《【書籍化】勇者パーティで荷持ちだった戦闘力ゼロの商人 = 俺。ついに追放されたので、地道に商人したいと思います。》07 鑑定屋③
「バージェス」
「バージェスさん!?」
俺と自警団のトップらしき男が、ほぼ同時にんだ。
「何やってんだ? こんなところで」
バージェスが、自警団と店主達に取り囲まれる俺たちの元へ歩み寄ってきた。
「盜賊団『黒い翼』の関係者らしい2人を捕らえました。これから本部にて尋問を行った後、磔(はりつけ)の刑に処す予定です」
バージェスと顔見知りらしい自警団の男が、事を話し始めた。
「盜賊団だぁ? んなわけねーだろ! こいつらは、俺の仲間だぞ…」
「えっ、いや…しかし…」
自警団の男は、しどろもどろしながら。
俺たちが、勇者パーティか黒い翼しか持っていないはずの。アース跡のものと思われる特級を持っていたことなどを、バージェスに説明した。
バージェスは、それを眉間に皺を寄せながら聞いていた。
「當たり前だろ?」
そう、バージェスが口を開く。
「そこのアルバスとロロイ、そして俺とこのクリスでパーティを組んで。俺たちはアース跡の最深部まで潛ってきたんだ。そのは、その時に手にれたものだ」
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「へっ…?」
自警団の男は、変な聲を上げたまま固まってしまった。
「そんな馬鹿な!?」
「あの、大商人ノッポイの部隊ですら、最深部には到達できずに戻ってきたと言うのに…」
「最下層は、すでに巖盤で埋まっていたと言う話なのでは…?」
周りの店主達からも、驚きの聲がれた。
「信じる信じねぇは各人の自由だが、これは事実だぜ。アルバスがその特級とやらを持っていることが、逆に何よりの証拠だろう」
バージェスがそう言い切った。
「ほ…本當に…?」
「いや、しかし…」
「だが、バージェスさんが言うんだったら…」
ざわめきが大きくなり…
ガンドラと自警団の2人は青ざめていた。
どうやら。
俺とロロイは、で磔(はりつけ)にされずに済みそうだった。
→→→→→
「ほんっっっっっとうに、済まねぇっっっ!?」
初めに俺に摑みかかってきた骨董屋のガンドラが、地面に頭をり付けて俺たちに謝っていた。
場所は骨董屋の奧の部屋だ。
ガンドラ、俺、ロロイ。
そしてバージェス、クラリスに加え…
自警団のトップらしい男の2人もいて。
ガンドラの隣でかしこまっていた。
ロロイは俺の隣で、力回復薬をドリンク代わりにして焼きを貪り食っている。
「そうならそうと。きちんとそう言ってくださればよかったのに」
自警団のトップの片割れ。の方がそう言った。
「アース跡を攻略しただなんて。あの狀況で俺が言ったって誰も信じなかっただろ? 下手な事を言えば余計疑われたのが目に見えてる」
「うっ…」
は、それ以上何も言えなくなったようだ。
「バージェスの旦那。本當に…、あの跡を攻略したんですかい!? 勇者様のパーティの後、何組ものトレジャーハンター達が挑んでますが、未だに勇者様達に続くパーティは現れてねぇんですよ?」
恐る恐る。ガンドラがバージェスにそう尋ねた。
「あぁ…」
そしてバージェスは。
俺が元勇者パーティであることに始まり、俺が以前跡を攻略した時の道を、今でも完全に記憶していることなどを話した。
「まさかっ! 『勇者パーティしか持っていないはずの』を持っていたのは、その勇者パーティの方でしたかっ!」
自警団の男の方が、畏まりつつも思わず聲を上げていた。
「『元』だよ。俺はもう追放されてる。それに勇者パーティっていっても、俺はただの荷持ちだ」
とりあえず、そう答えておいた。
「いずれにしろ。アルバスのおかげで、俺たちはアース跡を攻略できた。いわば今回の立役者だ」
「いやはやなるほど…それならば。この話も全て納得がいきます。……アルバスの旦那には、早とちりでとんだご迷をおかけしやした」
そう言って。ガンドラは改めて地に頭をり付けた。
そのあまりの平伏っぷりに、俺は流石にそろそろなんらかのケリをつけたくなってきていた。
「頭なんざ下げられたって、1マナにもなりゃしないんだけどなぁ?」
「いや…本當にすまねぇ…。すみませんでした」
責められていると思ったのか、ガンドラはさらに頭を下げた。
だが、俺が言いたいのはそういうことじゃない。
「俺たちはお互いに商売人だ。ならば…この貸しは商売で返してくれ」
「え…ええ! もちろんですとも。鑑定でしたかね!? いくらでも承りますぜ」
「もちろん。半額くらいには、まけてくれるんだろ?」
思いっきり吹っかけてみたがつもりだが。
ガンドラから返ってきたのは意外な言葉だった。
「とんでもない! 迷かけた詫びに、旦那の鑑定は全て無料(ただ)で承りまっせ!」
マジかよ!? 大儲けじゃねぇかっ!?
俺の頭の中で。
鑑定にかかる予定だった経費が、カシャカシャ…チーン! と音を立てて0マナになった。
「……」
…だが。
それじゃあ一方的すぎる。
相當な迷をかけられたのは事実だが、商売仲間として長く付き合っていくに當たっては、それに付け込みすぎるのは良くない。
「ガンドラさん、あんたも商売だろう? 流石に無料(ただ)はいけねぇよ。……8割引きでいいか?」
それで『経費分+ちょっと』くらいは出るかな。
「へ…? へいっ!?」
ガンドラの目が見開かれ、し涙ぐんだ。
「お気遣い謝しやすっ! アルバスの旦那ぁ!」
初めに言ったのより値引き率を大きくして、それで謝されるとは…
なんとも妙な気分だ。
「うぅっ…。あっしは、こんな自分が恥ずかしい。…アルバスの旦那は間違いなく大商人のだ」
ガンドラはさらに涙ぐみながらそんなことを言っていた。
怒ったり、落ち込んだり、泣いたり…
の赴くままに忙しいおっさんだな。
こういう思い込みの激しいタイプは。
敵にすると厄介だが、うまく味方につけるといろいろと手助けをしてくれるはずだ。
無料(ただ)にはならなかったが…
鑑定を依頼したいの総數を考えると、この割引率はかなりデカい。
「アルバス…『儲け!』なのですか!?」
俺の代わりに、ロロイがそんなことを言ってニコニコしていた。
なんだかんだで。
々と丸くおさまったようだ。
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