《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》19.第七王子は勇者に修行をつける

ある日のこと。

俺は奈落の森へと、サボりに來ていた。

湖畔にごろんと橫になっている。

重力魔法を応用して、し浮く。

白貓のロウリィが俺のお腹の上で、同じく丸くなっていた。

『ノア様〜。いいんすかぁ、サボってて』

「いいんだよ……ああ、今日も良い天気……こんな日は絶好のサボタージュ日和だよ、なぁロウリィくん」

『同意を求めてしくないっすけど、たしかに気持ちいい気っすね』

と、そのときだった。

ひゅんっ、ひゅんっ……。

「…………」

ひゅんっ。ひゅんっ。ひゅんっ。

「あー……もう、うっせえなあ」

『なんの音っすかね?』

「知らねーけど、人工的なじするわ。よし、ちょっと注意してくるか」

俺は起き上がって奈落の森へと向かう。

木々をかき分けていくと……。

「せい! はっ! ちょりゃー!」

『……子供っすかね?』

「だな。だいぶじがするな」

10歳くらいだろうか。

三つ編みお下げ、丸眼鏡という、どう見てもガキんちょ。

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手に持った剣をぶんぶんと振り回している。

「おいガキ。何してるんだ?」

「!?」

「あん? どうした?」

「い、いえ……なんでもござらん。……拙者が気配をじ取れぬなんて……」

ぶつぶつと眼鏡のガキがつぶやく。

この辺の村のガキか?

にしては俺を知らないみたいだし……領民じゃない?

「ま、いーや。おいガキ。さっきから何してたんだ。うっさいぞ」

「ややっ。これは失禮しました。拙者、【ユリアン】と申す。修行の旅の途中、この森を訪れたのでござる」

「はーん。修行の旅ねえ」

『剣を背負ってるっすから、剣の修行っすかね。……けど子供が一人で旅なんて……親が許すんすかね』

何はともあれ、よそから來たガキンチョってことがわかった。

んで、修行の途中だって言ってたな。

『まーた何か企んでるんすね』

『おうよ。こいつ相手にいっちょ無能ムーヴかましてやろうかなってよ』

『ノア様……お祓いがまだ終わってないうちから無能ムーヴするのやめたほうが……』

前世で悪人を討伐したから、俺には怨念がやどっており、結果すべてが裏目に出てしまうのではないか。

というのがロウリィの推論だ。

「おいユリアン。見たところ剣の修行中なんだろ? せっかくだから俺が稽古つけてやるよ」

「おお! よいのですかっ!」

「ああ……任せろ。ちょいと剣の腕には自信があるんだ」

ロウリィが頭の上で聞いてくる。

『んで、どう無能ムーヴするんすか?』

『名付けて、【子供相手に大人げないよ】作戦だ。このただのガキをけちょんけちょんにしてやる』

『うわー……おとなげなーい』

『二度と剣が持てないレベルで自信を折ってやる。子供相手に……そうやって俺の株を下げるって寸法よ……!』

『けど……んー……わたし、この子どっかで見たことあるんすよねぇ。どこだろう……?』

俺はユリアン相手に模擬戦をすることになった。

「ノアどのは、武はどうするのでござるか?」

「あー……? これで十分だよ」

俺は落ちている木の枝を手に取る。

腕くらいの長さだ、ちょうどいいか。

「おまえなんぞのナマクラ剣なんて、木の枝で十分対処できるぜ。ほら、かかってこいよ」

ユリアンはうなずくと、俺に向かって距離を詰めてくる。

『はやっ!』

「遅えよ」

俺はユリアンの斬撃をかわして、首の後ろを叩く。

ぐしゃり、と彼が顔から地面に突っ伏した。

「おいおいもう終わりかぁ? 弱いなぁおまえ」

『い、いやノア様……この子も十分速かったすよ。本當にただの子供っすかね……?』

「すごいでござるなノアどの!」

ユリアンは立ち上がると、目をキラキラさせてくる。

「なんというさばき! とても素人とは思えません!」

「ハッ! なんだその上から目線は。こいよ嬢ちゃん、見せてみな、修行の果とやらを」

「はいっ……! うぉおお! 【秋雨連撃】!」

ユリアンは剣を構えて、凄まじい速さで俺に連撃を放つ。

キンキンキンキンキンキン……!

『なっ!? ノア様、ただの棒で、あんなすげえ連撃を全部いなしてるっす! すげえ……!』

「おらおらどうしたぁ! 修行してその程度かぁ!」

「くっ……! このぉ!」

キンキンキンキンキンキン……!

