《【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。》8.羽化

「え、いや、まあ有りだけど......え、住むの? ここに?」

「じゃあしばらくここに居させてもらおうかな......」

「うそじゃろ、まじでいっとるの!? 地上に帰りたくないのおまえ?」

「うん、まじまじ。 食事とかはどうしているの?」

驚きと戸いを張り付けた顔でこちらをみてくる。は僕が捨てられ行くあてのない奴隷だということも知らないからな。

「えぇ、んな軽くいわれても......まあ、いいか。 あー、えっと食事か。結論からいうとおまえに食事は必要ないぞ」

「え、僕、とかできないし、綺麗な花も咲かせられないけど」

「いや植と勘違いしとらんし。 さっきも言ったが、お前は世界樹の涙を飲んだことにより、このダンジョンに呪われ、魔力回路がリンクした......つまりこのダンジョンにある魔力が全ておまえに供給されとるのよ」

「......うん」

「故にを食わずともおまえは死なぬよ。 全てそれで補っとる」

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「え、なにその不老不死的なやつ」

「的なやつじゃないから、不老不死じゃから」

「ええっ!? ほ、本當に!?」

魔力の供給だけで人は生きていられるのか......そこに驚きだ。

「まあ、厳には首を落とされたりしたら死ぬから、不死ではないけど、限りなくそれに近いのう。 多の傷ならすぐ治るし。 つーか、そんな事ここで暮らしとれば嫌でもわかるわ」

「どういう事?」

「ダンジョンを上がるにしてもここで暮らすにしても、強くなければいられんぞ。 でなければ、すぐさま何かの餌じゃ」

......そう、甘くはないか。

でも、それでも人との関わりがない分、幾分は楽かな。

「......わかった、頑張るよ」

うんうんと頷くノルン。彼のいう強さとはどの程度なのかはわからない。

けれど、が倒せるレベルであれば......。

「じゃ、基本的な事を教えるでな。 いくぞい」

「わ、わかった」

◆◇◆◇◆◇

あれからはや約三ヶ月、ここでの暮らしはまったく楽ではなかった。

結論からいえば、普通の子供だと思っていたこのノルンというは下層のSSレートの魔をこえた化だった。

まさか、これまでに見た最強クラスの聖騎士や冒険者をもこえたと魔法の戦闘技をその小さなを通して目の當たりにする事になるとは......。

「か弱いが生活できているんだから、案外快適かも」という安直でふわっふわのあまあまな妄想を、ノルンにより跡形もなくぶっ壊されてしまったのだった。

――そして、そんなにも甘えていられる時期は過ぎ。ついにその時がきた。

「――さて、そろそろおまえも戦え」

ビクッとからだが跳ねる。

「む、むむ、むりだよ」

「大丈夫じゃ、おまえはユグドラシルから流れ込む無限のオーラとそれを使ったヒールがある。 それに基本的なオーラ作等の戦は全て教え込んだ。 ......そう簡単には死なぬさ、そろそろ実戦やってみろ」

確かにあらゆる戦闘技は教え込まれた。大型、小型の魔、人型の魔族とやりあう時の注意點や心得、それらの弱點。

しかし、それでも......この恐怖心は、なかなか克服できるものではない。

と魔との戦闘を見続けてきて率直に思った事、それは......僕にはあんなきはできない、だ。

けど、失敗したら......もし、命に関わるような重傷を負って、一手ヒールが遅れてしまえば、僕は......。

「......で、でも、首を落とされたら死ぬんだよね? 僕、多分......あっという間に食い散らかされると思うんだけど」

震える聲がでた。が、ノルンはそれを気にもとめず、こちらを目をむける。

それは、いつものような優しい目ではなく、冷たく突き放すような瞳だった。

「いやおまえ勘違いするなよ」

「え?」

「お前はここで生きるといった......ならやるしかないんじゃ。 やれ。 やらなければどの道、いずれ魔にころされ死ぬぞ」

前々から彼は言っていた。強くなければ生き殘れない。不老不死となった僕もそれは同じで、食事をとらずとも生きていけるとはいえ、僕らを狩ろうとする魔獣がいる以上、強さは必須なのだと。

強食。強い者が生き、弱ければ喰われる。

それに、いつまでもノルンに守られていていいのか?

「わ、わかった......やるよ」

「うむ、いいこじゃ」

しかし、やはり、というべきか。當然、というべきか。

一人立ちの魔獣との戦闘はもはや戦闘といえるものではなく、どちらかといえば一方的な拷問、食事、躙。

あの世が何度も頭をよぎり、しかしその度にノルンが助けてくれた。

だが、不思議なことに、絶的ではなかった。

魔獣に挑む度に、だんだんときが読めるようになって來た気がするのだ。

僅かだが、攻撃の癖やパターン、どう攻撃をさければ殺されにくいかわかるようになってきた。

これはヒーラーをやっていたからか、僕は敵を観察する能力がずば抜けているらしい。

ノルンは僕の事を強くなると評価してくれた。良い眼と吸収する力が高く、「そのうちわしを超える才だのう」とほめてくれた。

のその言葉が、とても嬉しかった。

かつて僕はロキに期待をされ、応え、んだものじゃないと捨てられ、そしてまた新たにノルンに期待をされた。

打算や噓をじないノルンの言葉は、僕の背中を押し、気力と勇気をくれる。

そこに対する、応えたいという思いこそが強さになるのだと、彼の優しさと出會える事によって思えた。

――そして、僕は初めて、ひとりで魔の命を奪うことに功した。

相手は一角兎、アークラビット。

Sレート。

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