《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》08.第七王子は人材を集める(適當)
またやらかした俺は、領主の館で頭を抱えていた。
「くそっ! なぜこうも全てが裏目に出るんだ! 呪われてるんじゃないのか!?」
『もうあきらめて真面目に領主したらどうっすかー?』
白貓の魔神ロウリィが、機の上でびしながら言う。
「死んでも嫌だ! 俺は楽して安全に暮らしたいの! くそっ、今度こそだ。今度こそ無能ムーブかましてやる……!」
コンコン……。
「失禮しますノア様」
「おお! セバスチャン! 待ってたぞ!」
もはやこの領地で唯一の味方ともいえる執事のセバスチャンだ。
こいつだけだ、俺を無能と蔑んでくれるのは。
「で、なんの用事だ?」
「領主としての初仕事でございます。こちらの資料を」
仕事か、クソだな。
まあいちおうは目を通しておくか。
「壊れた村の工事?」
「はい。カーター領は常に魔の襲撃をけています。勇者様の結界があってある程度は防げていますが、結界が壊れている村の建はかなりの被害をけています」
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報告書類によると、魔の被害をけている村は結構あった。
結界が壊れるのは時間の問題だったみたいだな。
「で、俺に何をしろって?」
「壊れた村を直してしいのでございます」
まあ修復魔法を使えば一発だ。
だが……使わない。斷じてだ。
『一応聞きますけど、なんでっすか?』
魔神ロウリィが思念で會話してくる。
『そんな便利魔法を使えるって知られてみろ? 毎日あれなおせこれなおせってメッチャ言われてクソ面倒』
『でしょうね。ブレないっすねあんた……』
一方でセバスが邪悪な笑みを浮かべて言う。
「ご存じかと思いますが、我が領地はとにかく金がありません。魔を倒せる人材がおらず、人的被害や建の修復を繰り返す結果、常に金欠狀態なのですよ」
「と、なると壊れた建を直す……商工ギルドの連中を呼びたくても呼べないと」
「ええ、その通りです。どうします、ノア様ぁ?」
恐らくセバスは、無理難題をふっかけて、俺にできないと言わせたいのだろう。
だが……フッ、甘い、甘いよセバスチャンくん。
こほん、と俺が咳払いする。
「わかった。俺が人を手配しよう」
「なっ!?」
予想外の答えに困するセバスチャン。
『だいじょーぶなんすかー? 魔法を使わず、金も使わず、人なんて集められるんすか?』
『まあ見てろって。俺に策ありだ』
俺はセバスを見て言う。
「しここを留守にする。その間は任せたぞ」
俺はひらひらと手を振って、その場を後にする。
ロウリィがぴょんっ、と俺の肩に乗っかる。
『ノア様ー。そもそもぼくには無理ですー、って素直に言えば、無能だって思われるんじゃないっすか?』
『三流だなロウリィ。いいか? やる前から無理ですと言う無能と、やれます大丈夫ですって散々調子乗って、失敗する無能。後者の方が無能つよいだろ?』
『はぁ……まぁ、そう、なんすか……?』
ロウリィが首をかしげる。
俺は領主の館を出て、馬車を走らせる。
『で、的にどーするんすか? 金もないのに人なんて呼べます?』
俺は誰も見てないので思念から普通の會話に戻して言う。
「偉い人は言いました。パンがなきゃケーキを食えばいいと。人がいないなら取ってくれば良いと」
『王都にでも帰って、知り合いに頼むんすか?』
「バカヤロウ! 王都にいるできる連中呼んできたら、それこそ俺の評価が上がるだろう!」
『はぁ? じゃあ誰連れてくるんすか?』
「そろそろ……かな。時にロウリィくん。馬車での移のお約束って知ってるかい?」
『お約束ぅ? なんすか?』
そのときだ。
ひひーん!
ガタンッ!
