《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》24.第七王子は災害を止める(エスケープ)
ある大雨の日の事。
領主の館、俺の部屋にて。
「あづい〜……しぬ〜……だるい〜……」
『確かに蒸し暑いっすね……』
俺は機に突っ伏して言う。
ロウリィもまた機の上でびをしていた。
「雨はうぜえし書類は死ぬほどあるし……ああもう! 最悪だよ! くそっ!」
『まあでもなんだかんだ言いながら、きちんと書類仕事するの偉いっすよねノア様って』
「あん? どうした急に?」
『だってそんなに面倒なら、全部放り投げて逃げれば良いのに。転移でも何でも使って。それをしないってことはしはこの仕事に責任を持ってやってるって事っすよね』
ぽんっ。
「ロウリィ、良いこと言うね」
『ちょっと?』
「そうだよ、別に俺が全部背負い込まなくていいんだよ! 嫌なら逃げてもいいんだよ!」
『ノア様!?』
俺は羊皮紙を取り出して、さらさらと手紙を書く。
【出かけます。探さないでください。いいか、絶対探すなよ、絶対だぞ】
「これでよし!」
『な、なにするおつもりっすか?』
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「決まってるんだろ、全部放り投げて逃げるんだよぉ!」
『なっ!? 逃げるですって!?』
「お前の言うとおりだ! 律儀に親父から任された領主の仕事やらなくていいじゃーん! 逃げるのは恥じゃない!」
『りょ、領民はどうするんすか?』
「知らん!」
『最低ー!』
「ふはは、さらばだ頭のオカシイ領民ども! 俺は全てを捨てて逃げる! 名付けて、【嫌なことは全部ゴミ箱に捨てちゃえ★】作戦だ! これなら俺の評判も落ちるし一石二鳥!」
『たったいま最低を記録更新したっすよ! さっきのわたしの褒めたやつ返してっす!』
俺は部屋から顔を出し、きょろきょろと周りを伺う。
よし、周辺に領民どもはいないな。
「今のうちにトンズラこくぜ。いくぞロウリィ」
『わたしここ結構気にってるんすけど……』
「ちなみに君がここに殘ると、領主が出て行った原因の一端が君の発言になるので、領民達から尋問された後に拷問を……」
『ついてきまーす!』
かくして、俺は全て投げ捨てて、領地から出ていくのだった。
★
転移魔法で一瞬で飛ぶ。
近くの街に宿を取って、俺は一泊することにした。
「はー、仕事がないって最高ですわ〜」
『ノア様〜。やっぱちょっと無責任っすよー』
「いいんだよ。はーあ、本當は田舎町でのんびーり暮らすつもりが、有能だってバレちまったばっかりに……」
『やれやれ……で、これからどーするんすか?』
ベッドの上でゴロゴロする俺、そして白貓ロウリィ。
「これからなー……どーっすかね。帝國に嫁いだ姉さんとこでも行くかな。仕事なくなったので養ってくれって」
『清々しいほどの駄目男っぷりっすね……』
「うるへー。さっそくお手紙でも書こうっと」
俺は寢そべりながら羊皮紙にサラサラと文章を書く。
ロウリィが手紙の容を見てため息をつく。
『帝國に嫁いだ姉っていうと、【メイシェン】様っすか?』
「そ。第3王【メイシェン】姉。次期皇帝の婚約者。あの人なら俺を養ってくれるはずだっ」
俺は書き終えた羊皮紙を丸める。
ぱちんっ、と指を鳴らすと、羊皮紙は姿を変える。
やがて紙だったそれは真っ白な鳥に変わる。
『無生に命を吹き込むとか……やっぱノア様の魔法やべーっすわ。魔神でも不可能っすよそれ』
「あっそ。あー……でも、外雨ふってるじゃん。手紙が雨でにじんだらやだな」
『雨が上がるまで待つっす?』
「そんな悠長に待ってる暇はない。なんとかする」
