《【書籍化】勇者パーティで荷持ちだった戦闘力ゼロの商人 = 俺。ついに追放されたので、地道に商人したいと思います。》09 ざまぁな余談

そしてこれは余談だが…

俺と別れた後。

勇者ライアン達は、なかなか大変な目にあっていたらしい。

まず手始めに、踴り子ミリリの通常サイズの『倉庫』にりきらなかった、自慢のコレクションの大部分を、そのままロストすることになったそうだ。

「私の『倉庫』は、こんなにりません!」と逆ギレするミリリと、誰のコレクションを優先して運ぶかで大喧嘩を始める第二〜第五の夫人達。

それを見たライアンは、あわてて俺を探しに隣町の冒険者ギルドに行ったらしい。

戦闘力ゼロの俺は、故郷に帰るためにまずは護衛を雇うと思ったらしいのだが、

殘念ながら俺はヤック村の薬草農家へ行っていたため、隣町のギルドに行ったのは翌日のこと。

ライアン達とは、そのまますれ違ってしまったようだ。

あと、俺の故郷はここから遠過ぎて。

ライアンから渡された退職金5萬マナじゃ、到底そこまでの護衛なんて雇えない。

それに、俺はその5萬マナを元手に商売を始める気でいたので、故郷に帰るという選択肢はそもそも全くなかった。

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ライアン達に話を戻そう。

ライアン達がギルドに立ち寄った時、都合よく『倉庫』スキル持ちの冒険者が5人もいたらしい。

これ幸いと5人に相談を持ちかける勇者ライアン。

そしてその5人が全員。ライアンのパーティに臨時で加することになったのだが…

そいつらはなんと、盜賊団「黒い翼」のメンバーだった。

盜賊団の5人は、勇者達のコレクションを価値の高いものから順に各自の『倉庫』にれると、當然のようにそのまま山へとんずら。

あっという間に殆どのコレクションを奪われて呆然とする勇者達。

そして、怒り心頭のまま盜賊団を追跡して山へる勇者達。

一晩中、山のモンスターとの戦闘を行いながら盜賊団を追跡し続け。気づけばヘトヘト。

彼らはここで。

実はそのコレクション以上に、魔導書や回復薬といった支援アイテムの數々が…、自分たちの冒険にとって必要不可欠なものであったということを思い知った。

いつものように魔を使いまくる、魔師3人の魔力は一瞬で底をついたし。

戦士の當たり戦法も回復アイテムや回復魔法があってこそのものだった。

そして獣使いの獣達も大量の餌がなければ働かない。

あと、ライアンの戦やスキルもかなり燃費が悪い。

高級な魔力回復薬や力回復薬は良い値で売れるため、それらも盜賊団に奪われていたし。殘った支援アイテムも「かさ張るから」と言ってほとんどヤック村に置いてきていた。

そして、力と魔力と、アイテムが盡きたライアンたちは、そのままヤック村周辺の山の中で遭難しかけていた。

それでも、人生の半分をかけ。

世界を半周して集めたコレクションを諦めきれず。

死に狂いで追跡を続ける勇者たち。

ついには食料すらも盡き。

付き合いが淺く、付き合いきれなくなったミリリが逃げ出した。

そして泣く泣く盜賊の追跡を諦めた勇者たち。

「王都につけばなんとでもなる!」

と言っていったんヤック村に戻り、荷馬車を買って殘ったコレクションを運びはじめたそうだ。

ちなみにこの時の俺は、別のパーティの數日がかりのクエストに、荷持ち要員として同行していた。

そのためにライアンたちとは、またもやすれ違いとなったようだ。

そして、王都に向けて出発したライアン達。

だが荷馬車には、コレクションが山積みになっていて、支援系アイテムや食料がそんなにたくさん乗らないような狀態だった。

道中の街で買う、そこまで多くない量の回復アイテムや支援アイテムは。消費の激しい勇者達の戦いで次の街に著く前に底をついた。

そして節約を指示し、常にカツカツギリギリの戦闘に。

魔王討伐をし遂げた勇者達が、大陸の通常陸路のモンスターに苦戦するまさかの異常事態となっていた。

だが、そんな格好の悪いことは言えない。

彼らはこれから『魔王を討伐した勇者』として、王都へ凱旋するのだ。

いつの間にか、共通の貨幣であるマナさえも底をついたが、殘ったコレクションを手放したくない一心で、彼らは金欠のまま進み続けた。

最後は、そのコレクションを売った金で、大規模凱旋パレードをやろうと考えていた。

だが王都では、フィーナの母の第六王妃による超絶盛大な凱旋パレードの準備が進められていた。

実はさっさとコレクションを手放して、その金で支援アイテムを買い揃え、さっさと王都に辿り著くのが正解だったのだが。

全てが裏目に出ている勇者たちだった。

さらには、ボロボロの姿を見られないようにと、出來るだけ街道や街を避けながら進む勇者たち。

そしてどんどんととんでもない方向へと進んでしまう。

「あれ、もしかして俺たち、道に迷ってる?」

「地図は?」

「そんなの持ってないわよ」

「いつもはアルバスが、地図とか道とか、全部丸暗記してたからね」

「ここは、いったいどこかしら?」

「えっ、私たちこれからどうなるの?」

果たして、ボロボロの勇者達は無事に王都に辿り著けるのか!?

勇者達の運命やいかに!

という、定番のざまぁな展開があったらしい。

だがまぁ、それはそれで、俺とはまた別の話。

俺は俺で、しばらくの間はヤック村と隣のモルト町での、地味でせこい商売で生計を立てることになる。

まぁ、そういうことなので、

お互いに茨の道だったってわけだ。

一応。追放編は完結です。

基本的にここで終わるつもりだったんですが。

思いの外PVびてたので、続き作ろうか迷っております。

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