《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》25.第七王子は帝國の皇子を救出する(結果的)

ある日のこと。

領主の館に、1枚の手紙が送られてきた。

俺の部屋にて。

『ノア様ー、誰からの手紙なんすか?』

「えーっと……メイシェン姉上からだ」

『この間手紙送ったっていう……たしか帝國に嫁いだお姉さんっすよね』

「そうそう。えーっと……なになに、近いうちに會いに行きます、と。到著日……今日じゃん」

姉上はわざわざ帝國からこっちに、俺の様子を見に來るらしい。

それは先日、俺が姉上にヘルプコールを送ったからだ。

『結局無駄になっちゃったすけどね』

「いや……待ちたまえロウリィくん。これは……チャンスかもしれん」

『チャンス?』

「ああ。この手紙には旦那さんと一緒に、カーター領に來ると書いてあった」

『旦那さんってーと……』

「姉上は皇帝の息子、つまり皇子と結婚してるんだ」

『はえー……皇子さんも來るんすか。で?』

「うん、皇子を拐しよう」

ブッ……! とロウリィが吹き出す。

『ちょっ!? 拐!? 何言ってるんすか!』

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「いつもの無能ムーヴだよ。いいか、皇帝の息子をさらったら、親はどう思うよ?」

『そりゃブチ切れるっすよね。最悪、戦爭になるかも……』

「そう! そうしたら皇帝の兵士達がこのカーター領にどわーっと攻めてくる! 上手くいきゃ領地は滅ぼされる! 領地が滅ぼされれば領主なんて必要なくなるって寸法よ!」

『ちょっ! さすがにそれは……領民に迷かけてるし……』

「あいつらには騎士団長(ディーヴァ)魔道士団長(ライザ)がついてるし、恩恵(ギフト)持ちの領民どもがそう簡単に死ぬかよ」

『いやだとしても……領地に迷が掛かるような……』

「それがいいんだよ。無意味に皇子に刃向かったバカ領主ってことで、リスタたち領民に呆れられてもいいわけだ。どっちに転んでもおいしい」

『あんたもっとその悪知恵を、しでも領民の安寧のために使った方がいいんじゃないっすか……?』

「バカヤロウ! そんなことしたらより尊敬を集めて、辭めるに辭められなくなるだろうが!」

『既に底なし沼に頭から突っ込んでるきがするっすけどね……』

「やかましいっ! とにかく……これで俺の方針は決まった。これからやってくる姉上の配偶者である、皇子を拐するぞ!」

やってきたのは領主の館の外。

奈落の森(アビス・ウッド)のとある一畫。

魔力知によって、姉さんの魔力が近づいているのはわかっていた。

「よーし、レッツ拐★」

『ノア様、やめたほうがいいっすよ。拐なんて、人道に反するっすよ?』

俺は魔法で宙に浮いている。

肩には白貓のロウリィ。

「なに、別に拐して酷い目に遭わせる気なんて頭ない。ちょいと拐犯のまねごとするだけさ」

『まねごとって?』

「つまりよ、馬車を襲って、皇子を眠らせるみたいな、そのくらいよ。さすがに姉上を傷つけるわけにもいかないしな」

『はぁ……ん? ノア様、馬車がこっち來るっすよ』

「おお、さっそく來たか! どれどれ」

俺は遠見の魔法を使って、森の奧を見やる。

姉上の魔力を載せた馬車が、こちらに向かって走ってきていた。

「ターゲット確認! ふはは、これより作戦にる!」

『拉致なんてやめたほうが……って、あれ? ノア様、なんか人、多くないっすかね』

「あん? ……確かに」

馬車は1臺だ。

だがその周りに馬が何頭も取り囲んでいる。

『それに馬車がなんか急いでるないっすかね? 皇子と婚約者のせてるなら、もっとゆっくりで來るんじゃないっすか?』

「そーかぁ? あんなもんじゃね? 知らんけど。馬車の周りの馬は多分護衛だな」

『護衛……かなぁ〜?』

「あー、もううっさいなぁ。おまえは黙って見てろ。この名優ノア様の、華麗なる演技を!」

俺は空中から高速で移し、馬車の前に著地する。

風魔法を使って派手な著地を演出した。

「「「どわぁあああああああ!」」」

馬車は停止。

周りに居た【護衛】たちは吹っ飛んでいく。

「だ、誰だてめえ……!」

護衛のリーダー格らしき男が、俺に問うてくる。

皇子を守っているんだ、恐らくは騎士だろうな。

『騎士にしちゃ、柄が悪くないっすか、こいつら……もしかして騎士じゃなくて……』

