《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》避けのお香を作ろう 2

カイナ村周辺や山に生息する主な魔はハンターウルフ、バーストボア、次點でゴブリンだ。

狩人達の山狩り以外には罠を張っていたが、度は低い。

コストもかかる上に人間が引っかかる可能があるため、村長が許可しなかった。

そこでメディが考案したお香は罠の難點を改善できる。

メディが紙にアイデアを書き出し、アイリーンはティーカップを持ったまま手を止める。

速記のごとく、紙が字や絵で埋まっていくからだ。

しかし、その字や畫力に関しては児のそれと変わらない。

ビーカーにっている絵一つとっても、枠組みから中がはみ出していた。

「メディおねーちゃん! 落書きです!?」

「何を言ってるんですか。お仕事の前準備ですよ。ロロちゃんにも、そのうち必要になります」

「むむー?」

ロロのストレートな想にもメディはじない。そもそも通じていない。

後世にメディの手記が発見されても、さぞかし解読に難儀するだろうとアイリーンはしみじみと思う。

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「あの絵は……。天は二を與えず、か」

「そーだね。アイリーンさんみたい」

「エルメダ。私はこう見えても、かつては畫家を目指していたのだが?」

アイリーンが絵の何たるかを語る一方、メディはすでにアイデアをまとめていた。

お香の種類ごとにまとめられた必要素材が數パターンほど記されている。

更にコストや素材の手難易度などを加味した調合難易度つきだ。

「うーん……ううむー……」

「どうしたの? お腹いたいの?」

「エルメダさんじゃないので、それはないです。どのお香タイプも利點と欠點があって……」

「なんかごめん」

メディに対する健康面の心配をした自分が悪かったと、エルメダは恥じた。

「一つは燃焼させることでより匂いを遠くに屆けます。ただし持続時間に難がありますし、必要な道も揃えなければいけません」

「つまり、定期的に変えるとすれば面倒だね。それに火が消えちゃうこともあるし……」

「もう一つは私が使っている香水タイプです。これは効果範囲が狹いです」

「つまり結果的にコストがかかっちゃうかー」

「最後に袋タイプです。どこかの木にぶらさげておくだけで効果があります。効果範囲は香水タイプより広いですが、持続時間は短いです」

どれも一長一短だとメディは述べる。

うんうんと唸って悩んでいたメディだが、やがて一つの結論に至った。

そして猛スピードで紙が文字と絵で染まる。その際の集中力はアイリーンすら鳥が立つほどだ。

カノエが食事の用意ができたと呼んでも一切反応しない。

「メディ。カノエが食事を……」

アイリーンがメディの肩にれた時、反的に引っ込めてしまった。

力を込めてメディを止めようとしても、手をかそうとするのを止めないだろうと察するほどだ。

「これしかありませんっ!」

メディが椅子を跳ねのけて立ち上がった。

すでに食事に手をつけていたエルメダが危うくを詰まらせそうになる。

メディがダッシュで食卓につく四人に紙を見せつけた。

「これなんですよ!」

「メディ、判読不能だ」

「どうしてですか! マジックランプを使えば、お香の持続時間を大幅にばせます!」

「マジックランプ、明かりの調整を行える火魔石を組み込んだ魔道か。それでどうするのだ?」

「火加減を調整すれば、お香の持続時間をばせます!」

誰もが頭の上に大量のクエスチョンマークが浮かんでいる。

「しかし一度、火がつけば匂いが広がるというのに溫度が関係するのか?」

「そこはまずこの土臺になっている素材の香木が重要なんです! これはカビを防ぐだけでなく」

「わかった、すまない。マジックランプを買ってくればいいのだな?」

マジックランプはカイナ村でも生活必需品として重寶している。

アトリエにも常備しているが、空き家の時に置いてあった年代なのでいつ壊れてもおかしくない。

他の家でも古いタイプのものが多く、明滅を繰り返す骨董品ばかりだ。

「これではびみょーにダメなんですよねぇ。最近のマジックランプはもっといいものが多いですよね」

「いいものであれば、それこそ値が張るぞ。しかも私が魔道職人を目指していた時にこんな話を聞いたことがある。マジックランプのや形によってはマニアにされているものがあり、値を左右している場合もあるそうだ」

「それじゃ、しいと思ったマジックランプでも手軽なお値段じゃないんですねぇ」

仮に特注品となれば、更に値が跳ね上がる。さすがのメディも盲點だった。

抜群の調合レシピを思いついても、活かすには時として道を必要とする。

メディにとっては初めての経験だ。そして故郷の村での父親を思い出した。

――メディ! こいつはいいぞ! 針をぶっさせばを注できる!

――そんなの何に使うの?

――これの偉大さがわからねぇか! だったらお前は半人前以下だな!

――うー! わ、わかる! わかる!

「ちゅーしゃき……」

魔道ではないが、メディはかつて父親に道の必要を教えてもらった。

調合釜も魔道であり、これがなければメディも仕事がやりにくい。

飲み薬と塗り薬ばかりではなく、今回のように調合したものを魔道の力で活かす時がきてしまった。

後でメディが知ったところ、注も父親が外注して作ってもらったものだ。

メディにそのコネはない。

――薬師だからって薬ばっか作ってんじゃねぇぞ!

「私は半人前……」

「メディ、さっきからどうした?」

「あの、お話があります」

メディが切り出した案には誰もが即答できなかった。

何せメディが薬以外のことに真剣になっているのだから。

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