「どっこいしょー!」

「うあぁああああ!」

俺は木の枝で相手の剣を強めに弾く。

ユリアンはバランスを崩して空中へと吹っ飛んでいく。

空中で勢をととのえて著地。

「ふーーーはっはっはぁ! その程度かいユリアンくーん!」

「なんて……すごい人だ……拙者の剣が、まるで歯が立たない……!」

「長い修行も無意味だったみたいだなぁ! 大人しくママの元へ帰るがいいぜぇ」

『わー、ノア様悪役顔似合ってるぅ。……でもやっぱり、あの子、ただものじゃないっすよ……』

ユリアンはぐっ、と歯がみすると、剣を構える。

すぅ……はぁ……と深く呼吸をする。

「ノアどの……これより放つは、拙者が長い時間をかけて會得した……究極の一撃でござる」

「ほー」

「これは拙者が魔を滅するために開発した技……常人がけてよい技ではござらん……」

託は良いから、とっとこいよ」

「委細承知。はぁああああああああ!」

ユリアンのから黃金のオーラが噴出する。

森の木々を揺らし、天と地を震わせる……【程度】のオーラだ。

『ノア様やべーっすよ! 真正面からけたら死んじゃうっすよぉおお!』

「かもな。だからこそ……真正面からける! 來やがれ素人!」

「うおおおおおおおお! 【聖天衝】ぉおおおおおお! ぶぎゃっ!」

べちんっ!

びたーん!

『こ、この人……ユリアンちゃんが必殺技の準備してる間に攻撃しやがった……! 真正面からけるって言ってたくせに! ひきょうっすよ!』

「はっはー! そんなの言葉通りにけ取ってるおまえが悪い! 甘いんじゃないかね、ユリアンくーん!」

『汚え人っす……!』

「うるせえ! 勝負に正々堂々なんて存在しねーんだ。どんな手を使っても、勝てばいいだけの話だ」

俺は倒れ臥すユリアンに、勝ち誇った笑みを向ける。

「まだまだだぜ、ユリアン」

「うぐ……うう……」

『あーあー、ノア様こどもをなーかしたーなーかしたー。母上様にいいつけてやるぅ』

しかしこれで俺が大人げないやつだって思われたに違いない。

よしよし、こういう活は地道な一歩から。

こいつの親からクレームが來れば俺の評判も……。

「す、すごいです! お見事でござった!」

ユリアンは目をキラキラさせながら、俺の手を握る。

「なんとお見事な剣技! そして剣に対する理論……! そう……拙者が間違っていた。戦いは勝ってなんぼ、まず勝たねばいけない……と!」

「お、おう……え、おまえ……なんで凹んでないの?」

「確かにプライドは傷つけられ申した……ですが! あなた様の見事な剣技に、拙者ほれてしまったのでござる」

「ほ、ほれたぁ?」

こくん、とうなずいて、ユリアンがその場で三つ指をついて言う。

「どうか拙者を弟子にしてくださいでござるー!」

「ノア殿ぉおおおおおお!!」

俺の部屋に、魔王ヒルデが慌ててってきた。

「んだよ魔王、うるさいな……」

「ノア殿! なぜ、あやつがここにおるのじゃ!?」

「は? あやつってなんだよ……?」

「わしの宿敵……【勇者】が!」

「はぁ〜? 勇者だぁ? んなもんどこに……」

がちゃり、とドアが開いて、ユリアンがってくる。

「ノアどのっ。おはようございます、でござる!」

「ひぃいいいい! 勇者ユリアンだぁああああああああああ!」

がたがた……と魔王ヒルデが震え出す。

いや……え?

いま……なんつったこいつ……?

『あー! 思い出したっす! ノア様、このユリアンちゃん、勇者っすよ! 勇者ユリアン!』

「はぁ!? ゆ、勇者ぁ!? あんなに弱いのに!?」

『そりゃノア様が強すぎるだけっすよ! 現狀、魔王に唯一対抗できる最高の聖剣士……それが勇者っす』

ま、マジか……。

転生前の勇者と比べると、だいぶレベルが落ちてる気がする……。

『だから前世と比べちゃだめだってばーもー……はぁ〜……』

「ひぃいいい! ノアどのぉおお! へるぷみー!」

ヒルデが俺の後ろに回って、ガタガタと震え出す。

こいつからしたら、自分を殺す存在だからな。

しかもヒルデは弱い。

ユリアンより遙かに弱い。

「しかしノアどの、驚いたでござる! まさか魔王を配下に加えているとは! いやぁ、さすがでござる!」

「まあ配下っつーか舎弟っつーか……え、なに? おまえこいつやっぱ殺すの?」

「ひぃいい! おたすけー!」

ヒルデがおれの後ろでがくがくブルブルと震えている。

だがユリアンは首を橫に振る。

「まさか! 師匠であるノアどのの舎弟どのを、殺すなんてもってのほか!」

「お、おお! そうか! そうなのじゃな! うう〜! やったー! これで一番の脅威が去ったー! ありがとうなのじゃノア殿! さすがじゃー!」

「しかしそうでござるか、魔王も勇者も凌駕(りょうが)するとは……やはりノアどのは最高だなッ!」

……あ、あれぇ?

おかしいな、ガキ相手にイキって……嫌われるはずが……。

なんかまた、裏目に出てない?

もう……なんでこうなるんだよぉお……!

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