『ば、馬車が止まった? なんで……?』
「正解は〜」
がらっ、と馬車の扉が開く。
「よぉ、坊ちゃん。良いなりしてるんじゃねえかよぉ」
柄の悪い連中が、荷臺にってくる。
「ほらな、人が向こうからやってくる」
『盜賊じゃないっすか。いやまあ、高貴な分の人の旅にはつきものっすけど』
「だろぉ? ほら、盜賊みたいなクズを連れて帰れば、仕事ができないってなるじゃんな?」
びきっ、と盜賊のリーダーらしき男が、眉間に管を浮かせる。
「さっきから一人で何ごちゃごちゃ言ってやがる!」
「ん? ああ、こっちの話し。さて……と」
俺は軽く手を前に出しす。
「大人しく拐されれば命までは取らないでやるぜぇ……? あん? なにやってんだよ」
「でこ、ぴん」
その瞬間、盜賊のリーダーのが吹っ飛ぶ。
「ふんぎゃぁああああああああああ!」
くるくると空中を舞うと、どしゃりと地面に激突した。
「な、なんだ……?」「親方(リーダー)ぁ! 空からリーダーが!!」
俺は悠々と馬車から降りる。
『魔法っすか?』
「まさか。ただのデコピン。闘気(オーラ)で強化してね」
闘気とは、自然エネルギーを取り込んで運エネルギーに変える技だ。
『いやそれ武の達人しかできねーやつっすよ!?』
「は? こんなの赤子でもできたぞ、前の人生では」
『あんたそろそろ學べよもぉお!』
さて、俺は盜賊達を見渡す。
ぽきぽきと指を鳴らして言う。
「おまえら、死にたくなきゃ、大人しくそこに正座しな」
一瞬の靜寂の後……。
「ふざけんな!」「やっちまえー!」
どどどっ、と盜賊達が俺に押し寄せてくる。
『はー、やれやれ、バカな人たちっすねぇ。この人、あほだけどパワーだけはあるんすから』
ロウリィは後で首を絞めておくことにしたのだった。
★
ほどなくして、俺はボコった盜賊を引き連れて、領主の館へと戻ってきた。
「こ、こんなにたくさん……お一人で……?」
館の前で、セバスが驚いている。
「俺の知り合いで、何でもやる連中だ」
何せ盜賊だからな、金さえもらえれば何でもやる連中。間違っちゃいない。
「こいつらに俺の責任で工事を任せる」
「し、しかしこんな得の知らない連中に、領民達の住む家の補修を任せるなど……」
おっとセバスが俺の邪魔をしてこようとする。
そうはさせないぞ。
「なんだ、俺が選んできた連中を、おまえは疑うのか?」
俺は盜賊連中を見渡す。
「見ろ。こいつらの目を。やる気に満ちてるだろ?」
『そら金がしくって盜賊してた連中っすからね、やる気はあるでしょーよ』
「俺はこいつらなら、やってくれると信じている」
ミスを犯して、俺の評判を下げてくれることをな。
すると……。
「うぐ……ぐす……うわぁああああん!」
盜賊のリーダーが、急に涙を流し出したのだ。
え、なに?
「だ、旦那ぁ……おれらに、更生のチャンスをくださるおつもりなんですねぇ〜……」
ぐすぐす、となんか泣いてる。
他の盜賊連中もだ。
え、まじでなんなの?
「ありがとう……旦那。この仕事、元商業ギルドの頭領、ペンターが引きけた!」
頭領が上半の服をいでみせる。
服の下からは見事な筋が顔を覗かせる。
他の連中もバッ……! といっせいにぐと、筋を披した。
「仕事がなくなり、盜賊にまで落ちぶれたおれたちを見抜いて、仕事をくれたんですね、ノアの旦那ぁ!」
いや、いやいやいや! どうしてそうなる!?
え、なに、盜賊かと思ったら実は大工だったのこいつら!?
知らんがな!
『あちゃー、見てノア様。あの大工連中、信者(リスタ)と同じ目してるっすよ』
確かに目がきらっきらしてる。
曇りきってやがるぜ!
「旦那の期待に応えるため、全力で働かせてもらいまっす!」
「あ、いや……別に全力なんて……」
「野郎ども! 仕事に取りかかるぞぉ!」
「「「うぉおおおおおお!」」」
もの凄いスピードでその場から元盜賊達が消えるのだった。
★
1時間後、俺の部屋にて。
「くっ……! まさか本當に大工を連れてくるとは……」
ぎりぎり、とセバスが歯ぎしりする。
「し、しかし! 大工がいるだけでは問題は解決しませんよ! この領地には食料や警備など、問題が山積みなのですからなぁ!」
と、そのときだった。
「旦那ぁ! お客さんですぜぇ」
ばんっ、と扉を開くと……。
「「「お久しぶりです、ノア様!」」」
そこにいたのは、婚約者、騎士団長、宮廷魔導師長だった。
「お、おまえら……なんで?」
「あっしらが道を作ってたら、ちょうどこちらの領地に用があるこの方々を見つけてさぁ! 連れてきやした!」
青髪の婚約者、サラが笑顔で俺に近づいてくる。
「お久しぶりですわ、ノア様」
「よ、よぉ……サラ。どうしたんだよ、こんな辺境まで?」
にっこり笑って、サラが言う。
「もちろん、ノア様をお助けするべく、參上したのであります。われら公爵家、そして道中供にした騎士団、魔導師団たちも、ノア様にお力を添えるとのことですわ♡」
う、う、うそーん!
と、そのときだ。
「さすがノア様!」
「うぉ! リスタ! どっから出やがった!」
目をきらっきらさせながら、いつの間にか現れたリスタが俺に言う。
「こんなにもたくさんの人と知り合いだなんて! さすがノア様、人脈もすごい! これなら領地もすぐに発展していきますよ!」
た、確かにサラのところはデカい商會を持っていたはずだ。
騎士や魔導師団がいれば、警備は萬全だろうし……。
あ、あれ……?
これって、もしかして……。
「お、俺……また、やっちゃった?」
『そーっすよ。ノア様、有能ムーブかましてたっす』
またかっ! またやっちまったぁあああくそぉおおおおおお!
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