《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》10.第七王子は鉱脈を掘り當てる(結果的)
ある晝下がり、領主の館、食堂にて。
「飯……こんだけかよ」
テーブルの上にはパンとスープ、以上。
だだっぴろいテーブルだからこそ、貧相な食事が目立つ。
「お腹膨れないよこれじゃ」
「申し訳ございません……」
メイドのリスタが申し訳なさそうに頭を下げる。
そこへ、扉が開いて、白髪の老執事がってきた。
「仕方ありませんな、なにせ、我が領地は金がない狀態ですから」
「ま……そうだわな。この間までモンスターの脅威に怯えていた村だったわけだし」
「その通り。冒険者への報酬。村の修繕費用など、我が領地はとにかく金が足りないうえに、金になるものがなにもないのです」
「名産品となるようなもんもねえしな」
俺はパンを一口で食って、スープを啜る。
うん……ぜんぜん腹に溜まらない。
だが、よし、思いついたぞ。
『まーた無能ムーブ(バカ)やるんすか?』
テーブルの下で寢そべっていた貓を踏んづける。
ぐぇええ、と怪鳥のような聲を上げる。
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「して、ノア様。この金欠な狀況下、領主であるあなた様は、一どうやって問題を解決してくださるおつもりで?」
にやりと笑ってセバスチャンが言う。
どうやら不可能だと思ってるらしいな。
「いくら強い家臣を手にれようと、ご自が強かろうと、金がなければ領地での生活はママなりませぬ。よもや、金を自ら魔法で作ることもできないでしょうしなぁ」
いや、できるよ。
金くらい簡単に錬できる。
まっ、やらないけどね! 忙しくなるし!
『清々しいほどのくずっぷりさすがっす……ぐぇえええ』
「ふむ、そうだな……俺が、どうするか……教えてやろう。答えは……何もしない!」
「ほぅ、なにもしない……ですと?」
「ああ、無理無理。俺は神様じゃないんだぜ? 金を生み出すことなんてできないし、騎士団や魔導師団がいようが、奴らを雇う金がなきゃな。このままじゃストを起こして早晩うちを出て行くだろうよ」
「ほぅ! そうですよなぁ! さしものノア様も、お手上げと言うことですなぁ!」
「まったくですなぁ!」
「「わっはっはっはー!」」
……俺とセバスチャンが笑い合う。
その姿を見てロウリィが呆れたようにため息をつく。
『うわぁ、領主を辭めたいノア様と、領主を追い出したいセバスチャンとで意見が完全に合致してるっすよー』
さて、と俺は立ち上がる。
ロウリィが肩の上に乗っかってきた。
「どこへ參られるのです?」
「散歩だ」
「ほぅ! 散歩ですか」
「夕飯までには帰るよ。そんじゃ」
セバスチャンに手を振ってその場を後にする。
ロウリィが不思議そうに顔を見上げてきた。
『散歩なんて柄でもないのに、どこいくんすか?』
「森。腹減ったから、適當に現地調達して食べようかなって」
『ちなみに腹を空かせた領民のために飯を取りにいく……なんてこと、しないっすよね?』
「あったりまえでしょうが。くく……みんなが腹を空かせているなかで、ひとり味いものを食う……って、ムーブ、無能っぽいだろ」
『無能っつーか悪徳領主っぽいっすけどね。ま、無意味におわりそーっすけど』
★
俺たちがやってきたのは、隣接する奈落の森(アビス・ウッド)。
森の奧へと俺はひとり進んでいく。
『うまいもんって言っても、なんかあるんすか? キノコとか?』
「バカヤロウ。そんなものより、味いもんがあるんだってば。アレみな」
たどり著いたのは崖の麓にあっただ。
ほぉおお……と風が窟に反響する音が響いている。
『なんすかここ?』
「赤熊(ブラッディ・ベア)の巣だよ」
『赤熊?』
「ああ。モンスターな。こいつ、クマなのに卵産むんだよ。で、それがまたうめえんだ」
焼いても、ボイルして塩振っただけでどんな高級料理にも負けないくらい味いのだ。
