《【書籍化】勇者パーティで荷持ちだった戦闘力ゼロの商人 = 俺。ついに追放されたので、地道に商人したいと思います。》07 ミトラのお相手
そんなある晩。
皆が思い思いの時間を過ごしている夕食後の時間に。俺はクラリスのお屋敷の庭で、翌日のためにコドリス焼きを仕込んでいた。
客の多い時間帯に向け、どれだけ事前に準備ができるかが客の満足度の鍵になる。
決して1串で腹が膨れるようなものではないので、あまり待たせすぎるのはダメだ。
「不思議な香りですね」
そんな時、不意に後ろから聲をかけられた。
「ミトラか…」
「はい」
盲目の目を布で覆い隠し、ミトラが俺の後ろに佇んでいた。
「こんなところに出てきて大丈夫なのか? 危ないから、あまり火の方には近づくなよ」
ミトラは、基本的に食事の時間以外はほとんど部屋から出てこない。
この屋敷の中であれば、ある程度問題なくき回れるらしいが、そもそもあまりあちこちき回るのが好きではないのだろう。
「不思議な香りがしたので。し気になりまして…」
「…食べるか? これが夕食の時にクラリスが話してた、コドリスの香草焼きだ」
「なるほど…。では、おひとついただきます」
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俺はミトラのために、倉庫にしまってあった簡易の椅子と機を庭に倉庫取出(デロス)して、座るように促した。
「ありがとうございます」
「立ったまま食べてて、旨さのあまりよろめかれても困るからな」
すぐ橫では、今も追加のコドリスを焼く火が燃えている。
熱で火がある方向はある程度わかるだろうが、やはり盲目の娘にとっては、何もかもが危険だろう。
「慣れておりますので、あまり無理にお気遣いをなさらないでください」
「そうか…わかった」
そういえば、ミトラとはあまりちゃんと會話したことなかったな。
跡に潛っていた期間を抜かしても、2ヶ月くらいはここで世話になっていたが、こうして2人きり言葉をわすような場面はこれが初めてかもしれない。
そしてミトラは、コドリスの香草焼きを一口かじった。
「不思議な味ですね。どこか、懐かしいような気がします」
「?」
「いえ。昔、母が作ってくれた料理の中に、これと似た味のものがあったような気がして。…おそらくは、ただの思い違いですが」
「そうだな。これは今回のために、俺の妻が調合したものだ。ひょっとしたら…何か元になる味があるのかも知れないが」
「あら、奧様がいらっしゃるのですね」
「ああ、俺には勿ないくらいの(ひと)だ」
俺がそういうと、ミトラはし下を向いて黙り込んでしまった。
変な沈黙のようにじたので、俺はとりあえず話を続けた。
「ミトラももうすぐ結婚するんだってな。クラリスから聞いてる。……おめでとう」
「ええ。ありがとうございます」
そのまま、再び沈黙。
俺、なんかまずいことでも言ったかな…
クラリスは前から々とミトラのことを心配していた。
そのためにマナを貯めようとして、危険な跡探索なんかにも行ったんだ。
「これで、みんなが幸せになれるといいな」
クラリスはバージェスにであることを打ち明けて結婚を申し込んだ。
それを保留にされたままではあるが、今でも仲は悪く無いようだ。
バージェスの方も、クラリスがの子だということに馴染んできている気がするので、多分あとは時間の問題だろう。
「ええ。私のためにクラリスが、これ以上危険なことに首を突っ込むのはやめさせないといけませんからね」
「そうだなぁ」
その言い方に、俺はちょっとだけ引っかかるものをじてしまった。
「ご馳走様でした」
そう言って、ミトラが部屋に戻ろうとした。
椅子から立ち上がる時、ちょっとよろめいたように見えたので…
思わず手を出して背中を支えた。
「危ないな。部屋まで送ろうか」
「妻のある方が。嫁り直前の娘を…ですか?」
「いや…、そう言うアレじゃないんだが」
「大丈夫です。1人で戻れますから」
そう言ってミトラは、し歩いてお屋敷の壁に手をつき。そこから壁伝いに庭を歩き始めた。
「申し訳ありませんアルバス様。他意がないことは存じておりますので…」
その謝罪は、付き添いを斷ったことに関してだろう。
「いや。俺の方こそ悪かった」
「私は、私の幸せを見つけますので。クラリスにはクラリスの幸せをしっかりと摑んでほしいと思っています」
「ああ…」
「いつまでも私があの子の足枷になってはいけない。私は私で…貴族のジミー・ラディアック様のもとで、自分自の幸せを摑みます」
「あっ…」
「なにか?」
「いや…」
聞き覚えのあるその貴族の名前に、俺はしだけ騒ぎを覚えた。
ジミー・ラディアック
ヤック村にて、アルカナの借金を帳消しにする代わりとして、プリンを妻に迎えようとしていた貴族だ。
その求婚は、ほとんど脅迫だった。
その記憶があったので、そいつはろくな奴じゃ無いという認識だったのだが…
実際に會ったわけでも、知り合いでもなんでもないので、下手なことは言えない。
現在のミトラとクラリスに。
救いの手を差しべているのはそのジミー・ラディアックに違いないはずなのだ。
「なんでもない。皆が皆の幸せを見つけられるといいな」
「…はい」
しばし迷ったが。
俺は、ミトラやクラリスの幸せに水を差すようなことは言い出さないことにした。
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