《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》工業都市の治療薬
「イルフェン中毒だと?」
アイリーンが聞き返したそれは、ドラゴンエナジーに含まれている分だ。
エクリへの薬を調合しながら、メディはドラゴンエナジーの危険を説明する。
分に疎いアイリーンやエルメダは初めて聞く名前だが、カノエは合點がいったように頷いた。
「イルフェンは神経を刺激して覚醒作用を促進します。これによって眠くなったり疲れをじなくなるんです」
「それだけ聞くと、毒というのは言い過ぎのような……」
「エルメダさん。なんで人は眠くなったり疲れをじると思いますか?」
「ね、寢たいから眠くなるんじゃない?」
余計な口を挾んだとエルメダは後悔した。
そもそもメディが毒と言い切るのだから、否定するのは野暮だ。
エルメダはなぜか正座して、真剣に聞く構えを見せる。
「そうです。眠たくなったり疲れるのは、がそうしなさいと訴えかけているんです。ですが、それを麻痺させてしまったらどうなりますか?」
「疲れてるのに休むことなく働き続けちゃう……そりゃ大変だ!」
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「そうなんです。人間、眠い時には寢て疲れた時に休むのが當たり前なんです。ドラゴンエナジーはそんな人間の覚を狂わせているんですよ」
「ひぇぇ! それじゃ疲れが取れてるわけでもなんでもないの!?」
「そうです」
メディは今、のイルフェンを分解する薬を調合している。
エクリはドラゴンエナジーを常用したせいで、常にイルフェンがにある狀態であった。
これにより、ほぼすべての神経系統が麻痺している。
それを解消しつつ、過剰な栄養素によってボロボロになったを浄化するための薬だ。
「イルフェンもそうですが、他に含まれている分一つだけ見れば毒ではありません。
例えばこれに含まれているギルビリンは疲労回復を促す上に行を良くすることで知られています。
ですがドラゴンエナジーにはこういったいい分がデタラメに大量に含まれているんです」
「ギルビリンもそうだけど、イルフェンなんかは暗殺者も用していると聞くわね」
「さすがカノエさん、よく知ってますね。いくらいい分でも、過剰摂取すればで扱いきれません。その余った分が悪さをしてしまうことがあります」
「うふふ……照れるわ」
メディが調合の仕上げに取りかかった時、エクリが目を覚ました。
ちょうど薬を差し出すメディを見て、眠る寸前に聞いた言葉が噓ではないと理解する。
薬名:メディエナジー ランク:B
素材:レスの葉
グリーンハーブ
アフラの実
ビスの
魔力の水
効果:のイルフェンを中和して、疲労回復効果を促す。
「エクリさん。こちらを飲んでください」
イルフェンは本來、中和できない分であるがメディは自然分解を促進させる薬を完させた。
突飛な素材は一切使わず、エクリの機能を正常に保つための分しかっていない。
本當に必要なのは薬ではないとメディはわかっていた。
「気持ちいい……」
「が軽くなったと思います。ですがまだ安心できません。エクリさんはドラゴンエナジーに頼って不摂生をしました。つまり、まずは健康的な生活を取り戻すのが重要です」
「けんこーてき……」
「そんな難しい顔をしないでください」
薬に熱中すれば平然と夜更かしをするメディが言えた言葉ではない。
それを知っている一同だが當然、あえて言わなかった。
ここでもっとも驚いているのはカノエだ。
「……イルフェンを中和なんて聞いたことがないわ。自然分解を待つのが常識だと思っていた」
「その自然分解できる力がにはあるんです。それをほんのしだけ後押ししてあげました」
「その素材だけで?」
「グリーンハーブは解毒効果で知られてますが、の機能を正常に戻す効果もあります。ですが知っての通り、これも過剰摂取は危険です」
メディのコンセプトはあくまでドラゴンエナジーへのアンチだ。
の余分な分を中和して、後は足りてないものを提供する。
ドラゴンエナジーには含まれていない栄養素で補強することで、健康狀態の維持や回復を実現していた。
「ドラゴンエナジーの怖いところは偏った栄養素です。常用していると、必要な栄養素が足りなくなります。そのせいでに不調が起こるのですが、イルフェンがそれに気づかせません」
「そ、それは確かに毒だね……こわー」
「個人によって癥狀は様々ですが、エクリさんの場合は不幸中の幸いです。人によってはもっとひどい癥狀が出て、そのまま亡くなる可能があります」
「じゃ、じゃあ他の人達やばいじゃん!」
「だからやばいんですよっ!」
慌てふためいたエルメダが外へ飛び出そうとするが、アイリーンに止められる。
口で説いたところでドラゴンエナジーは今や労働者の味方だ。
正攻法では解決できないと説得されたものの、エルメダは落ち著かない。
「ど、どうすればいいのさ」
「この町ではドクマークが優れた薬師だ。対して我々が知るメディは無名……難しいだろうな」
「いっそドクマークを暗殺しちゃおうかしら?」
カノエのそれは誰もが冗談に聞こえない。本當にやりかねない雰囲気があるからだ。
そこへエクリが起き上がって首を左右に振る。
「ダメ……。ドクマーク、強い護衛いる……。いつも一緒にいる」
「あら、そうよね。それじゃ難しいわ」
白々しいカノエの発言だが、もっともらしく暗殺の案を取り下げただけだ。
一方でメディ達はうんうんと唸りながら考えるが、時間だけが流れていく。
「ドラゴンエナジーはまずいのです! なんで皆、飲むのです!」
「ロロちゃん。普通にあの分だけを調合すればひどい味になりますからね。だから甘くして飲みやすくしてるんですよ。だから糖分がものすごい含まれてます」
「でもまずいのです!」
「それはロロちゃんの覚がドラゴンエナジーの本質を見抜いてからです。あの甘ったるさだけを取り出せば、皆さんにはおいしく……」
メディがいきなり立ち上がった。
「そうです! なんでドラゴンエナジーが飲まれるのか! それはおいしいからですよ!」
「そーなのですかー」
「そーなのです! つまりメディエナジーもおいしくすれば飲んでもらえるかもしれません!」
「おいしいメディエナジー!」
「を作るのです!」
妙にテンポが合った二人を見て、エクリは茫然とする。
なぜ二人はこんなに楽しそうなのか。
祖父が死んでからの自分は次第にものを作るのが苦痛になってきたと気づく。
最初の楽しいという気持ちはなくなり、今は作る前ですら気が重い。
しかしメディとロロは祭りのようにはしゃいでいる。
「お薬、出します!」
「出しまくるのです!」
エクリは二人をしばらく見つめていた。
そして次第に自分の中で何かがうずく覚を覚える。
それは自分が忘れかけていた何かだと気づき始めていた。
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