思い出しただけでもよだれが出る。
『でも巣ってことは當然、いますよねクマ本人』
「ああ。だろうな」
『まあ遭遇しても大丈夫っすね。ノア様無駄に強いし』
「あん? 遭遇なんてしねえよ」
『どうして?』
「こーすっから。【火球(ファイア・ボール)】」
俺は窟のり口に向かって魔法をぶっ放す。
「で、次に土でり口を塞ぐと」
地面に手でれる。するとボコッと土が隆起して、り口が封鎖。
「はいこれで中の魔は酸欠で全滅。卵は良いじに焼けて、おいしい卵焼きゲットっつーわけよ」
『はえー、やっぱすげえっすわノア様。やり方えげつないけど』
「効率優先といってくれたまえ。んじゃそろそろいくかいな」
俺はり口の封を解いて中にる。
氷魔法で地面を冷やし、奧へと進んでいく。
「おー、あんじゃーん赤熊の卵! うひょー、うっまそー!」
『の、ノア様……自分にもぷりーず!』
「やーなこった。これは全部俺のだ、ふははは!」
『鬼! 悪魔! 悪徳領主!』
「おーおー、心地よいねぇ」
落ちてる卵を手に取って、殻を剝いて食べる。
卵なのに焼いた高級のようにジューシーかつ濃厚な味わい。
『くっ……! いいっすよケチ王子。わたしは赤熊を捜して食べるっすから』
「あいあい、いってらっしゃーい」
……ま、赤熊のって筋張ってるから、味くないんだけどな。
俺はしゃがみ込んで、卵バリバリ食べる。
と、そのときだった。
『ノア様、や、やばいっすよー!』
「あん? なんだよ、窟の奧に何かあったのか?」
『そっすー! 鉱脈っすよ! しかも、ミスリル銀の!』
「…………は? 鉱脈? ミスリルだって?」
『とにかくこっち來て!』
俺はロウリィに導され、窟の奧へと進んでいく。
元々壁があったらしき場所は、俺の魔法でぶっ壊されていた。
その奧には、蒼銀にかがやく、それは見事なしい鉱脈があった。
「ま、まじかよ……」
『ミスリルって高級品っすよ? 売れば……すげえ金額になるっす』
あ、あれ……?
こ、これって……もしかして、またやっちまったか……?
『これでお金問題解決っすね。おめでとうっす』
「うん。破すっか!」
『なっ!? なんでそんなもったいないことするんすか!』
「だって見つかったら、また俺がお手柄みたいなじになっちゃうでしょ! はい破しまーす!」
と、そのときだった。
「「「な、なんだこりゃー!」」」
振り返るとそこには、アインの村の連中がいた。
うげええ!
なんで!? なんでこいつらいるの!?
しかも、當然のようにリスタもいるし。
「ノア様! セバス様からお出かけしたと聞いて、仲間とともにあなた様を捜していたところ、ここで発見されたのです!」
『やべーっすよこいつストーカーっすよ!』
俺も同意見だよ!
だが、今はそれどころじゃねえ。
「ノア様……すごいです! ミスリルですよね、しかも……こんなにたくさん!」
「え、ええ? ちがうんじゃ……ないかなぁ。鉄じゃね?」
「いいえ! これはミスリルです! 間違いありません!」
この鉱脈にも負けないくらい、キラキラした眼を、リスタが俺に向けてくる。
こいつだけじゃなくて、アインの村の連中もまた……尊敬のまなざしを俺に向けていた。
「さすがです! 領民がまずしい思いをしている姿にを痛めて、ひとり危険な赤熊の巣にもぐり、人知れず鉱脈を掘り當てるなんて……! すごい、さすがノア様!」
『わー、すごいっすよこの。一度のセリフの中で二度もさすがっていってるっす。もう尊敬度メーターがカンストしてるっすねこりゃ』
ほかの村の連中も同意見らしく、口々にすごいだのさすがだの言ってくる。
「おいどうした! さっきの発は……って、こ、これは!?」
セバスのヤツも騒ぎを聞きつけて、窟へとやってきた。
「くっ……! ノア様め……これの存在を最初から知っていたのか……恐ろしいヤツめ!」
いやあの……えっと……ええっとぉ……。
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