俺は窓をガラッと開ける。
びょおぉ……! と強風がふきつけ、雨粒が絶え間なく降り注いでいる。
『外は大嵐っすけど……どーすんすか?』
「こーすんの」
指先に小さな火をともす。
爪の先くらいのおおきさしかない。
ひゅっ、と雨雲に向かって火を投げる。
それは小さな弾丸となって空へと向かい……。
やがて雨雲の中にきえる。
そして、雨雲が一瞬で消し飛んだ。
『ふぁっ!? あ、嵐が……一瞬でやんだ!? な、なにしたんすか!?』
「え、蒸発させただけだけど?」
『あんな分厚い雨雲を、あんな小さな火で!? そんなの不可能っすよ! 雨によってきえちゃうっす!』
「ロウリィくん。火は酸素があれば燃えるのだよ。雨粒の水の中にも酸素がある。それを使えばあの程度の炎でも火を広げる事が可能なのだよ」
『な、何を言ってるのかさっぱりっすけど……あんたがやべーことだけはわかったす』
「よし雨がやんだな。鳥さんよ、帝國にいる姉さんのところに、手紙をちゃんととどけるんだぞー」
命を吹き込んだ手紙を、窓から放り投げる。
よく晴れた空に向かって、鳥はぱたぱたと飛んでいった。
これであとは返事待ちだけだ。
「ロウリィ、俺は寢る」
『いいんすか? あんま長居してると領民たち追い掛けてくるかもっすよ、ノア様を求めて』
「ないない。だってあいつらには探すなって念を押しといたんだぜ」
『素直に従うかなぁ……?』
「それにあいつらは俺の居場所を知らないんだぜ。探し當てるのなんて絶対、100%、何があっても、絶対無理」
『まー……そりゃ……でも、ううーん……』
ロウリィが何を心配してるのかはわからん。
が、どうせ領民は俺を見つけ出す事なんてできないんだ。
「メイシェン姉上から返事が來るまではしばらくのんびりするさ。おやすみー」
★
「おはようございます、ノア様!」
「ふぁっ!? り、リスタぁ……!?」
俺が飛び起きると、そこには素樸な顔立ちの村娘……。
カーター領民のリスタが笑顔で立っていた。
「ひぃい! なんで!? リスタなんで!?」
周囲を見渡して、俺は気付く。
ここは……カーター領、俺の部屋じゃねえか!
なんで出て行ったはずなのに、俺がカーター領にいるんだ……?
はっ! まさか……!
「ロウリィてめえ! 俺を売りやがった」
『ち、ちがうんすよ〜。ノア様が寢ている間に、急にリスタちゃんが宿屋にきたんすよ〜』
ベッドの脇で座ってた白貓が、ぷるぷると首を振る。
白々しいヤツめ!
こいつ以外に俺の居場所を知っているやつはいないだろうに!
「ロウリィちゃんの言うとおりです。ノア様を見つけ出したのはこのわたし、リスタです!」
「ど、どうやって……?」
「ノア様。実はですね、あなた様が領主になったことで、領民達に恩恵(ギフト)が授けられたのをご存じですか?」
「は? 恩恵(ギフト)だぁ?」
『そーいや聞いたことあるっす。強い魔の配下に加わった雑魚モンスターは、新しいスキルや魔法を授かるって』
それは俺も知っている。
魔王とかがそうだよな。
でも……人間にも起こりえることなんだろうか?
『ノア様はほら、存在が魔王みたいなもんだから、同じ現象が起きたんじゃないっすか? 現にリスタちゃんからは、ノア様と同じ魔力をじるっす』
どうやら俺は、無意識に領民(リスタ)をパワーアップさせていたようだ……。
「わたしの恩恵(ギフト)は、【領主知(ノアサマダイスキ)】。どこにいようと、ノア様の位置をじ取ることができる能力です!」
「『怖ぇええええええええええええ!』」
ガタガタ……と俺とロウリィは抱き合ってぶ。
この、前からとんでもねえって思ってたけど、ストーカーっぷりに拍車かかってるぞ!
