《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》工業都市プロドス

工業都市プロドス。ワンダール侯爵が治める領地の中でも最大規模の都市だ。

広さは元より、訪れたメディを驚かせたのは緑一ない灰と錆が目立つ景である。

赤茶けた外壁の建が目立ち、無數の煙突が煙を吐き出していた。

「す、すごい、です、ねぇ」

「田舎育ちのメディには信じがたい景だろうな。ここでは自然のものはほとんどない」

「すべてが人工……金屬の街ですねぇ! アイリーンさん、あの橋も金屬で作られてるんですか?」

「そうだ。ありきたりだが人はここを鉄の街と呼ぶ」

鉄の街。無機質で冷たい印象をけたメディだが、ここは仮にも魔道職人が集う街だ。

同じ作り手として偏見を持つのはよくないとメディは一人、かぶりを振る。

「魔道の他には金屬加工なんかもお手のものだな。さ、ゴルイ師匠の下へ向かうぞ」

「えっ……? アイリーンさん、いきなり?」

「エルメダ、食べ漁るのは目的を果たしてからでも遅くはないだろう」

する気だったエルメダがぎょっとした。すでに視界にった飲食店に目をつけていただけに落膽する。

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メディは道中、目移りしていた。煙突をつけた屋の下では何が作られているのか。

金屬の板が次々と運び出される工場、複數人の作業員。メディが見たこともない服裝で仕事をしており、目が釘付けだ。

「メディ、足元に気をつけて歩け」

「ふぁっ!」

「おっと……」

転びそうになったメディをアイリーンが支える。

勢を立て直すと、メディは改めて汗だくになって働く者達に敬意を表した。

何かを生み出して誰かを助ける。薬師の自分と重ねて親近を覚えていた。

「確か師匠の家はこの辺りだったはずだ。そろそろ著くぞ」

「ホントにいたんだ……」

「エルメダ、どういう意味だ?」

「いや、なんでもない」

何せアイリーンの無數の経歴が噓ではないと証明されてしまったのだ。

半ば疑っていたエルメダにとっては複雑な心境だった。

細い路地にって突き進むと、錆だらけの外壁が目立つ一軒の家にたどり著く。

躊躇なくアイリーンがドア付近にある何かを押す。

「それ、なんですか?」

「これを押すと家の中にいる者に來客があったと知らされるのだ」

「へぇぇぇ! すごいですねぇ!」

再生屋ゴルイ。ワンダール侯爵が認める數ない人であり、プロドスでも知らぬ者はいない。

そんな人とこれから対面するのだから、メディは気を引き締める。

何かとんでもない條件をふっかけられるのではないか。

それとも取り付く島もなく追い返されるのか。

ワンダール侯爵の手紙の効力など、メディはまるで信じていない。

そしていよいよドアが開かれた。

「誰?」

出てきた人だった。

びきって手れすらしていないボサボサの髪に寢間著姿、眠そうな目でメディ達を訝しむ。

年齢は十代前半、メディは自分と同じかし下だと予想した。

しかしそんなものより驚いたのはの狀態だ。

「エクリ、久しぶりだな」

「……誰?」

「私だ。アイリーンだ」

「極剣?」

「そうだ」

「破壊?」

このやり取りだけでアイリーンの魔道制作の実力が一行に知れ渡る。

言葉がないだが、破壊しに來たのかと訊ねているとわかってしまった。

エルメダは笑いをこらえていたが、カノエは遠慮なくクスクスと笑う。

「魔道制作もいいが、今日はゴルイ師匠にお願いがあって訪ねた。師匠は不在か?」

「死んだ」

「……なんだって?」

「死んだ」

一同は固まった。誰もが予想していなかった返答だ。

ワンダール侯爵の手紙があるからと安心していたのだ。

エクリはそんな彼達に対して一切表を変えない。

「それはいつの話だ?」

「二ヵ月前」

「病死か?」

「そう」

メディはエクリがどういった立場の人間かわからなかったが、その淡白な反応に戸った。

自分に近しいであろう人が亡くなったというのにエクリからは何のも読み取れない。

「ア、アイリーンさん。こちらのエクリさんは?」

「師匠の孫娘にして弟子だ。孫娘とはいえ、あの師匠が助手として手元に置くほどの逸材だぞ」

「へぇぇ、そうなんですか」

そう聞かされて、メディはエクリを深く観察した。

明らかに良い狀態ではない上にメディは違和が拭えない。

不摂生、病気。原因はあるものの、どれも本的な原因ではないと考える。

なぜこのような狀態に陥ったのか、腑に落ちなかった。

「そうか……。おそらくワンダール侯爵も知らなかっただろう。惜しい人をなくしたものだ」

「あのワンダール侯爵のことだから、長らく連絡も取っていなかったでしょうね。無駄足かしら?」

「そう言うものではないぞ、カノエ。師匠の不幸は殘念だが、このエクリの腕もなかなかのものだ……ん、エクリ?」

アイリーンとカノエのやり取りを無視して、エクリは家の中へ戻ってしまった。

いきなり突き放された一行はしばしの間、固まる。

「いやいやいやいや! これで終わり!? あの子もなんかフォローしてよ!」

「そうだな。エクリ、し話をしよう」

アイリーンがドア越しに聲をかけると、エクリがまた顔を出す。

「なに」

「なに、ではなくてな。ゴルイ師匠のことは殘念だが、お前に仕事を依頼したいのだ」

「無理」

「待て、ドアを閉めるな」

閉められようとしたドアの間にアイリーンが足を挾む。

観念したエクリが面倒な素振りを隠さず、家の中へ歩いていく。

そのどこか力ない足取りを見て、メディはやはり違和を覚える。

「あの子、危ないです」

「エクリが?」

「はい。お話をしましょう」

歩を進めたメディの表は険しかった。

メディのその顔つきを見て、アイリーン達はどこか察する。

一方、エルメダとしてはエクリの素っ気ない態度が病気か何かの影響であってほしいと願う。

そうでなければあまりに取り付く島がないとじたからであった。

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