《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》26.第七王子は盜賊団に1人果敢に立ち向かう(大功)

帝國に嫁いだメイシェン姉上が、夫である皇子ガルシアくん(5歳)を連れて領地にやってきた。

俺の部屋にて。

「のあさま、のあさま、まほうをおしえてくださいっ」

ガルシア皇子は機に載りだし、きらきらした目を俺に向けてくる。

『盜賊から助けられて以來、この子すっかりノア様信者っすね』

「うぐうぅ……いらねえんだよこれ以上厄介ごとはッ」

「のあさま、のあさま、ぼくものあ様みたいな、大魔法使いになりたいのですッ」

はあぁもう……どうして面倒ごとが次から次へと……。

と、そのときだった。

「ノア様! 大変でございます!」

「お、おおセバス……どうした慌てて」

最近すっかり心変わりしちゃった老執事セバスチャンが、大汗をかきながら部屋にってくる。

「盜賊たちが、領地に押し寄せてきているとの伝令です!」

「と、盜賊ですって!」

部屋にいたメイシェン姉上が青い顔をしてぶ。

「そんな……ノアが盜賊を追い払ってくださったのに……」

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「おそらく復讐でしょうな。あやつら、盜賊の大軍勢を率いて、カーター領へ向かってきているとのことです」

俺が吹っ飛ばした盜賊のリーダーが意趣返しに來てるってことか。

チッ……!

消しとけば良かったぜ。

『どうするんすかノア様? 皇子がここに居るなか、盜賊が攻めてくるこの狀況で』

「うーむ……うん。よし、決めた!」

俺は立ち上がる。

「セバス」

「ハッ! 戦の準備ですね! すぐに騎士団長ディーヴァと魔道士団長ライザに招集を……」

「いや、その必要はない」

「なっ!? ひ、必要ないですと!」

「ああ……みんなはここにいろ」

俺はマントをにつけて、バッ……! と立ち上がる。

「俺が、一人で行く」

「そ、そんな! 無茶です! お一人で行ってもし死んだりしたら……」

ふっ、と俺は微笑んで言う。

「そのときはセバス……後は任せた」

「の、ノア様ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

その場にへたり込んで、セバスがギャン泣きする。

いい年したおっさんが號泣する姿はちょっとひくわ。

「ガルシア皇子は姉上とここに殘ってください。決して、館を出てはなりませんよ」

「わかりましたっ、のあさま……おきをつけて!」

俺はうなずいて、ひとり館を後にする。

後ろからとことこと白貓がついてくる。

『で、本音は?』

「盜賊達を利用して無能ムーヴ」

『あんたほんとブレないな!』

「ったりめえだろ! 俺は! 無能って思われたいの! 楽隠居したいのっ!」

ぴょんっ、と白貓ロウリィが俺の肩に乗っかってくる。

『盜賊を利用って、的にどうするんすか?』

「行って、捕まろうかなって」

『なっ!? 捕まる!? ノア様なら盜賊なんて指ぱっちんで全滅させられるっすよね』

「まあな。あんなザコに後れを取ることはない……が、ここで俺がやられたらどうなると思う?」

『まあ……あんだけかっこつけて行って、返り討ちに遭ったんだから……』

「だせえよな。つまりあんだけイキってたのに負けたノアは、駄目領主だったってなるわけよ。領民からの信頼はがた落ち。皇子からも失されるって寸法」

『うーん……そうなるかなぁ』

「俺のIQ50萬の高能頭脳だとそういう計算になるの」

『ノア様のIQ5がいいとこ……あ、やめて、そこひっぱらないで、らめぇ〜〜〜〜!』

まあ何はともあれだ。

【領主様、あんだけかっこつけて盜賊にあっさり捕まるなんてだっさーい★】作戦、決行だ!

