《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》03.村娘、新しい領主に助けられる

ノアが火山亀を消し飛ばす、ほんのし前の出來事だ。

カーター領にある村【アインの村】。

アインの村に住む村娘、【リスタ】は、村の民とともに震えていた。

「また……モンスターが暴れているのですね……」

リスタ。くすんだ金髪に、ふわふわした髪質の、巨だ。

が震えているのはもちろん、モンスターが出現したからである。

「安心しろ。この村はかつて【いにしえの勇者】様がかけてくれた【結界】によって守られている。壊れることは絶対にないよ」

……そう、このカーター領。

別名、【冥府領】。

そう言われるのは理由がある。

カーター領には、【奈落の森(アビス・ウッド)】と呼ばれる、巨大な魔の森が存在するのだ。

ここに住まうモンスターは、恐ろしく強大な力を持つ。

ゆえにそこに住まう民が困らぬよう、かつてここを訪れた勇者によって、モンスターからを守る結界を施されたのだ。

「そ、そうだ! 勇者様の結界があれば、おれたちはぜったい安全なんだ!」

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「そう……ですよね。大丈夫、ですよね……」

リスタが震えながら見上げる。

そこ先には、巨大な火山を背負った亀がいた。

ぎろり、と亀とリスタの目が合う。

「ひっ……!」

そして、亀は背中から噴石を放出した。

「く、來るぞぉおおお!」

「大丈夫! 壊れる事なんてない……って、え、ええええ!?」

バキッ……! 村の上空にひびがったではないか。

「そ、そんな! 代々村を守っていた結界が、壊れかけているだと!」

村人達は恐れおののき、絶した。

亀はその間も噴石を背中から放出し続ける。

「このままではいずれ結界が壊れてしまう。どうすれば……」

暗い表の村人達を見て、リスタは決意する。

「わたしが、おとりになります!」

「リスタ! そ、それはいかん!」

自らがエサとなって、火山亀を引きつけるつもりだった。

村長はそれを許さない様子、だがリスタの決意はかった。

「わたしは、みんなが大好きです。だから……守りたいんです」

「リスタ……」

「ごめんなさい!」

リスタは村の結界の外に出る。

火山亀は飛び出てきた新鮮な人間(エサ)を見つけ、彼を追い掛ける。

「はぁ! はぁ! はぁ! はぁ……!」

リスタは必死になって村から距離を取る。

だが向こうは歩幅も巨大。すぐに追いつかれる。

「きゃっ……!」

リスタはけつまづいて転ぶ。

そこに、火山亀が近づいてきた。

「村のみんな……ごめんね。わたしがどんくさいせいで……」

本當はもっと距離を離したかった。

でも……もう遅い。

火山亀が襲いかかろうとした、そのときだ。

びくんっ! と亀がを大きく直させたのだ。

「え……? なに……?」

ぶるぶるぶる、と亀がを震わせている。

地震? いやちがう……恐れているのだ。

「この奈落の森に住まう、恐ろしいモンスターが、恐れるほどの何かが……いるっていうの?」

そう、このタイミングで実は、ノアを載せた馬車が森にさしかかっていたのだ。

Sランクモンスター火山亀が恐れたのは、馬車に乗っている、恐るべき魔法力と闘気(オーラ)をめた、【なにか】。

瞬時に悟る。あそこには、化けがいると。

……もちろん書庫の魔神の存在にも火山亀は気付いていた。

だが、それ以上にヤバい何かがいる。警戒していたのはそっちだった。

「ガアメエエエエエエエエエエ!」

亀はリスタを無視すると、馬車に向かって攻撃し出す。

「なっ! ば、馬車の人! 逃げてぇええええ!」

だが悲鳴もむなしく馬車が、火山亀の攻撃によって潰される。

「そんな……」

だが、炎のなかから、何かが出てきた。

赤いマント。

白いピカピカのシャツ。

黒いスラックス。

高貴な雰囲気を漂わせる……黒髪の年だ。

長は170くらいだろうか。

ひょろりと長いに、ボサボサの黒い髪。

一見するとだらしのない、貴族の坊ちゃんのような見た目。

だが……その目は、猛禽類のように鋭かった。

彼は剣で魔法を斬り、そして炎の魔法で火山亀を消し飛ばした。

「…………うそ、でしょ? 一撃で……?」

ぺたん、とその場で餅をつくリスタ。

そして……彼は見た。

炎の向こうに、右手を差し出して立つ……高貴なる者の姿を。

「あ、ま、待ってください!」

彼はふわりと飛び上がると、そのまま空の彼方へと消えていった。

「……わ、わたしを、助けてくれたの?」

とくん、とリスタのが高鳴る。

「すごい……なんてすごい人なんですか。見ず知らずのわたしを助け、見返りを求めず颯爽と立ち去っていく、それこそ……いにしえの勇者様のようではありませんか!」

リスタの目の中には、さきほど自分を助けた謎の青年の姿と、そして尋常ならざる力が、ハッキリと焼き付いていた。

「いったいどこのどなた……ん? あれ、何か落ちてます……?」

リスタは近くによる。

そこにいたのは、1匹の白貓だった。

『むきゅぅ〜……ノアのあほー。あとで殺すぅ〜……』

魔神ロウリィが、気を失っていた。

神的ショックがデカすぎて、意識を手放していたのである。

ノアは気絶してぽとんと落とした相棒に気付かず、浮遊魔法で去って行ったのだ。

さて、そんな事を知らないリスタからすれば……。

「ね、貓が、しゃ、しゃべったぁあああああああ!」

そう驚くのは、至極當然のことであった。

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