《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》28.第七王子は皇帝陛下と謁見する

ある日のカーター領。

俺の部屋には、ガルシア皇子とその妻メイシェン姉上がいた。

「えー、っと……姉上。俺の聞き間違いかな。今……なんて言った?」

「皇帝陛下がノアに會いたがっているのです」

「おとうさま、のあさまに會いに、ぜひここにきたいそーですっ!」

……俺は眉間を抑える。

またか、ま〜〜〜〜〜〜た厄介ごとか!

『皇帝陛下はどうしてこんなのに會いに來るんすかね……あ、やめて、尾ひっぱらないでっ』

「そーだよ、俺なんもしてないだろ」

メイシェン姉上が笑顔で首を振る。

「ご謙遜なさらないでノア。あなたは皇帝の息子……つまりガルシア殿下のご病気を治したではありませんか」

『なるほど……そーいや醫者もガルシア皇子の病気がわからんって、さじを投げてたんでしたね。そこにきて病気を治したノア様。親としては、お禮のひとつでもするってもんっすよね』

「いらねぇええええええ! 來んなよ!」

またこれ皇帝に頭下げられてるノア様すげーって領民が心するパターンだろ!

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俺知ってる!

『ノア様も學習するんすね……ぐぇええ』

「いや俺別にたいしたことしてないし、わざわざ皇帝陛下にこんなとこまで足を運んでもらうなんて……」

「おとうさま、ぜひ會いたいって、言ってました!」

「……ここだけの話ですが、現皇帝はガルシア殿下をそれはもう溺なさっているのです。だから助けたノアは救世主的な扱いになっているのですよ」

いいよそんなの……。

さてどうやって斷ろうか……。

いや、待てよ……。

『ノア様、丁重にお斷りするじっすか』

「いや、待て。ガルシア皇子、皇帝陛下に、是非とも俺も會いたいと伝えてくれ」

「ほんとですかー! やったー!」

皇子がぴょんぴょんと飛び回る。

ふっ……無邪気なヤツめ。

利用されてるとは知らずに……くくく。

俺の肩の上で、白貓ロウリィが思念で話してくる。

『ノア様〜。まーたですか?』

『ああ、これを使って、無能ムーヴだ』

『ああ……やっぱり……で、今回はどういう作戦なんすか?』

『【皇帝(おや)から迷料がっぽりせしめちゃう悪徳領主まじさいてー】作戦だ!』

『最低なのはいつも通りでは……あ、やめて、尾そんなふうにしちゃらめえええ』

無邪気に飛び跳ねるガルシア皇子と、微笑む姉上。

俺はあらましをロウリィに説明する。

『今回皇帝陛下の大事な息子を、俺が助けたわけだ。當然の権利として、褒をせしめても問題ないだろ?』

『まあ……いちおう恩人っすからね。何か褒でもって流れにはなると思うっすよ。人の親としては』

『そこで俺が、ものすっごい高い金を要求する訳よ! 鉱山の権利でもいいな。確か帝國は金(きん)がよく出るって聞くしよ』

『うわぁ……あんた相手は皇帝陛下っすよ? そんな張ったら逆に失禮なんじゃ……』

『失禮と思われたらそれはそれで駄目領主がでてオッケー。向こうが素直に鉱山の権利を寄越してきたら、なんて強な悪い領主なんだサイテー、と思われるから、どっちにしても俺にとっては利がある』

『その悪知恵を領地の平和のために使いましょうよ……』

何はともあれ、作戦決行だ。

さぁ來い皇帝陛下。

數日後。

カーター領に皇帝陛下がやってきた。

応接室にて。

俺の前には白髪じりの偉そうなおっさんが座っている。

『この人が現皇帝?』

『そ。マデューカス皇帝陛下。年60歳。マデューカス帝國を治めるナイスミドル』

『確かに威厳ありそうな見た目っすね。どこぞのバカ王子とちがって……ぐぇええ』

無禮な白貓をにぎりつぶしながら、俺は笑顔で言う。

「ようこそ皇帝陛下。こんなへんぴな場所まで遠路はるばる」

「構わん。今日はおぬしに息子の治療の禮をしにまいったのだ。余が自ら出向くのは當然の禮儀だろう」

『わー、もでっかい。ほんとノア様や駄馬兄さん、バカ國王とは違うっすね』

うっさい白貓は椅子の下で踏み潰す。

さて……渉を始めよう。

「余はおぬしに大変謝している。そこで……おぬしには何か褒をと考えている。何がしい、申してみよ」

「では陛下……遠慮なく」

俺はテーブルの上に足を乗っけて、偉そうにふんぞり返って言う。

「金(きん)だ。あんたんとこの金鉱脈……金竜鉱山をよこしな」

ふふ……どうよこの態度!

クソ領主でてるっしょ!

『普段から結構そんなじあるっすよ……』

「なに……金竜鉱山……だと……?」

マデューカス皇帝は目を剝いて言う。

『わー、怒ってる。ノア様やばいっすよ。その態度で、いきなり金を寄越せなんて言えば、無禮千萬で打ち首もありえるっすよ』

『大事な大事な息子さんの、命を救ってやった恩人だぜ俺は? 殺せるわけないっつーの。しかも帝國外で不祥事おこせるわけない』

『無駄に知恵が回りますねノア様さいてー』

『語尾に最低をつけるなバカ魔神』

しばしの沈黙の後。

絞り出すように、皇帝が言う。

「おぬしは……本當に金竜鉱山がしい、と申すか?」

「ああ。それ以外はけ取る気ないね。どうする? ま、別に無理強いはしないけど~?」

と、そのときだ。

ポロ……と皇帝陛下が涙を流したのだ。

『ちょっ!? この人どうしたんすか、いきなり泣き出して!』

『わ、わからん……どうしたんだろうか……』

マデューカス皇帝はハンカチで目元を拭う。

「ノア……いや、ノア殿よ。やはり貴殿は、素晴らしい人だな」

「『ふぁっ!?』」

皇帝が……わらっていた。

そして、その目には俺に対する、確かなリスペクトをじる。

「ど、どうしたんだよ急に……」

「金竜鉱山の窮狀を知って、あえてそこをほしがるなんて……」

『窮狀? え、なんかヤバいことになってるすかね、その鉱山』

「我がマデューカス帝國にある金竜鉱山は……現在、ドラゴンに占拠されておるのだ」

「『ドラゴンに、占拠!?』」

何それ聞いてない!

「非常に強力なドラゴンだ。我が帝國の鋭が軍を率いて挑んでもかなわなかった……我が國にとって最大の懸案事項とも言える。そこをあえてほしがる……つまりは、そこの問題を解決してくださる、というおつもりなのだろう?」

いやいやいやいや!

何それ知らない! 初耳!

「さすが、ウワサに名高い魔の森の盟主。我が國の至寶ガルシアの命を救うだけでなく、國をも救ってくださるとは……」

「のあさま、すごいです!」

黙って後ろで聞いてたガルシア皇子が、俺に尊敬のまなざしを向けてくる。

「やっぱりのあさまは、さいこーの領主さまで、いだいなる、だいえいゆーです!」

「うむ。ガルシアの言うとおりだ。やはり貴殿は素晴らしい……」

あああ皇帝親子の好度ガンガン上がってるぅううううう!

そんな気さらさらなかったのにー!

『こりゃもう引くに引けないっすね。がんばれノア様、今度はドラゴン退治っすよ』

どうしてこうなったぁああああああああああああ!

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