俺がやってきたのは奈落の森(アビス・ウッド)の中。

敵の気配は魔力知でわかっていた。

空中に漂いながら敵の位置を見定める。

『ノア様これからどーするんすか?』

「とりあえず敵の大將んとこ行って、命乞いだな。領民達あげるからぼくだけたすけてーって」

『ノア様って最低を記録するスポーツでもやってるんです?』

「うっせえ。しっかし盜賊ども、どいつもこいつも魔力量がなすぎて見分けつかんぞ……お、こいつか?」

集団の中で、しだけ魔力量の多いやからがいた。

俺はそこへ向かって飛んでいく。

「よいしょー」

ぐしゃっ!

「ぐしゃ……? なんか変な音したな……?」

そこは森の中、周囲には盜賊の群れがいる。

よしよし。

「あれ? なんか周り引いてね?」

『ノア様。下、下……』

「下ぁ〜……え?」

なんか俺の足下に、潰れた片があった。

なんだこりゃ……?

まあいいや。

「あー、諸君が盜賊団かね? 我が領地を狙うという、不屆き者は〜?」

俺はニヤリ、と笑う。

駄目領主の演技をしないといけないからな。

自分の実力がわかってないのに、イキってる系領主だ。

「「「「…………」」」」

「やれやれ……この俺、ノア・カーターがいるというのに攻めてくるなんて命知らずどもめ……」

ぽきぽき、と(意味もなく)指を鳴らしてみる。

その方が調子乗ってるあるからな。

「貴様ら……生きてこの地をでれると思うなよ……」

で、ここで手を抜いて挑んで、返り討ちに遭う、というのが俺のシナリオ。

ふっ……計畫通り……。

なんてスムーズなシナリオ運びなのだ。俺は一流の小説家にでもなれそうだ。

「「「「すみませんでしたぁああああああああああああああ!」」」」

「ふぁ……!? な、なに!?」

『盜賊達、武裝解除して、みーんな土下座してるっすね』

頭の上で白貓がため息をつく。

「ノア様に逆らう気など頭ございません!」

「なのでどうか、命だけは! 命だけはご勘弁をぉおおおおおおお!」

盜賊達が必死になって命乞いしてる。

え、なんで!?

俺、まだ何もやってないのに……。

『ノア様、下、下。踏んづけてるそれ』

「この片がどうしたよ?」

『多分魔族っすよ。しかも殘留魔力量からして、結構レベルの高い』

「はぁ!? 噓だろ!? 魔族で、あんなちょこっとしか魔力量ないわけ!?」

『だからあんたが元居た頃から時間が経ってて、魔族のレベル……魔力量も低下してるんすよ。おそらくこの盜賊達は魔族を用心棒として雇ってたんすね』

「で、俺があっさり殺しちゃったから……って、あれ? も、もしかして……俺、またやっちゃいました?」

『おめでとう、やらかし記録更新っすよノア様』

「ぐあぁああああああ! やっちまったぁああああああ!」

盜賊達が震え上がっている。

やべえ、やべえぞ、こんなとこ領民達に見られたら……。

「「「さすがです、ノア様!」」」

「どっから出てきやがったぁああああ!」

俺の背後から、狂信者(リスタ)をはじめとして、武裝したアインの村の連中が現れた。

「さすがだぞノア様! 盜賊達をお一人でお相手するなんて、なんという勇気!」

騎士団長ディーヴァが涙を流しながら拍手する。

「ふっ……しかも武力ではなく言葉で、盜賊達を改心させるなんて。甘い男だ……だが……ふっ、さすが我が眷屬。の広い男よ」

魔道士団長ライザが、心しながら拍手する。

「お強いだけでなく慈悲の心まで持ち合わせるなんて! みました、ガルシア皇子!」

リスタの腕の中では、ガルシア皇子がだっこされていた。

「のあさま、かっこいいですー! さいこーです!」

あああああああまた領民の好度が、しかも皇子のもまとめて好度あげちまったぁああああああああ!

『ノア様ぜっこうちょーっすね』

「うわぁあああん! どうしてこうなるんだよぉおおおおお!」

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