《【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。》10.そして地上へ

古巣のパーティーには、今はもう何もない。強くなったからまた仲間にしてもらえるかもとか、また一緒に冒険がしたいとかは微塵も思わない。今あるのは、多の憎しみと悔しさか。

良いように利用して欠陥白魔導師とみるや、ダンジョンへ置き去り。

人の命を簡単に奪うような人たちには未練も何もない。

まあ、數年たって今更こられても向こうも困るだろうけど。

それはいいとして、他に何かやり殘した事なんて......そういえば、僕が死にたくなかった理由って......。

しかし、もう一度問い直された事により僕はそれを思い出した。

「......お前にはおらぬのか、大切な人は」

その一言で、これまでは生きることに必死で忘れてしまっていた彼の記憶が蘇った。

それは、冒険者パーティー、グンキノドンワへ買われる前、奴隷商の館でずっと一緒だった奴隷のの子。

名前はネネモア。

は僕と同じくらいの歳で、若い奴隷はそのふたりしかおらず、ネネと呼んでいた。

だから遊び相手はずっと彼だけで、奴隷になってからはずっと一緒にいた。

ネネは赤で、し目が上がっており、目元のホクロが特徴的だった。

もノルンと同じで、將來になるんだなと思わさせるしさで、おそらくそういう目的で飼われていたのだと今にして思う。

なぜかいつもお姉さんぶる彼は、奴隷商が機嫌悪く僕らを毆って発散する時には必ずかばってくれた。

僕が泣きながら大丈夫?と聞くと彼は決まってこう言った。「あなたは私がまもってあげる。 だからいつか、私が困った時に助けてね」明るく笑う彼の笑顔が溫かかった。

いつか困った時、奴隷として売られる運命の僕がいつか彼の困った時にかけつけて助けるだなんて出來るわけない。

それは彼もわかっているはずで、だからこそ僕はその優しさに心がみたされた。そして、その無償のに救われていた。

あの頃や冒険者時代では、無理だったこと。

――そうだ、今なら出來るかもしれない。

のもとへ行き、困っていたら助けてあげる。それが今の僕には出來る。

この今の力があれば、彼の助けになれるかもしれない。

「ノルン、僕......やり殘したこと、あった」

「む?」

「外にでるよ」

「......そうか」

「ノルンも一緒に......」

「わしはここから出られんと言ったろう。 おまえも白魔導師なら、気がついているんじゃないか? わしのこのはこのダンジョンのオーラでつくられたもの......は遙か昔に滅んでおる。 今のわしは、いわゆるそのオーラの殘滓のようなものだからな」

「......ごめん、ひどいこと言った」

ノルンの言いたくないことを言わせてしまった。これまで注意してれないようにしていたのに。

「よいわ。 まあ、たまに帰ってこいよ......寂しいし」

口をとがらせ、子供のような拗ねかたをするノルン。

「うん、わかった。 全てが終わったら、また戻ってくるよ」

こんな寂しそうな師匠を一人にはしておけないよな。それに僕もここが気にっている。

全てを終わらせて、必ずまた戻ってこよう。

「ほいじゃ、出口までごあんなーい! まあ、出るまでに最短二年とかかかるけどの」

じゃあ、まだしばらくは一人にせずにすみそうだな。

「......うん、ありがとう。 お願いするよ」

こうして僕は地上を目指し、ダンジョンを上がりはじめた。

に會うために。

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