「やはり。アース跡の1階層あたりじゃ、ほとんど売りになりそうな（おたから）は殘ってないな」

クリスが育ったという孤児院の食堂にて。

俺たちは本格的な跡探索を行うための打ち合わせを行なっていた。

バージェスは、この孤児院にて、クリスの部屋を間借りして寢泊まりしているそうだ。

またどうやら。

孤児院の奧の部屋にいるクリスの姉に、ご執心らしい。

多き男、バージェス。

もう好きにしてくれ。

話を戻すと。

俺達はモンスター討伐や、素材納品のクエストのついでに。何度かアース跡群の地下1階層へと潛っていた。

だがやはり、簡単にたどり著ける範囲には目ぼしい（おたから）は殘されていなかった。

ロロイは。

他のトレジャーハンター達が手をつけなかった、なんだかわからないような（ガラクタ）を、たびたび大事そうに自分の「倉庫」にれていた。

たまに、れた後にもう一度取り出して捨てていたが…

その基準はよくわからない。

だが、どちらにしろたぶん、それらは売りにはならないだろう。

「じゃあ、やはり。本格的に（おたから）を探すなら、地下3階層より下に潛る必要があるっつーわけか」

バージェスの言葉に、俺はうなずいた。

「アルバス。お前なら、どのくらいの準備が必要だと思う？」

「どの程度の探索をするかによるな。あと、モンスターの數や種類にもよるが。仮に地下にいるのが地上と同じようなゴブリンやウルフェスと、その中級上位種だけだとして…。単に最深部まで行って戻ってくるだけならば、2週間程度で事足りると思う」

それでも2週間は必要だ。

さらに、今回の目的はただの観ではない。

行って戻ってくればOKということではない。

「だけど、今回の目的は探索（トレジャーハント）だろ？　それなら、場合によっては1ヶ月でも2ヶ月でも、潛りっぱなしになる可能もあると思う」

「そんなにかかるのか？　地上でも上級モンスターを狙って1週間森を彷徨うなんて事はザラだったが。地下探索はそんなに長期間を見るものなのか。俺は跡探索はほとんど経験がないから。その辺の事はマジで覚がわからねぇな」

バージェスが『お手上げだ』という風に頭を抱えた。

「ちょっと待てよ。今、『最深部まで行って戻るだけなら』とか言ってたけど…」

そこで、クリスが話に割ってってきた。

「2年前に勇者ライアンのパーティが最深部にたどり著いて以來、未だにそこまで辿り著けたパーティはいないんだぞ？」

「そうなのです。數々のトレジャーハンターが挑みながら、未だにその。アース跡の最深部にあると言う、アーティファクト『無盡太（オメガ・サン）』を確認したのは、勇者ライアンのパーティただ一つなのです。だからきっと、勇者パーティが探索しきれていないが、そこにはまだごろごろ眠っているのです！　まさにトレジャーハンターのロマン！　なのです！」

アーティファクトとは。

「神の」とも呼ばれる特殊なだ。

移させることもできなければ、倉庫スキルにしまうこともできない。

各地でいくつか発見されており。

中央大陸の古代跡で3個。

そしてこの西大陸で、アース跡の無盡太（オメガ・サン）を含めて2個発見されていた。

そしてそれを発見することは、トレジャーハンターとして最大級の名譽とされている。

「まぁつまり。おっさん達の言うことは、初めから荒唐無稽だってことだ。跡の中がどうなってて、探索にどれだけ時間がかかるかなんて、勇者パーティか、そいつらから直接話を聞いた人間にしかわからないことだよ」

クリスがため息をつき、諭すようなじで俺たちにそう言った。

俺とバージェスは顔を見合わせた。

そして俺は、ポリポリと頭をかいた。

「あー、本人からは言いづらいだろうから代わりに俺が言うが。アルバスは以前、その勇者パーティに居たんだよ。この様子じゃ、アース跡群にも一緒に潛って、その『無盡太（オメガ・サン）』とやらの発見にも、立ちあってるんだろうよ」

クリスとロロイは。

しばし、バージェスの言葉の意味を理解しかねているようだった。

目の前の、さえない中年商人=俺、と。

そんな大それたことをしたパーティのメンバーという人像が、どうにも結びつかないのだろう。

「はぁっ！？　あ、あんた。勇者様のパーティにいたのか！？」

クリスが悲鳴のような大聲を出した。

「弱々で、戦闘じゃ全く役に立たないのに？」

「う、うるせーな」

そーだよ。

だから、追い出されたんだよ

ロロイはと言うと。

「ロ……ロマ…ン……」

なんらかの許容量を超えてしまったらしく、白くなって固まっていた。

トレジャーハンターとして求めてやまなかったに、ひょっとしたら本當に手が屆くのかもしれない。

そんな期待と、その他諸々のがごちゃ混ぜになって訳がわからなくなっているようだった。

俺は、バージェスに「荷持ち」兼「ガイド」として雇われてこのパーティにいる。ことになっている。

だから『アース跡の最奧までガイドしてくれ』と言われれば、そうしよう。

なくとも。

2年前にライアンのパーティが攻略した段階でのアース跡群部のマップならば、今でも頭にっている。

パーティメンバーがスキルで見つけ出した罠の位置までバッチリだ。

ってか…

ライアン達が潛ったあと、結局誰も攻略できてないのか。

確かに、あの跡探索（トレジャーハント）の功は、王フィーナのスキルがあったからこそというじでもあったが…。

ちなみにライアン達と潛った時は。

瓦礫で閉じられていた地下3階層へと続く巖の亀裂をこじ開けて通ったので、その先にはモンスターが1匹もいなかった。

今から再び跡に潛る際に、警戒するとしたら…

一番のポイントはその辺りの違いだな。

不測の事態に備えて、できればあと1人か2人くらいは戦えるメンバーがしいところだった。

だがバージェスは。

この4人で跡探索を進めるつもりのようだ。

人數が増えれば、それだけ食料のその他の準備や運搬も大変になる。

また荷が増えればその分、小回りもききづらくなる。

とのことだが。

「全部倉庫にぶちこんときゃ。そこまで問題ないんだけどなぁ…」

まぁリーダーがそういう方針なら、仕方がないだろう。