《【書籍化】勇者パーティで荷持ちだった戦闘力ゼロの商人 = 俺。ついに追放されたので、地道に商人したいと思います。》26 騎士と姫君

リオラが話し始めた『事』とやらについてだが。

まず『夫婦で旅をしている』というのは噓だったらしい。

本當は、さる高貴なお方と、その騎士なんだとか…。

「アウル・ノスタルシア皇國、第十王。リオラ・ウイ・ノスタルシアと申します。リオラはありふれた名前ゆえ、そのままの名を名乗っておりました。現に、今まで誰にも気づかれませんでした」

この世界で、王族の顔を知る人間などはそう多くない。

それに、現在この國には王や王子などは、合わせて50人近くいる。

日々多くの人が行きう街々で、ありふれた名前のありふれた冒険者などを、そこまで気にかける人間もいないということだ。

「私はウイ家護衛騎士団、副長のアーク・アレクサンドロスです。夫婦というのも、周囲の目を謀りやすくするための仮初めの設定です。私などが恐れ多いと、姫には何度も申し上げたのですが…」

正直。空いた口が塞がらなかった。

アウル・ノスタルシア皇國というのは、つまりは今、俺たちがいるこの國だ。

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中央大陸、西大陸、南大陸の3つの大陸を支配する。広大な領土を有する大帝國。

リオラは、その皇國の姫君だというのだ。

「この2人の分は俺が保証する。俺も、以前は王都の騎士団にいたことがあってな。その時に顔を見知っている」

バージェスが騎士団にいたというのは初耳だ。

どうりで腕が立つわけだと思う気持ちがある半面。

バージェスに保証されてもなぁ、という気持ちもちょっとした。

とにかく2人は。

リオラの妹であるフィーナを探すために、王都を抜け出してこの西大陸に渡ってきたのだそうだ。

アウル・ノスタルシア皇國、第十三王のフィーナ。

フルネームは『フィーナ・ウイ・ノスタルシア』

勇者ライアンとの関係づくりのため、第六王妃によって勇者と政略結婚をさせられ、王でありながら勇者の決死の旅に同行させられていた悲しき王

は、俺が勇者パーティにいた頃の仲間だった。

そして曲者揃いの勇者パーティの中で、唯一俺にまともに話しかけてくれる相手だった。

「フィーナは半年ほど前。城塞都市キルケットでパーティメンバーと共に目撃された後、そこから先の足跡が途絶えています」

リオラ達は。

この半年余りの間、ひたすらに勇者達の行先を追ってその足跡を辿っていたのだそうだ。

ライアンたちがキルケットの前に目撃されたというヤック村や。その先のガラド大山脈。そしてビリオラ大斷崖。さらにはそれを超えた先の、魔界ダンジョンの跡地など。

數々の難所を調査のために訪れたが、未だに手がかりらしい手がかりは見つけられていない。とのことだった。

「東の港町、セントバールにて聞き込みを行っても、勇者のパーティを乗せたという船はありませんでした」

そうなると、勇者達は未だにこの西大陸にとどまっているという話になる。

だが、半年以上前の目撃報を最後に。その足跡も辿れなくなってしまっている。

「目撃報が全くないことから考えて。おそらく勇者様達は、なんらかの事を潛める必要があり。今は勇者パーティだけが行き著くことができる場所にを潛めている。と考えています」

そのために、未だに勇者パーティしか行き著けていないというこのアース跡群の最下層を目指した。ということらしかった。

跡探索などの経験がない2人が跡探索の報を集めていたところ、商人ノッポイがアース跡の攻略準備を進めているという話を聞きつけた。

そして、その護衛として雇われてパーティに潛り込んだということだった。

「なんとしても、私はこの迷宮を抜け、その先の地下都市にたどり著かねばなりません。あなた方も、そこを目指しているというのならば。どうか、お供させてください」

そう言って、頭を下げるリオラとアーク。

様とその護衛騎士団の副長に頭なんか下げられたら、こっちが慌てる。

クリスはことの重大さがあまりピンときていないようだったし、ロロイはもっとよくわかっていないようだった。

「いいぜ」

バージェスが軽く言って、出発の準備の続きを始めた。

どうせ初めからそのつもりだったのだろう。

バージェスがそう決めたのならば、俺にも異論は無い。

俺からたらふく回復アイテムを買い取って萬全の狀態になったリオラとアーク。

この2人ならば。

戦力的に考えても、こっちから同行を頼みたいくらいだった。

それはそうと、なぜか姫様や王族の騎士団副長に上から目線なバージェスは、一どの立ち位置のつもりなんだろう。

確かに今はこのパーティのリーダーだが。

流石にそれで、王族に偉そうにするとか、ないだろ。

そこだけが、超疑問だった。

→→→→→

「あなた方が俺たちに分を明かした覚悟は、け取りました。それに報いるほどの、大した話ではないかもしれませんが…」

そう言って俺は、自分が元々勇者ライアンのパーティに加わっていたことを話した。

リオラとアークの目が、驚きに見開かれる。

「モルト町のギルドでは『弱くて勇者パーティを追い出されたやつ』って、割と有名な話だったと思いますが…」

「いいえ、おそらくはタイミングなのでしょうが。私達はその話は聞いておりませんでした。聞いていれば、真っ先にあなたに話を聞きに行ったはずです」

「とりあえず、フィーナはまだ生きている」

そう言って俺は、リオラに1つのキズナ石を見せた。

俺がライアンのパーティにいた頃。

たまにパーティメンバーを分離することもあったため、メンバーは互いに、互いのマナを込めたキズナ石を渡しあっていた。

俺はパーティメンバーとして認められていないところがあったので、一部の相手からしかもらえていなかったが…

俺が持っている勇者パーティメンバーのキズナ石は3つ。

初期メンバーのライアンとルシュフェルド、そしてフィーナのものだ。

そう。俺がリオラに見せたのは、フィーナのキズナ石だ。

そしてその石は、今もぼんやりとしたを放っている。

「ああ…、良かった。本當は、もうダメかもしれないと…、そんなことを考える時もありました。でもこれで、私はまだ全力でフィーナを探しに行ける!」

リオラが、目に涙を浮かべながら俺に禮を言った。

よほど、大切な妹だったのだろう。

「過去にライアン達と通った道です。地下5階層までの迷宮の地図は、今でも俺の頭にっています」

リオラが大きく頷いた。

「よろしくお願いします。アルバス様」

そう言って、再び俺にむかって深々と頭を下げた。

姫様に頭なんか下げられたら、こっちが慌てるわ。

それにしても、ライアン達が行方不明?

あの強力な戦闘力を誇る戦闘の申し子みたいな奴らの集団が、その辺のモンスターに遅れを取るとは到底考えられなかった。

いったい、あいつらに何があったのだろう。

あっちはあっちで勝手に王都に戻って、勝手に楽しくやってるだろうと。

この半年以上の間、全く気にもしていなかった。

だが行方不明だと聞いて。

流石に、俺は彼らのその後が気になり始めてしまっていた。

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