でちょっとね……」

「食べすぎるとお腹が破裂して、細菌が管を辿って大切なを壊れちゃうんですよ」

「やだ怖い」

「お薬、出しますのです!」

メディの薬があるおかげで無茶をされては本末転倒である。その為、メディはエルメダのような常習犯を甘やかさない。

短時間で一気に食べたせいで數時間後に死亡した例をえて毎回のように脅す。

原因は様々だが、摂取した分のせいで一時的にの働きが活化しすぎるのも危ない。當然、エルメダは震えるが數日後には元に戻る。

「ロロちゃんは真面目にお仕事してるねー。えらいぞ!」

「エルメダおねーちゃんはどうして働かないのです?」

「は、働いてるよ! 最近は街道整備も忙しいんだからね!」

「そーなのです?」

街道の周辺の魔を減らすのも大切な仕事だ。カイナ村に向かう者達を手助けしたりなど、アイリーンと共に果を上げていた。

エルメダがこれ見よがしに張り切って店を出た頃には晝前だ。メディの薬屋といえど暇な時間は存在する。

メディはレシピを考えていくらでも時間を潰し、ロロはうつらうつらと頭を傾けていた。

やがて晝食を考えるメディだが、カノエがランチボックスを持ってやってくる。

「暇でしょ? 一緒にランチしない?」

「暇じゃないですよ」

「頭の中は、でしょ? そっちの子は気持ちよさそうにしてるし」

「お薬、出しますのです!」

ランチボックスの中はメディが驚くほど栄養バランスが考えられていた。

メディは見ただけで作った主を見抜く。

「これ、リーシャさんが作ったんですか?」

「ご名答。メニュー開発のついでだそうよ」

メディが目を奪われたのは重厚なソースたっぷりのバーストボアをパンで挾んだものだ。

手頃なサイズで片手で食べられる。噛めば甘辛いソースとがパンと混ざり合う。

さりげなく挾まれた野菜が、シャキシャキと音を立てて歯ごたえも生み出している。

「リーシャさん、すごいですね。さっそくこんなものを作るなんて……。特にパンなんて、どうやって……」

「獣人のイグルスさんに頼んで材料を調達してもらったみたいね。だいぶこき使われてるそうよ」

「なるほど。それで最近、見ないんですね」

宿の廚房にはなかった釜を作り、リーシャは獨自にいてレパートリーを広げていた。

更に帰りの客にはランチボックスを販売する事で、最後までサービスの手抜かりがない。

ボックスでなくとも、片手で食べられるものなら簡単な包みでいい。

「リーシャちゃんのおかげで宿はもうすぐオープンするわ。食の事が整えば、後は人員教育と配置だけだもの」

「皆さん、すごいモチベーションでしたねぇ」

元移民達が新天地でのスタートを喜び、円陣を組んでぶ姿をメディは目撃している。

ロロが指についたソースを舐めながら、カノエを見つめていた。

「あら、どうしたの?」

「カノエおねーちゃんはどうしてヒラヒラの服を著ているのです?」

「これはメイド服といってね。男の人が喜ぶのよ。ロロちゃんも大きくなったら著せてあげるわ。あ、今でもいいかも」

「カノエさん。ロロちゃんに変な事させないでください」

晝時のひと時が過ぎると、午後の営業だ。メディの仕事は薬を販売するだけではない。

訪れた客の中には健康相談をする者がいる。相談者の質に合わせた食生活や適度な運、疲労の蓄積など。

日々の生活で気をつけるべき事を教えている。薬屋の前で冷やかす子ども達を追い返して、日が沈みかけるとメディは閉店を考えた。

開店時間は決めているが、閉店時間は特に定まっていない。客がいないのであれば早々に閉める。

自分自も休養を取って疲れを取れとアイリーンに言われてからは、無茶な労働はしない。

「閉店なのです! きたこれです!」

「疲れましたか? 夕食を済ませたらカイナ湯へ行きましょう」

「噂の薬湯なのです?」

「疲れなんか全部とれますよ」

十八時に食事を終えてカイナ湯で二十時までくつろぐ。

湯に浸かりながらレシピを考えると異様に捗るので、メディも積極的にカイナ湯を利用していた。

汎用マナポーションのブラッシュアップを重ねて、その次は健康増進の助けをする薬を考えている。

フィジカルポーションのような一時的なものではない。日々の生活の中で足りない栄養素を補充してやる事で、より健康的なを作れる。

ある程度まとまって湯上りのが冷めないうちに家に帰り、二十一時には就寢した。

まだベッドを二つ用意できていない。メディとロロは一つのベッドで眠っている。

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