《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》21.國王、勇者に逃げられる

ノア・カーターが勇者を弟子にしてから、しばらく経ったある日のこと。

王宮では現在、勇者から現狀の報告をけていた。

「……すまん、ユリアン。話がよくわからないのだが……」

謁見の間にて、國王は勇者のユリアンからの報告を聞いて、激しく困していた。

が語ったのは、驚愕の真実。

つまり……。

「ノアが……あの無能王子が、魔王を倒した……ということなのか?」

「國王陛下。それは間違いでござる」

「おお! そ、そうだよな! あのバカ息子が魔王を倒せるはずなど……!」

「ノア殿は魔王どのをご自の配下に加えたのでございまする。魔族は人間に害をなさないと、約束してくださった。ノア様のおかげでござる。やはりあのお方は素晴らしい……!」

……ユリアンの目にはノアへの尊敬がありありと浮かんでいた。

語でも話しているのだろうか、このは?

最初はそう疑った。

しかし魔族の出現頻度が減っていることは事実ではある(ゼロではない。魔王の考えに賛同しないものはいる)

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ユリアンがもたらした報告は、その場にいた部下達にも波紋をもたらす。

「うそだろ……ノア様が魔王を?」

「しかも勇者殿はノア様の弟子になったと聞くぞ」

「だから言ったじゃないか! ノア様はすごい人だって……」

ざわざわ……。

ざわざわ……。

「して……ユリアンよ。なぜ貴様はここに參ったのじゃ?」

「狀況の報告と……今日はお暇をいただきに參上したのでござる」

「いとま……?」

「うむ。拙者これよりノア様の領地にて、彼の弟子として修行を積むのでございます」

ユリアンはにつけていた聖なる寶剣をとりはずし、その場に置く。

それはかつて、いにしえの勇者が魔王を倒す際に使われたという聖剣だ。

王國はそれをユリアンに貸與していたのだ。

聖剣の返還、すなわち、王の手から勇者が離れることを意味する。

「そ、それは困るぞユリアン!」

國王は慌てる。

しかし勇者はなぜ國王が焦っているのか理解できない様子。

「よいかユリアン。貴様には魔王を倒してもらうという重要な仕事の他に、もうひとつ、この王國の礎になってもらう役割もあったのじゃ!」

「いしずえ……と申されても……?」

「よいか、魔王を倒した聖なる勇者。その勇者を選んだ王國。君がいることで我が國は長い平穏を手にできるということだ」

ようするに、世界を救った勇者を手元に置くことで、王家の威信を末永く知らしめようとしているのだ。

だがそんなものは、ユリアンにとっては二の次であった。

が求めるのは、人々の安寧ただそれだけ。

「是非とも我が國に留まってもらいたい!」

「せっかくですがお斷りいたす」

「な、なんだと!? なぜ!?」

「先ほども申したとおり、拙者はノア殿のいるカーター領へいき、そこで修行を積ませていただきたく存じます……自分は未でした」

ユリアンは奈落の森で出會った最高の剣士、ノアのことを。

流れるような剣さばき、鋼のようなメンタル。

そして何より……あの思慮深さ。

「あのお方は全てにおいて拙者を上回っていました。拙者を勇者と見抜いたうえで、未さを指摘してくださった……お優しいかただ。魔王どのもそんな彼の優しさに惹かれて、配下に加わったのでしょう。さすが……ノアどのだ!」

勇者はノアに完全に心酔しきっていた。

ノアをすごい人だと信じて疑わない目……リスタ達領民と同じ眼をしていた。

「ま、まってくれ! 勇者よ! きみは魔王を倒した英雄として、この國に留まってもらわねば困るのだ!」

勇者を宣伝に使う。

それが國王の腹づもりだった。

だがそんなのは國王が勝手に決めているだけのこと。

「申し訳ござらんが、拙者は英雄は向いておりませぬ。だいいち魔王どのとは盟友、倒してもおりませぬ」

「な、ならん! ならんぞ! 魔王は倒されねばならないのだ! 魔王は悪! 悪として処分せねばならないのだ!」

國王は他國から多大な援助をもらっている。

それは魔王國とこの國とが隣接しているからだ。

魔王や魔族からの被害を一番にけることを理由に、他國から金をもらっているのである。

……逆に言えば、魔王という悪なる存在がきえてしまえば、自分が援助をける理由もなくなる。

さらに言えば、魔王を倒したのが國が選んだ勇者ではなく、國が見捨てた無能王子が倒したとなれば……。

國の手柄にならないことはもちろんのこと、そんな有能な人材を王家から追放したとして、能力を疑われてしまうのは必定だった。

ようするに、國王は自國の利益のために、勇者には魔王を倒してもらいたいのである。

「魔王と仲が良いなら好都合だ! ユリアン、今すぐ魔王に近づき殺せ! この剣で、背後から寢首をかくのだ!」

……だがユリアンは、そんな汚い國王のやり方を見て……怒りを覚えた。

ずぉ……! と彼から怒りの魔力とオーラが発せされる。

ドサッ、と國王、そしてその場にいた全員が餅をつく。

「……拙者、先ほど魔王どのとは盟友と申したよな?」

「あ……ああ……」

「友を殺すなどありえない。それも、寢首をかけだと? ……そんな人の道に反することは、決してせぬ!」

勇者から発せられる敵意は本だった。

その目には國王が、敵と寫っているのである。

「魔王を倒したいのであればご自分ですればよい。……ただし、カーター領には、世界最高の領主がいる。彼が自分の民が殺されるのを、みすみす見逃すとは到底思えないがな」

ユリアンはきびすを返しその場を後にする。

「お、おい! 待て! 待ってくれ!」

「待たぬ」

「なぁ! 頼む! 今、勇者(おまえ)に出て行かれては困るのだ! 魔王を倒してもらわねば困る!」

「だからご自分でそれをすればよいのでは……ああ、そうだ。たしかご子息が剣聖のスキルを授かったと聞きましたぞ。彼に任せるのがよいのでは……もっとも」

ユリアンは立ち止まり、こちらを本気でにらみつけてくる。

「そちらが刃を向けてくるのであれば、こちらも黙ってはいないがな」

では、といって勇者が出ていく。

その場にいる全員はけずにいた。

「ど、どういたしましょうか……國王陛下……」

と、そのときである。

「父上!」

バンッ! と扉が開いて、ノアの兄……ダーヴァが部屋にってくる。

話は部屋の外で聞いていたらしい。

「父上! おれに任せてください! 必ずや魔王を倒して見せます……!」

その目には自信に満ちあふれていた。

ダーヴァは剣聖のスキルを持ち合わせている。

誰よりも強い剣の技を天から與えられていた。

だが……。

「……ダーヴァよ。貴様に命令を下す」

「はっ! なんなりと!」

「ノアを……追放されたあのバカを、連れ戻してくるのだっ!」

「はいっ! ……はい? え、えぇーーーーーー!?」

ダーヴァは驚愕の表を浮かべて父を見やる。

「正気ですか!? なぜやつを!」

「いいからさっさとノアを連れ戻せ! これは命令だ!」

「いやです! 魔王を倒すのならおれが……」

「うるさい! さっさと行け! わしの命令に背くなら、ダーヴァ、貴様も王家から追放するぞ……!」

ぎり……とダーヴァは悔しそうに歯がみする。

父は……弟の方が有能であると、認めたようなものだったからだ。

かくして、ダーヴァは父の命令で、カーター領……ノアのもとへ向かったのである。

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