1個目のが売れてからというもの、俺たちにしいい流れが來ていた。

が、大1日に1〜2個くらいのペースで売れ始めたのだ。

しかも…

より多く売っているのはロロイだ。

「これは、古代の石包丁なのです。古代にも金屬はあったのですが、それは貴重なものだったため、石から削り出した道がたくさん使われていたのです。野菜や果くらいなら、今でも切れるのです！」

俺が吹き込んだそんな講釈で、古代包丁が數本売れていった。

ただ、買って行った商人達は、ロロイの講釈に心かされたからというより…

「ふぉぉおおおーーい！　また売れたのですぅぅーー！！！　ロロイの（ロマン）ーーー！！」

が売れるたびに目をきらっきらさせながらぶ看板娘を、アトラクション覚で面白がっているだけだという節もあった。

だが、売れてることに変わりはない。

看板娘様々だ。

→→→→→

そして俺たちは、荷馬車広場での売りと並行して。正式なアイテム鑑定を行える鑑定士の報を集めていた。

同業者との流は大切だ。

ロロイのび聲も、いい流のきっかけになっていた。

そんなじで荷馬車広場の同業者から聞きつけたいくつかの報の中から、俺は特に良さそうな報を選んで行を起こすことにした。

『キルケット西部地區の門近くに。頑固者だが、それ故に信頼のできるアイテム鑑定士がいる店がある』

そういう話だった。

その鑑定士は骨董屋と武屋を営んでいて、キルケットの商業組合で過去に組合長を務めたこともある顔役だとのことだ。

クセは強そうだが、なんとなく信頼が出來そうな鑑定士だとじた。

しかも、キルケット西地區の門近くというのは…

要は俺たちが寢泊まりしているミトラのお屋敷がある區畫だ。

燈臺下暗しとはこのことだな。

「そいつに、一度會ってみるか」

「賛なのです！」

→→→→→

そしてその日。

俺たちはくだんの鑑定士がいる店を訪れていた。

「ロロイ。店の売りは倉庫にはれるなよ」

ロロイの「鑑定」スキルは。

アイテムをロロイの「倉庫」にしまうことで発する。

だが當然、店に陳列されているアイテムを「倉庫」にしまうのはご法度だ。

れてしまったら、その時點でもう盜人だ。

自警団に突き出されても文句は言えない。

それは常識なのだが。

ロロイの一般常識の欠如合からして、一応注意しておかないと不安だった。

店主らしい、がたいのいい初老の男からの視線がかなり厳しめなので怖い。

彼が、頑固者だという話の鑑定士だろうか？

とりあえず、見た目はかなりいかつかった。

ちなみに、本來の正式な「鑑定」というのは、ロロイのものとはかなり異なる。

本來の「鑑定」は…

魔導書などに使われる特殊な魔が施された紙を用意して。その上に、対象となるアイテムを乗せてスキルを発することで行われる。

そうすると、その紙にアイテム名が焼き刻まれるのだ。

この焼印は古代文字で刻まれ、他の方法では真似ることができない特殊なものだ。

そして、それがそのままアイテムの鑑定結果の証明となり、最後にその紙に鑑定者が容の現代語訳の記と、サインをれることで正式な鑑定証となる。

これが本來の「アイテム鑑定」だ。

アイテム名と鑑定者のサインがった「鑑定証」を添えることで、名稱不明アイテムはその本來の価値を知らしめることができるようになるのだ。

場合によっては、そこにさらに「スキル鑑定」の結果を付け加えたりもする。

やり方は「アイテム鑑定」と同様だ。

これらが。

価値の高いであろうを、しっかりとした値段で売るために必要不可欠な要素だ。

→→→→→

「々あるのです…」

ロロイは、骨董屋のたちを興味津々で眺めていた。

『猟の壁畫の破片』

『商人の壁畫の斷片』

『鉄の刃』

『微寶玉』

この店は、アース跡で発掘された『』の他に、通常の『武』も扱っていた。

さらには『アイテム加工』や『武研磨』。

他に『アイテム鑑定』『アイテムスキル鑑定』等を請け負って生計を立てているようだった。

今の俺たちに必要な要素が一通り揃っている。

「アイテム鑑定を頼みたいのだが…」

俺は、一通り店を見て回った後で店主にそう聲をかけた。

するとその初老の男は、鋭い目線を俺に向けてきた。

「は…どれだ？」

「倉庫取出（デロス）」

俺がそう唱えて「倉庫」から取出したのは『大商人グリルの手紙』だ。

初めに見せるものとしては々強めだが、これへの対応でこの店主の質がある程度推し量れるはずだ。

「他にも何點かあるのだが。まずはこれの鑑定を頼みたい」

「ほう……」

店主はその布切れを一瞥した後。

