《【書籍化】勇者パーティで荷持ちだった戦闘力ゼロの商人 = 俺。ついに追放されたので、地道に商人したいと思います。》28 商人と聖騎士

俺は元々、バージェスにマナで雇われてここにいる。

要は、マナを稼ぐための…これは仕事だ。

より高額な報酬を出す雇い主がいれば。

鞍替えすることもありうるかもしれない。

俺をチラ見しているリオラとバージェスは、そう思っているのだろう。

それは、確かにその通りだ。

俺は。

ノッポイの提示するその金額に…

ちょっと…

心が。

揺れ…

うご…

かない!

「斷る。なくとも、俺はな」

アルカナとも約束した。

俺が目指す大商人は…

商売でみんなを幸せにできるような大商人だ。

俺の売る商品に納得して、その対価として客にはマナを支払ってもらう。

お互いにしいもの同士を換して、WIN-WINでおわる。

そうやって、商売相手との信頼関係を築き。そんな相手を増やして、どんどん大きなことをしていく。

俺が目指しているのは、そういう普通の商売だ。

個別の案件における、多のセコさには目をつぶってくれ。

そこもある意味商売だからな。

だから…

「リオラとアークを陥れるための買収になんか、俺が乗るわけないだろ」

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実は、ほんのちょっと惜しい気持ちもあったが、そう言ってやった。

目の前にあるマナの大小だけで事を決めて、以前から親のある商売相手を裏切るようなちんけな奴は…俺の目指す大商人じゃねえ。

そんな奴に、俺はなりたくない。

「そんな、クソみたいな商談持ち掛けてくんじゃねぇぞ! このクソ商人!」

バージェス、クリス、ロロイも同じ意見のようだった。

隣でうなずいてくれている。

マナなんて、必要があれば後から10萬マナでも100萬マナでも。いくらでも自分の商売で稼いでやる。

もう、それでいい。

俺は商人だからな!

あと。

ノッポイは知らないんだろうけど。

そんじょそこらの大商人の息子より、皇國の姫様に恩を売っておいた方が、後々まで考えたら絶対いいに決まってんだろ?

「ぐ…ぬぬぬ…ぽぽい!!!」

ノッポイが、顔を真っ赤にして怒り始めた。

リオラ達は、今更ノッポイに正バラす気もないだろう。

だから間違いなく、このまま戦闘になる。

実際、これはかなり分が悪い賭けだった。

どれだけ自分の信念に沿っていて、どれだけ先々でのバックが見込めたとしても。

ここで俺たちが全滅してしまったら何にもならない。

「わかったっぽい…」

ノッポイは、もう殺る気まんまんのようだ。

自分の護衛部隊にかなりの自信があるのだろう。

4人の魔師軍団、2人の武闘家、そして8人の荒くれ者の冒険者。

それらが一斉に臨戦態勢をとって構えた。

「アルバス…、よく言ってくれた」

そう言って。

バージェスが2本のショートブレードから、背中の大剣へと持ち替えた。

「それでこそ。、俺が見込んだ男だ!」

いつの間に、バージェスに見込まれていたのかわからないが…

バージェスは過去一で嬉しそうだった。

「俺が…やる!」

そう言って。

バージェスが前に出た。

そして…

「大火炎魔(テラフレア)」

そう唱え、大剣に炎を纏わせた。

魔法剣だ。

あの數の冒険者たちを相手に、魔法剣で勝負しようというのだろうか?

やる気満々なのはありがたいが、無謀なのはいうまでもない。

魔法剣は、そういう技じゃない。

バージェスは大剣を逆手に構え。

それを大きく振り上げた。

「極大…、魔法剣…」

実戦では絶対に聞くはずがないその技名に。

相手の陣営がめきたった。

極大魔法剣というのは…。

10年ほど前に、王都の聖騎士が南大陸にて魚鱗族の侵攻を阻止するために編み出したという、魔法剣の究極奧義の名前だ。

現在。

使い手はその、技を編み出した聖騎士1人だけだという。

待て待て…。

脅しにしちゃ荒唐無稽すぎるぞバージェス。

「バージェス様! おやめ下さい。その技は危険です」

リオラが止めにる。

リオラまでが、バージェスの演技に乗ったのか…?

「バージェス?」

「キューピット・バージェス?」

「なんであいつが…」

バージェスの名前を聞いたことがあるらしい冒険者達が、しざわついた。

だが、その奧のノッポイの私兵たちは靜まり返っている。

そして互いに、青い顔を見合わせた。

「バージェス?」

「魚人戦爭の英雄。バージェス・トーチか?」

「聖騎士(パラディン)…、バージェス」

「まさか…、本か?」

「王都の元聖騎士が、こんな辺境の跡にいるはずがない!」

「だが、あの魔法剣は…」

その慌てふためく様子は…

マジで…

マジっぽかった。

「誰だか知らんっぽいが、魔法剣など隙だらけの見せっぽいものだろう? さっさとやってしまえっぽい!」

ノッポイが騒ぎ立て、冒険者たちが前に出始めた。

それに対して。

ロロイ、クリス、アーク、リオラの4人が、前へと進み出る。

その姿は、バージェスを守るために立ちはだかっているようにも見えたようだ。

「魔法剣護衛隊? 魔法剣発前後の隙を埋めると言う…、例の鋭部隊か!?」

「若いが多いという報とも、ほぼ合致する!」

男子のクリスも、の子に見えたらしい。

「やはり、本の聖騎士(パラディン)!」

「だとすれば…、あの構えは!!」

魔道士の1人が、怯え切ってんだ。

「間違いない。極大魔法剣! 天地神炎陣(てんちしんえんじん)だ!!」

ノッポイの護衛達の顔が、一斉に引き攣った。

「発されれば、この部屋が大火炎魔(テラフレア)の魔法陣で火の海になるぞ! まともに喰らえば、全員消し炭だ!」

師達が我先にと奧の出り口から部屋の外へと逃げ出して始め。

それを見た武闘家達も、ノッポイのカゴを置いて後に続いた。

護衛が逃げたので、訳もわからないままノッポイも逃げ出し始め。

それに気づいた冒険者たちも慌てて逃げ出した。

後に殘ったのは、俺たちのパーティだけだ。

「ふんっ…」

魔法剣の発を止め。

バージェスが鼻を鳴らして、大剣を背に納めた。

「……聖騎士(パラディン)?」

「『元』だよ。なぁに、昔ちょっと、な…」

遠い目で語るバージェス。

リオラとアークは、2人とも尊敬の眼差しでバージェスを見つめていた。

え…。

聖騎士(パラディン)…。

まじなの?

「えぇっ!?」

俺は、もうそれしか言えなかった。

聖騎士(パラディン)とは。

國王より名乗りを許される名譽職の一つで、剣士としては勇者に次ぐ地位だ。

外に敵を打ち滅ぼしに行くのが「勇者」ならば。

攻めてくる敵を討ち滅ぼすのが「聖騎士(パラディン)」だとされている。

年下好きの変態バージェスのイメージとは。

悪いけど、全く結び付かなかった。

今も、ロロイに囃し立てられて鼻の下をばしているし。

マジでなんなんだこいつは。

深く追求すると地雷を踏みそうなので、これ以上話を聞くことはしなかったが…

とにかく、俺たちはバージェスのおかげで危機をした。

主人公の元に、なぜか最強チート持ちが集まるのは。

ファンタジーの中だけのはずなんだけどなぁ。

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