《【書籍化】勇者パーティで荷持ちだった戦闘力ゼロの商人 = 俺。ついに追放されたので、地道に商人したいと思います。》23 手遊びの

翌日、俺は早速ミトラに『勇者』と『魔師』と『荷持ちの商人』の木人形の作製をお願いした。

どう考えても數日間はかかると思っていたのだが。その日の夕方には10×3種類の木人形が出來上がってきていて、かなり驚いた。

今度は細工はそこまで上等にはしなくて良いと、しデフォルメされたような仕様を頼んだのだが…

はやはりかなり上等なものに仕上がっていた。

そんなものを30

半日で作りあげるというのは、たとえ普通の職人であってもありえないような速さだ。

盲目のミトラが、一どうやってそんな神業をやってのけているのかと聞いたら。

「風の魔を使って、木を削っています」

とのことだった。

俺の知る風魔は、他の全ての基礎魔を凌駕して喰らい盡くす、最高に荒々しいものだ。

周囲の地面や建を抉り取りながら弾けて行った、以前ロロイが放った風屬の遠隔攻撃などがまさにそのイメージするところだ。

繊細な木人形細工作りに風魔を使うなど、聞いたこともない。

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やって見せてしいと頼んだが、ミトラはそれはできないという。

「母から教わった、の技ですので」

「そうか…」

ならば、別に無理強いするようなことでもない。

「魔の使いすぎで疲れてはいないか?」

「多は…。ただ、アマランシア様は非常に唄が上手く、聞いているうちにどんどん想像が膨らんできておりました。だから私(わたくし)も、新たに膨らんだイメージを木人形(かたち)にしたくて仕方がない気持ちになっておりましたので…」

そしてミトラは、改めて俺に向き直った。

「私(わたくし)の作った木人形が、本當に売れたのですね…。そんなことはあり得ないと…私(わたくし)の手遊びなどにはなんの価値もないと…、そう思っておりましたが…」

「あぁ、ちゃんと売れると言ったろう?」

「えぇ…。アルバス様は、言ったことを本當にしてしまうのですね」

「まぁな」

正直言って、かなりヒヤヒヤしていたのだが。うまく行った後なら何とでも言える。

「私(わたくし)は今でも、とても信じられないような気持ちです」

そう言って、ミトラは俯き加減になって、上向きに開いた自分の手のひらに、ずっと顔を向けていた。

→→→→→

また、『斷崖の姫君』以外の唄を聞いたことがなかったというミトラは、昨晩の勇者の逸話が大層気にったそうだ。

「多くの方は、力強い勇者様や賢い大魔師様がお好みなのでしょうけれど。私(わたくし)は…戦うことのできない荷持ちの方が、それでも必死にパーティのために盡くそうとしているところに、痛くをいたしました」

そう言われて、改めて人形を見ると『荷持ちの商人』が、心なしか一番手がこんだ作りになっているような気がした。

「最強の戦闘メンバーが集っていたと言われる勇者様のパーティにも、そのように戦えない人がいて。その方もまた、仲間のためにとキチンとそのお役目を果たしているのですから、私(わたくし)のようなものにとっては、それが希のようにも思えました」

なんか気恥ずかしかったが。

そのあたりは、アマランシアが上手く唄ってくれているからこそだろう。

は『役立たずだ』と言われて、その後パーティを追放されているんだけどな。

俺はミトラに改めて禮を言って、30の人形を自の倉庫に収納し、部屋を出た。

俺の認識に基づき、

『勇者ライアンの人形』×10

『黒魔師ルシュフェルドの人形』×10

『荷持ち商人アルバスの人形』×10

の3項目が、俺の倉庫のインベントリーに追加された。

→→→→→

そしてミストリア劇場は、それからも連日満席が続いた。

客の數に合わせて多席の數を増やしたり、時間別に一番混む店の手助けにったりなど、俺たちは連日対応に追われていた。

アマランシアの演目は『斷崖の姫君』や『勇者ライアンの風魔龍討伐譚』だけにとどまらず、日々様々に変化した。

そしてミトラは、いつも屋敷のり口あたりで靜かにそれに耳を傾けていた。

ここ最近は、シンリィが付き添ったりもしてくれているようだ。

ミトラの人形は日を追うごとに種類が増えていき、日々かなりの數が売れていく。

それにはクラリスも、ミトラ自も驚愕していた。

以前、クラリスが道端で売ろうとした時には見向きもされなかった木人形が。その時よりも高値な価格設定にも関わらず、それこそ飛ぶような勢いで売れていくのだ。

俺の劇場(仕掛け)は、しっかりと、思った通りの役割を果たしてくれていた。

そしてバージェスたちも。

晝夜のダブルワークで疲労がかなり蓄積されているようだったが。誰からも不満が出ることはなく、必死に働いてくれていた。

バージェスは、クラリスやロロイに聲をかけながら、彼らの力管理もしているようだった。

元々の戦闘パーティでも、年長者としてそういった役割を擔っていたのだろう。現場のメンバーの力の管理は、バージェスに任せておけば問題なさそうだ。

ロロイはスキルのスタミナは桁外れに低いが、こう言う普通の力はめちゃくちゃにあった。

だがクラリスは、元々そこまで力のある方でもないので、なかなかにキツそうだ。

比較的用なので自分でも力の出しれをコントロールしながら上手く回しているようだったが、やはり慣れない客商売での長期戦となると、しずつ消耗しているようだった。

そんなクラリスの分を、ロロイとバージェスがうまくカバーしながら々な作業に當たってくれている。

みんな、しずつ蓄積されていく疲労に苛まれながらも。日々増えていくマナを見て、オークションに向けての期待がどんどん膨らんでいくのをじていた。

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