「俺はノア・カーター! 今からてめえらの大事なモンいただきに參上したぜー! ひゃっはー!」

『ノア様完全に悪役っすよそれ……』

護衛達が俺を見てたじろぐ。

裝備は貧相、魔力もほとんどじない。

おいおい、皇子の護衛にしちゃお末だなぁ。

「だ、命(だいじなもの)……いただくだと?」

「ああ、皇子(だいじなもの)はいただくぜぇ〜」

『なんか絶妙にかみ合ってないっすけど……』

護衛達が怯える一方で、リーダーが怒聲を張り上げる。

「や、やっちまえてめえら!」

「できるもんならな。ほい、指ぱっちん」

ドサッ……!

「って、えぇえええええええ!?」

護衛達はその場で倒れ臥している。

リーダーは部下を失って、あんぐり口を開いていた。

「て、てめえ! 何しやがった!」

「あん? 気絶させただけだぞ」

「どうやってだよ!?」

「風魔法を使って、酸素を奪ったんだよ」

ザコどもを魔法でぼがーんと吹っ飛ばしてもいい。

だがここは森の中で、しかも後ろには姉上たちの乗った馬車がある。

傷つけるわけにはいかないので、こうして地味な解決法を使うことにした。

「相手から酸素を奪って擬似的に酸欠を起こし気絶させたってわけ」

『なんて緻な魔法作っす……しかも無詠唱でやるなんて、さすがっすわ』

「あん? 詠唱なんてクソダサワードなんて、普通使わないだろ?」

『あんたの普通が普通だったためしある!? しは學んでくださいっすよ!』

さて殘りはリーダー格だけだ。

正直こいつも気絶させても良かったんだが、ひとりは殘しておきたかったんだよね。

『どーしてっすか? 手心を加えたんすか?』

「メッセンジャーに決まってるだろ。一人くらい殘して、皇子がさらわれたってことを帝國に知らせてもらわねーとな」

『ああ、うん、ですよね〜……』

ガタガタ……とリーダーが震えている。

「ば、化けだ……」

「ふはは! そうさ、カーター領の領主は悪徳領主なのだよ! てめえらのトップにそう伝えろ」

俺は指を1本立てる。

さっき奪った酸素を、ゆびさきに収束させている。

「そーら、いってこーい!」

俺は収束、圧した風を解放する。

リーダーは強風をけて、空へと吹っ飛んでいく。

「おぼえてろぉおおおおおおおおお!」

星になったリーダーを見て俺はひとりうなずく。

よし、これで帝國に戻って、皇子が連れ去られたことが伝わるだろう。

『いや多分、あの人がいくの、帝國じゃないと思うんすけどね……』

「はぁ? 意味わかんねー。ま、いいや。さぁて、本命の皇子さまを連れ去りに行きますかね」

俺は立ち止まっている馬車に近づく。

荷臺をガラッと開ける。

「ひゃっはー! ノア様參上だ! 命がおしけりゃ大人しく俺の言うことを聞くんだなぁ!」

中にいたのは、ドレスを著たしい……メイシェン姉上。

そして、姉上に抱かれて震えている、子供が一人。

「あり? 皇子は?」

すると震えていた子供が、俺を見て目を輝かせる。

「ありがとうございます、のあどのー!」

「…………へ?」

子供が俺の腰にしがみついて、わんわんと泣き出した。

「もう駄目かとおもってぇ〜……でも、のあどのがたすけてくれたからぁ〜……わー!」

「え、ええっと……姉上、どういうこと?」

メイシェン姉上が目をパチクリしている。

狀況を理解したのか、姉上がうなずく。

「ノア。ありがとう。わたくしたちを助けてくれて」

「はえ? 助ける……?」

「わたくしたちはここへ來る途中、盜賊団に襲われていたのです」

「と、盜賊うぅ!?」

『あー、やっぱり。騎士にしてはなりがあれでしたしね』

つまり……つまりだよ?

俺は、盜賊に襲われていた皇子を、助けたってことに……なるわけ?

「のあさまっ!」

キラキラ……とした目を、皇子が俺に向けてくる。

あー、この目、知ってる。

よーく知ってるよぉ……。

領民(リスタ)たちと、同じ目だよぉ……。

「ぼくたちをたすけてくれて、ありがとう! やはり、のあどのは、メイシェンのゆーとーり、やさしくて、すごいひとですっ! さすがですー!」

『あー、こりゃあかんっすね。皇子助けたことになってるっすよ。これじゃ戦爭なんて無理っすね〜』

「うぼぁああああああ! どうしてこうなったぁあああああああ!」

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