「あんた。これをどこで手にれた？」

そう尋ねてきた。

俺から何かを探ろうとしているようだ。

「それをあんたに言う必要があるか？　スキルによるアイテム鑑定なら、アイテムの出自報などは必要ないだろう？」

頑固者とのことだが。

さぁ、どう出る？

しばし、沈黙のまま視線が絡み合った。

店主は、ジロジロと。

俺…そしてし離れたところで店をしているロロイを見まわした。

し、嫌な視線だ。

そして店主が口を開いた。

「悪いが、うちではこれは扱えねぇな」

そう言って。

出したを回収するようにと、手をしっしっと払った。

鑑定って…斷られることとかあるのか！？

俺は『大商人グリルの手紙』を倉庫に収納した。

「何か問題でもあったのか？」

俺がそう尋ねた次の瞬間。

店主が突然カウンターを乗り越えて、俺に摑みかかってきた。

「なっ…！」

全く警戒していなかったわけではないが。

何の前れもなく摑みかかられ、そのまま俺は盛大に店の外まで投げ飛ばされてしまった。

「い…てぇ…」

下手すりゃ死ぬぞ。

俺はめちゃくちゃ弱いんだから。

腕とか折れてないだろうなぁ…

「アルバス！　大丈夫なのですか！？」

ロロイが店から飛び出して駆け寄ってきた。

そしてロロイは、同じく店から出てきた初老の店主と、俺との間に立ち塞がった。

ロロイはすでにいつものカイザーナックルを裝備している。

また、3倍以上も格差がある相手に対し、素のままでは不利だと本能的に悟ったようだ。

「剛力発（マッスル）、アンド、鉄壁発（ガード）」

ロロイは、燃費が悪すぎるが故に地下では一度も使わなかった、その２つのスキルの同時発を行った。

よほど怒っているか、よほど相手が強いと見たかのどちらか。あるいはその両方だろう。

「ロロイの『荷持ち』の、アルバスに何するのですか！？　アルバスは弱いんだから、死んじゃったらどうするのですかぁっ！？」

怒りの理由が、俺の心をグサグサと抉る。

たけど、とにかくロロイはもうやる気満々だった。

「戦闘スキル持ちか…。なかなか良い組み合わせを持ってるじゃねぇか。それだけに、悪の道にい込まれているのが不憫でならねぇ」

骨董屋の店主もまた。

右手にガントレットをはめて、完全に臨戦制だ。

「あぶねぇ」

思わずそう呟いてしまったが。

もしさっき、あのガントレットで毆られていたら普通に致死ダメージだったかもしれない。

「2人とも待て…。いきなり戦闘になる理由がわからない」

かなり人通りのある通りなので。

通行人たちが何事かと俺たちを遠巻きに眺めていた。

「この人がアルバスを襲った。ロロイはアルバスの『護衛』なのだから…、ロロイにはそれだけで十分な戦う理由なのです。なにか事があるなら、とりあえずぶちのめした後で聞くのです」

そう言って、ロロイは前へと飛び出した。

誰だよロロイにこんな騒な対応を教えたのは…。

クラリスしか思い浮かばなかったから、後でがっつり文句を言っておこう。

「とぉおりゃぁぁーーっ！」

ロロイは一気に間合いを詰め、ガントレットのガードの上から店主に拳を叩きつけた。

「ぐぅっ！　おおっ！」

店主は、ロロイの一撃をまともに食らって數メートル先まで吹っ飛ばされた。

店主との格差を考えると。

ロロイの「剛力」スキルによるパワー強化は、通常の「2倍強化」をはるかに超えているのかもしれない。

「やるじゃねぇか嬢ちゃん！　おりゃぁっ！お返しだっ！」

そう言って摑みかかってくる骨董屋店主を、バク転しながらヒラリとかわし。ロロイはそのまま下から突き上げるような蹴りを放った。

そしてロロイの蹴りは見事に店主の顎をとらえ。店主はそのまま吹っ飛んで地面に転がった。

どうやら気絶したようだ。

「とりあえず、ぶちのめしたのです。ロロイの勝ちなのです！」

どこで格闘を習ったのかは知らないけれど…

やはり強いな、ロロイ。

「何だったんだ、いったい…」

の鑑定を頼んだだけで、いきなり襲いかかられるとは…

もしかして、を奪おうとしていたのか？

『頑固者だが信頼できるアイテム鑑定士』なんじゃないのかよ…

噂ほど當てにならないもんはないぜ。

「何だ何だ」

近くの店から、次々に人が出てきた。

「骨董屋のガンドラさんが。客のの子と喧嘩して…一瞬でのされちまった」

「あのガンドラ爺さんがか！？」

早くも噂になりつつある。

俺はロロイの手を引いて、さっさとその場を去ろうとしたのだが…

「ううっ…。お腹空いたぁ…のです」

ロロイはへたり込んでしまい、もう自力ではけなくなってしまっていた。