「これでこの星の反対側にいても、ノア様をじることができます! 最高です!」
「俺にとっちゃ最悪以外のなにものでもないけどね!」
『なるほど、リスタちゃんの【領主知】能力でノア様の位置を割り出して、ノア様をここまで運んできたんすね……なんつー狂信者……』
そこへ、ぞろぞろと領民達がってくる。
アインの村の連中だった。
「ノア様! ありがとうございます!」
「あなた様のおかげです!」
今度は何!?
なんなの次から次へぇ!
「ノア様がこの大雨を止めにいってくださっていたのですよね!」
「ふぇ……? どういうこと?」
リスタは笑顔で、俺が殘した書き置きを懐から出す。
「これは、【俺はこの大雨で領地に水害が起きないよう、なんとかしてくる。だが危ないから決してついてくるなよ。おまえたちが何よりも大切だからだ】って意味ですよね!」
『とんでも翻訳っすね……。ただ嫌なことがあってトンズラこいただけなのに……』
「さすがノア様だ!」「いやぁおやさしい!」「我らの領主様はほんとうにできたおかたであられるぅう!」
リスタも領民達も、逃げ出した俺の行を、領地を守るための英雄的な振る舞いだと勘違いしてるらしい……!
ああもう!
「どうしてこうなったぁあああああああああああ!」
【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
8 111魔力ゼロの最強魔術師〜やはりお前らの魔術理論は間違っているんだが?〜【書籍化決定】
※ルビ大量に間違っていたようで、誤字報告ありがとうございます。 ◆TOブックス様より10月9日発売しました! ◆コミカライズも始まりした! ◆書籍化に伴いタイトル変更しました! 舊タイトル→魔力ゼロなんだが、この世界で知られている魔術理論が根本的に間違っていることに気がついた俺にはどうやら関係ないようです。 アベルは魔術師になりたかった。 そんなアベルは7歳のとき「魔力ゼロだから魔術師になれない」と言われ絶望する。 ショックを受けたアベルは引きこもりになった。 そのおかげでアベルは実家を追放される。 それでもアベルは好きな魔術の研究を続けていた。 そして気がついてしまう。 「あれ? この世界で知られている魔術理論、根本的に間違ってね?」ってことに。 そして魔術の真理に気がついたアベルは、最強へと至る――。 ◆日間シャンル別ランキング1位
8 199【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。
【書籍化決定!】BKブックス様より『自宅にダンジョンが出來た。』が2019年11月5日から書籍化され発売中です。 西暦2018年、世界中に空想上の産物と思われていたダンジョンが突如出現した。各國は、その対応に追われることになり多くの法が制定されることになる。それから5年後の西暦2023年、コールセンターで勤めていた山岸(やまぎし)直人(なおと)41歳は、派遣元企業の業務停止命令の煽りを受けて無職になる。中年で再就職が中々決まらない山岸は、自宅の仕事機の引き出しを開けたところで、異変に気が付く。なんと仕事機の引き出しの中はミニチュアダンジョンと化していたのだ! 人差し指で押すだけで! ミニチュアの魔物を倒すだけでレベルが上がる! だが、そのダンジョンには欠點が存在していた。それは何のドロップもなかったのだ! 失望する山岸であったが、レベルが上がるならレベルを最大限まで上げてから他のダンジョンで稼げばいいじゃないか! と考え行動を移していく。 ※この作品はフィクションです。実在の人物・団體・事件などにはいっさい関係ありません 小説家になろう 日間ジャンル別 ローファンタジー部門 1位獲得! 小説家になろう 週間ジャンル別 ローファンタジー部門 1位獲得! 小説家になろう 月間ジャンル別 ローファンタジー部門 1位獲得! 小説家になろう 四半期ジャンル別 ローファンタジー部門 1位獲得! 小説家になろう 年間ジャンル別 ローファンタジー部門 7位獲得! 小説家になろう 総合日間 1位獲得! 小説家になろう 総合週間 3位獲得!
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